• 物価高騰のなか行政手続きの遅れにより穀物購入に悪影響、と政府高官が発言
• しかし農業相はレバノンが小麦危機に瀕しているとの主張を退ける

ナジャ・フーサリ

ベイルート：穀物価格が高騰を続けるなか、行政手続きの遅れによりレバノンの小麦危機が深刻化している、と政府高官が語った。

2週間以上も前に、内閣は「穀物・サトウダイコン総局」に小麦5万トン分の購入に充てるため360億レバノン・ポンド（160万ドル）の前払いを許可した。これでレバノンの小麦需要1カ月分を満たせるはずだった。しかし、政令が出なかったため前払い金が当局に渡らなかった。

「当局が中央銀行に対し360億レバノンポンドのドルへの両替を要請可能とする政令が出なかったため、経済相は30日に招集された閣議で特別許可を要請し、予算の増額が認められました」と穀物・サトウダイコン総局のジョルジュ・ベルバリ局長が語った。

「小麦を購入する行政手続きには長い時間がかかります。一方で、国際的に物価が上昇しています。2週間前に割り当てられた金額では、もはや小麦5万トンを購入するには足りません」とベルバリ局長は述べた。

「小麦在庫が減少するなか、非常に厳しい状況です。たとえ3～4万トンしか小麦が確保できなくても、とにかく早く確保するするのが重要です」

レバノン製粉協会のアフマド・ホテイト会長はこう述べた。「ウクライナ危機の影響がレバノンに出始めています。小麦が来週到着する頃には価格が上昇している可能性もあります。需要が多いため、高値を付ける国しか小麦が確保できないのです。我々はナジーブ・ミカティ首相と中央銀行に対し、信用状発行に遅れが出ないよう要請しました」

レバノンでは年間約60万トンの小麦が消費され、その8割がウクライナやロシアといった国々から輸入されている。しかし、レバノンは深刻な財政危機に直面しており、政府は燃料・医薬品・小麦粉など数十の必需品に対する補助金の段階的な廃止を迫られている。

こうした問題があるにも関わらず、アッバス・ハジ・ハッサン農業相は、レバノンが小麦危機に直面しているとの主張を退けている。

「経済相がアメリカ・カナダ・オーストラリア・インドなどの市場と連絡を取り合い、小麦輸入を確保しています」とハッサン農業相は述べた。

「現在は中央銀行の信用状発行を待っている段階で、農業省の農業研究課では保管用倉庫の手配を済ませています」

以前は小麦など穀物在庫を保管するためにベイルート港の貯蔵庫を使用していたが、2020年8月の爆発事故で破壊されてしまった。代替貯蔵施設がいまだに見つからないため、現在輸入小麦は港から各地の製粉所に直接移送されている。

製粉協会のホテイト会長は、輸入小麦の価格上昇に合わせ小麦粉に対する補助金が完全に廃止された場合、パンの価格も上がると予想している。

財政が破綻し社会保障が立ち行かないなか、食糧危機はレバノン国民が現在直面する数多くの危機の1つだ。銀行に残る一般市民の預金保護を目的とした「資本管理法案」すら、政治的な綱引きの対象となっている。

資金管理法案は29日に多数決で否決され、委員会で議案から削除された。

一方、エルネスト・ラミレス氏率いる国際通貨基金（IMF）パキスタン・中東・中央アジア担当代表団が、現在ベイルートを訪問しレバノン政府との協議完了を目指している。

「2週間の協議の後、暫定合意に達するよう願っている」とIMFレバノン政府代表団を率いるサード・チャミ副首相はAFPに語った。