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イラン、ウィーンでの交渉で優位に立つため、核武装を強化

反米感情は、欧米及び同盟国に対するイランと代理組織の軍事活動の活発化を正当化するために利用されている。(AFP)
反米感情は、欧米及び同盟国に対するイランと代理組織の軍事活動の活発化を正当化するために利用されている。(AFP)
新たな核合意に向けて、ウィーンでの会談は続く。(AFP)
新たな核合意に向けて、ウィーンでの会談は続く。(AFP)
新たな核合意に向けて、ウィーンでの会談は続く。(AFP)
新たな核合意に向けて、ウィーンでの会談は続く。(AFP)
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09 Jan 2022 12:01:34 GMT9
09 Jan 2022 12:01:34 GMT9
  • イランの代理組織が、湾岸地域での米国と同盟国に対する圧力を強化しているようだ
  • 今回の新たな状況は米国から最大限の譲歩を引き出す戦略と考えられる、と、専門家

ナディア・アル・ファオール

ドバイ: ここ数週間、中東の紛争地域でのイラン政府の代理組織の活動が活発化している。イラクやシリア、イエメンではイラン派の勢力が忙しく動きまわり、米国やサウジアラビアを標的とした攻撃をエスカレートさせている。

活動の激化の火付け役となったひとつの要因は、ガーセム・ソレイマニ司令官の暗殺から2周年を迎えたことだろう。ソレイマニ司令官はイランの将軍で、この地域をいまだに破壊し続けている混沌の大部分を引き起こした張本人だ。だが、最大の理由はウィーンで再開されたイラン・米国間の核協議だとの分析もある。

非常に時間はかかっているが、協議が進むにつれ、イラン当局はより楽観的な態度を見せている。金融機関や政治団体に対する米国の厳しい制裁の緩和につながる協定が成立しそうだと見込んでのことだ。

ある情報筋がアラブニュースに語ったところでは、米国・イラン間の新しい取り決めの骨組みは現在ほぼ整っているという。

残るひとつの障害は、次期米国大統領はいかなる新協定からも手を引くべきではないというイランの要求だ。米国がそのような誓約を守れるかどうかは、今のところ不明だ。2018年、米国のドナルド・トランプ大統領は核合意を「一方的な取引」として蔑ろにし、放棄した。イランはこれに対する返答として、核インフラを監視していた国際査察団への協力体制を打ち切り、濃縮作業を活発化させた。

ジョー・バイデン現大統領は、第1期目の外交政策努力の大部分を、以前は「包括的共同行動計画」と呼ばれたイランとの協定の復活に賭けている。このため、現米国政府はイランの強硬派との会談に固執し、地域の同盟国の反感を買った。

イラクの元報道官、エンティファド・ガンバール氏は、こう語る。「イラン人は交渉で相手をねじ伏せるのを好む。ロバート・マレー氏はイラン側の機嫌をとろうと躍起になっているようだし、バイデン政権内では残念ながら彼が交渉に関して優位な立場にある。特に米国撤退後のアフガニスタンの混乱を踏まえると、バイデン政権は弱気な印象を与えている」

イスラエルの国家安全保障問題研究所(INSS)所属のイラン専門家、ラス・ジムト博士は、「最近のシリアとイラクへの攻撃を見ていると、こうなっている大きな理由の一つは、ガーセム・ソレイマニ司令官殺害の2周年だと思う」と、語り、 イラン側にとってはこの事実が交渉にネガティブな感情をもたらしていると指摘した。

イランの米軍への攻撃に対する米国政府の反応は、2年前、イランの支援を受けた武装組織がバグダッドの米国大使館付近で暴動を起こした際に制裁としてソレイマニ司令官を暗殺したトランプ元大統領の対応とはかけ離れている。

テヘラン南東部のブシェール原子力発電所に視察に訪れ、原子力庁のモハンマド・エスラミ長官ととともに報道陣と対話するイランのイブラヒム・ライシ大統領(右)。(イラン政府撮影/AFP)

イランのイブラヒム・ライシ大統領は、ソレイマニ司令官の命日にテヘランの大きな祈祷殿で開催された式典で演説し、ドナルド・トランプ元米国大統領を最大の「侵略者であり暗殺者」と呼んで復讐を誓った。

イランの将軍だったソレイマニ司令官と、その盟友、アブ・マフディ・ムハンディス副司令官はともに2020年1月のドローン攻撃で死亡した。両者は、イラク、シリア、レバノン、イエメンにおいて大きな勢力を持つ代理組織を巧みに活用すること、そして攻撃性は低いが政治的影響の大きいロケット弾攻撃で米国に譲歩を促すことに長けていた。

昨年12月、イランの3つの州で行われた「パヤンバル・エ・アザドム」と呼ばれる軍事演習に参加するゴドス部隊のホセイン・サラミ司令官。(AFPより提供されたSEPAH NEWS配布写真)

水曜日、「ハッセム・アル・ジャバライン」という親イラン武装民兵組織が、イラクのドローン攻撃とロケット弾攻撃を実行したと主張した。この攻撃で死傷者は出ていない。同組織は、米国がイラクから完全に撤退するまで攻撃を続けることを誓うとネットに投稿した。この組織は主要なイラン代理組織の隠れ蓑であると考えられている。中央政府が支配力を取り戻すのに苦労し続ける中、今もイラクにおけるイラン代理組織の影響力は大きい。

同地域のアナリストによると、イラクとシリアでの攻撃の頻度は、重要な政治的決断が迫っている時に増加する傾向にあるという。GCCや中東の他の地域から広く不信感を持たれているイランと再び関係を結ぶかという決断は、これまでにないほどの重要性を持つといえる。

その決断を推し進めることは、バイデン大統領の任期における最大の賭けとなるかもしれない。秘密裏に行われるものさえも含め、核兵器製造の努力を阻むための厳しい制限を課さずにイランとの関係を復活させることに嫌悪感を持つ主要同盟国との根本的な安全保障体制を揺るがしかねないからだ。

だが、これらのテロ攻撃がウィーンでの会談に与えた影響は小さいと見る識者もいる。

カーネギー中東センター通信部長兼フェローのモハナド・ハゲ・アリ氏は、「これらの攻撃は、(イラン)内部の目的を果たす目的で行われたものであり、深刻な死傷者がいないことを考えれば軍事的な意義はほとんどない。むしろ、イラン軍や民兵組織に対する大規模攻撃への報復がないことを正当化するために役立っている」と、語る。

「イランの核開発の実際の進展に比べれば、ウィーンでの会談に変化を促す効果はあまりないだろうと考えている」

過激派とイデオロギーを専門とするイラク人研究者、ラシャ・アル・アキーディ氏は、「最近の攻撃による米国の人員や施設に対する影響はほとんどなく、それを考えると、米国の譲歩につながる可能性は低い」と話した。

2022年1月5日、バグダッド国際空港付近の米軍駐在中の軍事基地へのロケット攻撃の最中、発射されていないカチューシャロケットを点検するイラク軍兵士たち。(Iraqi Media Security Cell/ロイター通信より配布)

国防総省のジョン・カービー報道官は、攻撃の原因は米国がイラクに駐留し続けることに対する敵意とソレイマニ司令官の命日が重なったことであると指摘した。

ロケット弾攻撃がイランの立場向上につながるかどうかは議論の余地がある。だが、イランが作り上げようとしている、爆撃によって交渉での立場を優位にすることができるという認識さえ、長年、ころころ変わる米国の政策に対して「戦略的忍耐」の美徳を主張してきた同国の交渉担当者にとっては追い風となるのだ。

直近の協議が再開された今週、米国のイラン特使はサウジアラビアを訪れ、政府高官との会談を行った。湾岸諸国は、昨年、情報機関レベルで一連の地域協議に乗り出してはいるが、イランに対しては懐疑的な態度を保っている。

サウジアラビアの懸念の中心にあるのは、イランがウィーンでの会談において弾道ミサイル計画や、今も数十年に及ぶ紛争と反乱(その多くはイラン主導だ)によって揺れ続けるこの地域への武力介入について話し合うことを拒否している事実だ。

「米国が強硬な姿勢を維持しない限り、この地域はさらに難しい状況に陥るだろう」と、イラクの政府高官は語る。「弱い心は今は必要ない」

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