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包括的共同行動計画はイランの脅威に十分対処できるのか?

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13 Jul 2022 03:07:51 GMT9
13 Jul 2022 03:07:51 GMT9
  • バイデン大統領がリヤドでアラブ首脳と会談することで、核の「合意か不合意か」だけよりも整合性のある政策が打ち出される可能性があると専門家は指摘する。

エファレム・ コッセイフィ

ニューヨーク:今週、アラブの指導者たちがリヤドでバイデン米国大統領と会談する際、彼らが熱心に訴える話題は、イランがもたらす脅威と、同国の核開発をいかに阻止・抑制するかだろう。

バイデン大統領は、2020年の大統領選の選挙運動中に、前任のドナルド・ トランプ氏が2018年に十分な内容ではないとして離脱した2015年のイランとの核合意に再び参加すると公言した。

バイデン氏は、オバマ大統領の副大統領として仲介した協定の復活に意欲的だが、アナリストによると、その後増えていったイランの悪質な活動を考慮して更新する必要があると述べた。

政府関係者は、サウジアラビアのような地域の同盟国と緊密に協議し、米国とその同盟国のための統合的な航空・ミサイル防衛システムを組み合わせることで、より包括的なイラン政策を構築するのに大いに役立つだろうと述べている。

地域諸国は、核問題が表面化する以前から、イランの脅威を理解していた。実際、イランの弾道ミサイル計画、無人機や海軍の活動、そして地域全体に広がる民兵への支援は、大混乱を引き起こしてきた。

専門家によると、イランの行動は地域の安定だけでなく、航行の自由やより広範な世界経済をも脅かしているという。このような動きには、イラクの武装集団への支援、レバノンのヒズボラへの長年の支援、シリアのアサド政権を支えるための傭兵の利用、イエメンのフーシ派への有害な援助などが含まれる。

また、イランの海外での侵略行為は、国内の弾圧作戦とも呼応しているという。2019年11月の広範な抗議行動に対して、政権の弾圧により1500人もの死者と数千人の投獄者が出ている。

しかし、ウィーンで行われている核合意(正式には「包括的共同行動計画」、JCPOA)の復活を目指す協議は、イランの域外活動と国内の弾圧に目をつぶっているように見える。批評家によれば、欧州と米国の交渉担当者は、イランの核問題だけに焦点を当てていたという。

ワシントンD.C.に拠点を置く超党派シンクタンク、民主主義防衛財団のベーナム・ベン・タレブル上級研究員は、「JCPOAの最大の問題の一つは、その内容ですらなく、この取引が成立した経緯にある」と考えている。

「交渉したオバマ政権でも、放置したトランプ政権でも、何としても取り戻そうとするバイデン政権でも、核関連以外のイラン政策の企画立案に関しては、もう空気が残っていないような状態だ」と彼はアラブニュースに語っている。

ベン・タレブル氏は、「イスラム共和国の外交・安全保障政策がもたらす脅威は、常に核問題よりもはるかに大きいので、これは残念なことだ」と指摘する。

話し合いの幅を広げようとする交渉担当者もいるが、「すべての担当者が最終的には、取引するかしないかの話をするだけで、バイデン大統領も同じだ」と彼は付け加えた。

バイデン政権は、イランに対して石油や石油化学製品の制裁を積極的に実施し、ここ数カ月でイランへの対応を強化したように見える。6月には、欧州の協力も得て、国際原子力機関(IAEA)の理事会でイランに対する問責決議案を発表している。

ベン・タレブル氏は、これらの動きはあまりにも小さく、そしてあまりに遅すぎると考えているが、政権のイラン政策に大きな変化をもたらす可能性もある。

「バイデンがこれほど遅い時期に圧力を行使した理由を推測すると、おそらく、サウジアラビアやその他の地域のパートナーや同盟国と、より首尾一貫した計画がどのようなものかを話し合う道を開くためで、前進するにつれてこれがどのようなものになるか(同盟国に)示そうとしているのだろう」と彼は言った。

また、中東でより統合された航空・ミサイル防衛システムを構築する計画があることも示唆されている。「しかし、これまでのところ、これは話だけにすぎない。(バイデンの中東)歴訪の後、それが現実になることを期待しよう」とベン・タレブル氏氏は言う。

保守派には、バイデンのイランに関する対応は一貫性がないとする声もある。上院議員時代の数十年間、彼はイラン問題について何度も投票し、時には対話の支持者として、しかししばしば圧力をかけることの支持者としても投票した。

ベン・タレブル氏は、「バイデンの今までの対応から、イスラム共和国に対する何らかの肯定的、否定的な感情を過剰に哲学的に考えて引き出そうとするのは賢明でない」と考えている。

よりわかりやすいのは、おそらく、彼の大統領としての任期中の対応と核取引への復帰の試みを検証することだろう。

「バイデン政権は、イランをほとんど核問題だけに限定してしまうことで優先順位を下げているように思える」と述べた。

「そして、この政権は外交政策に概して関心がないことがわかる。この政権は、一連の危機全体を管理することに関心がある。オバマ政権が2008年の初めに考えたようなことだ。前任者の政治の方向性を変えようとしていると見なされれば、世界はそれを歓迎するだろう、と考えているのだ。

しかし、イランのような国は、こうした譲歩や親善策を懐に入れて、さらに脅威をエスカレートさせる傾向がある」

ベン・タレブル氏は、このことを理解することが、米国とその同盟国がこれまで成功していないと多くの人が主張するイランに対する抑止力を理解するための重要なステップであると述べている。

過去3回の米国政権は、抑止力の問題を「一回きりで、白か黒かのように」見てきたが、実際には抑止力は「非常に動的」であるとベン・タレブル氏は指摘する。

「それは非常にインタラクティブだ。なぜなら、敵は安直に外交政策を考え、釣り合わない武器を使ってグレーゾーンで戦い、命の価値を低くみているようで、非常に長い間、多くの異なる勢力を通して国外で戦ってきており、常に変化しているのだ。

だからこの政権は、従来の書類上の政治的、経済的、軍事的な弱点と比較すると、実にさまざまな強みを持っている。抑止力の一部の失敗は、このことを理解していなかったことにあるだろう」

この点をよく理解すれば、例えばUAEに対してドローンによる攻撃があった場合、米国はどのような対応をとるべきかがより明確になるだろう。実際、米国は以前にもイランの支援を受けたサウジアラビアの石油施設や民間インフラへの攻撃で窮地に立たされたことがある。

「イランはこれを見ていて、米国が今日快適に感じているか、どこで不快に感じているかを評価して、アラブ諸国、UAE、サウジアラビアへの働きかけなどの外交的働きかけを予測しているのだ。イランは、米国のパートナーとのこの種の外交を利用して、これらのパートナーが、何かあったときに米国が自分たちを守ってくれるとどれだけ確信しているかを確認しようとしているからだ」と、ベン・タレブル氏は述べた。

「バイデン氏が現地に赴く準備として、この問題に関して皆と同じ見解を持つことが望ましいだろう」

それでも、バイデン政権は、イランの核開発を抑制する見返りに制裁緩和を約束したJCPOAへの回帰を中心にイラン政策を定義しているように見える。イランは核開発を停止するどころか、核兵器を製造するのに十分な核物質を保有している。

ベン・タレブル氏は、バイデン氏が古い枠組みを完全に捨て、米国のパートナー国とより緊密に連携して「共有プランB」に取り組むことが正しい出発点だろうと考えている。

実際、最近のサウジとアメリカの関係は浮き沈みが激しいが、中東の安全保障に関して両国が一致していることは疑いない、とベン・タレブル氏は考えている。

「例えば、航行の自由、エネルギー安全保障、制裁遵守、テロ対策の支援、米国主導の中東地域秩序の広範な支援、イラン・イスラム共和国への対抗、イエメンでの戦争でフーシ派を抑える支援、これらすべての面で、サウジが米国と同じ目標を共有していることは、今や非常に明白だ」

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