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サウジとUAEの寄付は「人々を飢えから救い続けている」と国連世界食糧計画の湾岸協力会議代表は語る

「世界中が力を合わせれば、2030年までに飢餓をゼロにすることは可能です」とWFP中東代表のマジード・ヤヒア氏は言う。(AN写真)
「世界中が力を合わせれば、2030年までに飢餓をゼロにすることは可能です」とWFP中東代表のマジード・ヤヒア氏は言う。(AN写真)
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31 Oct 2022 02:10:07 GMT9
31 Oct 2022 02:10:07 GMT9
  • マジード・ヤヒア氏が「フランクリー・スピーキング」に出演し、イエメンにおける湾岸諸国による貢献に謝意を表明
  • WFPは「2022年の単年の見積もりだけでも240億ドルの資金が必要なので、さらに90億ドルを必要としています」と同氏は話す。

ドバイ: 世界食糧計画(WFP)の湾岸協力会議(GCC)代表は、湾岸諸国、特にサウジアラビアとUAEを「子供、母親、授乳中の母親、そして妊婦に栄養のある食料の配給を可能にすることで多くの命を救い、今も命を救い続けています」として賞賛した。

アラブニュースの週刊時事トークショー「フランクリー・スピーキング」に出演したWFPのGCCマジード・ヤヒア中東代表は2018年にサウジアラビアとUAEが「協力してWFPのプログラムを救援」し飢餓を防止した例として戦乱で荒廃したイエメンに言及した。

「イエメンで活動する国連機関への10億ドルの寄付の最大の成果は飢餓を回避できたことです。そして、それ以来サウジアラビアからの貢献が続いており、現在まで続いているという点で本当にインパクトのあるものでした。繰り返しになりますが、その貢献は人命を救っているのです」

ヤヒア氏の発言はWFPのビーズリー事務局長によるアイスランド訪問時のコメントと矛盾しているように思われる。同事務局長は、湾岸諸国と中国を「世界的食糧危機との戦いに踏み出さない」と公に叱責するような発言をしていた。

「世界中が力を合わせれば、2030年までに飢餓をゼロにすることは可能です」とWFP中東代表のマジード・ヤヒア氏は言う。(AN写真)

「湾岸諸国は今、巨額の石油利益を得ている」のにも関わらず「貢献を増やそうとしない」と主張するビーズリー事務局長がアイスランドのテレビ局に語った内容が国連の公式ウェブサイトに引用されている。「アイスランドは大国ではないが期待を大きく超えた貢献をしている。他の国々が見習うべき素晴らしいお手本です」

湾岸諸国に対するビーズリー事務局長のレッテルはWFP自身がまとめた2021年の世界寄付額(2022年6月21日現在)とも辻褄が合っておらず、サウジアラビアとUAEはそれぞれ7位と12位の寄付国であることが示されている。実際、人口一人当たりで見ると、この両国はWFPに世界で一番寄付をしている国であることが分かる。

最近でもWFPはサウジアラビアのキングサルマン人道支援・救済センター(KSrelief)によるヨルダンのシリア難民支援とパキスタンの女性と子どもへの栄養プログラム支援のための1680万ドルの貢献を「タイムリーで寛大」として昨年11月に歓迎したばかりである。

ヨルダンには約46万5000人の脆弱な難民(そのほとんどがシリア難民)がおり、パキスタンには6万6000人以上の最も脆弱な子どもや女性がいる。WFPではそうした人々への支援継続の資金確保に苦戦していた。サウジの貢献はこの状況を踏まえたものだった。

ヤヒア氏はWFPを通じた湾岸諸国によるイエメン向け援助が様々な利益をもたらしていることに謝意を示した。「その支援で命をつないでいる人々がいるのです」と述べた。

「サウジアラビアの貢献はこの救命活動はもちろんのこと、子どもたちや母親、授乳中の母親、妊娠中の母親に特別な栄養価の高い食糧を提供するという栄養面での課題でも役立っています。今日支援活動をしなければ、明日、私たちが提供している学校給食にも悪影響が出るからです」

「私たちは北部と南部の両地域で学校給食を提供しています。そして、それは私たちが進めている開発活動です。サウジアラビアとUAEが我々と一緒にイエメンでやっていることは、人々の命を守り、多くの命を救い、(教育の継続を可能にする)重要なことなのです。」と同氏は続けた。

「これは現地の子どもたちにとって、とても大切なことなのです。」

どれだけの人命がサウジとUAEの共同支援による恩恵を受けた可能性があるかと問われ、「イエメンには4,000万人の人々がいます。おそらくその半分か、それ以上かもしれません」とヤヒア氏は述べた。

今年初めに世界の食料価格が急騰した。ウクライナ戦争で穀物や肥料の供給と流通が滞ったからだ。世界のサプライチェーンの脆弱性が露呈することになったCOVID-19のパンデミックから立ち直る間もなかった。

その結果、2030年までに飢餓をなくすという持続可能な開発目標を国連が達成する可能性は極めて低いと多くのオブザーバーが結論づけている。しかし、ヤヒア氏はまだ希望を抱いている。

「まず吉報は、2030年に飢餓をゼロにすることは可能だということです。世界中が一丸となれば実現可能なことなのです。政治的な意志があればできることなのです。しかし、私たちは過去5年間、逆戻りしてきてしまいました」と語った。

「飢餓人口が減少した2015年には良い進展が見られましたが、その後増加に転じています。世界中の飢餓の主な原因は紛争です。私たちは今、イエメンで、シリアで、アフガニスタンで、南スーダンで、そしてサヘルで紛争を目の当たりにしています」

「2つ目は気候です。食料生産は、かなりの部分、気候に左右されます。なので、もし気候に変化があると食糧生産が問題となります。現在アフリカの角では、干ばつによりソマリアで300〜400万人が避難を余儀なくされている状況です」

イエメンの飢餓回避や子供と母親の保護に貢献しているとして、世界食糧計画の中東代表は湾岸諸国による貢献を賞賛した。(AN写真)

ヤヒア氏は世界的な食糧危機という難問の説明に苦労していた。「多くの場合、飢餓は欠乏の結果ではなく、むしろ値頃感の問題なのです。食料はどこでも手に入るのです。世界は消費される以上の食糧を生産しています。しかし、一部のコミュニティ、8億人の人々にはこの食料を購入する経済力がないのです。」

ヤヒア中東局長によれば、食料や肥料の大半を輸入に頼っている中東・北アフリカの国々、特にレバノン、シリア、イエメンなどの危機に見舞われた国々でこうした商品コストの悪循環が飢餓や栄養失調になる人々が増加する要因となっている。

「レバノンの通貨切り下げを見ればお分かりいただけるでしょう。その影響は甚大です。インフレ率を見て下さい。レバノンでの食糧価格のインフレは巨大です」とヤヒア氏は言う。「レバノンは食料の輸入に大きく依存しています。同時に、レバノンは100万人のシリア難民を受け入れています。こういうことが全て重なっているのです」

イエメンの場合、イランの支援を受けるフーシ派武装集団によって援助の配給が妨げられることも日常茶飯事だ。フーシ派は首都サヌアを含むイエメン国土の大部分を支配している。脆弱な人々がいる場所にアクセスすることは戦いの半分だと言う。

「どんな紛争でもそうですが、紛争地域で活動する際に直面する大きな問題の1つは支援対象の人々へのアクセスです」と同氏は言う。「そして、当然の成り行きとして、私たちの労力のおそらく半分くらいはこうした人々へのアクセスを確保するための交渉です」

「第二に、私たちの食糧支援に依存している人々が大勢いるということです。そして今、資金の問題、長引く紛争のため、イエメンにおける配給量を減らすという本当に厳しい決断を今まさに下そうとしています」

また、WFPがイエメンで配給できる食糧が減少しているのは支援国からの資金援助が減少していることに加え、世界各地の複数の危機的状況における支援ニーズの規模が非常に大きいことが原因だと警告した。

複数の危機が重なり開発途上国のかなり広範にわたる範囲が荒廃しているため、WFPでは既存のプロジェクトに必要な資金が不足しているとヤヒア氏は「フランクリー・スピーキング」でケイティ・ジェンセン氏に語った。(AN写真)

「危機が長期化していることが主な原因ですが、世界各地でイエメンの状況と競合するような危機が発生していることも原因です」とヤヒア氏は言う。「しかし結局のところ、我々はイエメン、シリア、南スーダン、これら全ての場所について情報発信を続けることで、人々がそうした各地の状況を忘れないようにする必要があるのです」

WFPがサプライチェーンの混乱に対処し、資金不足を緩和し、食料の入手のしやすさと価格を購入しやすいものに改善することを目指す上での方法の一つは、食料が必要とされる地点により近い場所で生産するように奨励することだ。

「アフリカの食糧の80%は零細農家が生産していますが、残念なことに、その一部の人々は我々の支援対象になってしまっています」と同氏は話す。「なぜなら、せっかくの収穫も食糧ロスになってしまったり、市場へのアクセスがないからです。物流サプライチェーンがなく、適切な保存施設もないのです。そのため、収穫の半分以上が失われています」

現地の農家を支援するためにWFPは支援国を頼りにしている。しかし、ヤヒア氏によれば複数の危機が重なり開発途上国のかなり広範にわたる範囲が荒廃しているため、同機関では既存のプロジェクトに必要な資金が不足しているのが現状だ。

「2022年の単年の見積もりだけでも240億ドルの資金が必要なので、さらに90億ドルが必要です」と同氏は述べた。「これまでのところ、私たちは約90億ドルの資金を集めました。想定される必要金額に届かないことは分かっていますが、もし調達できなければ、来年はさらに危機が迫ることになり、今年以上に資金が必要になるでしょう」

ヤヒア氏は「短期的には、これらのコミュニティを支援する必要があります。こうした人々の命を救う必要があります。残念ながら紛争や気候や経済状況が完全な食糧安全保障に対する真の脅威となっており、この金額は増加が続くでしょう」と続けた。

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