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イスラエルのアラブ系市民は常に暴力にさらされている

アラブ系住民はもし犯罪者を通報すれば報復を受けることになり、その場合警察は守ってくれないと話す。(AFP/File)
アラブ系住民はもし犯罪者を通報すれば報復を受けることになり、その場合警察は守ってくれないと話す。(AFP/File)
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11 Dec 2022 09:12:41 GMT9
11 Dec 2022 09:12:41 GMT9

モハメッド・ナジブ

ラマッラー:イスラエルに居住する150万人のパレスチナ人は組織犯罪集団による暴力に怯えながら暮らしている。これらの犯罪の犠牲者は2022年に入って104人にのぼるが、これは比率としてイスラエル全体やガザ地区、ヨルダン川西岸地区をはるかに上回る数字である。

イスラエル警察はユダヤ人コミュニティ内のギャングに対するのと同じようには、これらの組織犯罪と闘う能力も意志もない。イスラエルのアラブ系住民がアラブニュースに語った。

イスラエルのパレスチナ人コミュニティ内部で起きる暴力や犯罪には、いくつかの原因がある。例えば、当局が発行した建設許可証がなければ、イスラエルの銀行ではローンは組めないので、彼らは代わりに闇市場やギャング、犯罪者ファミリーから融資を受ける。期限内に返済ができないと、自身や住居が銃撃を受ける、ビジネスが標的となるなどの攻撃にさらされる。

組織からの融資では手にする額が大きいだけでなく、すぐに支払いが行われるため、16から18歳くらいの若者にとって非常に魅力的である。

資金は非常に儲けの大きい武器取引にも流れる。ピストルの値段は3,086から6,173米ドル、M16アサルトライフルは2万1,605ドルで、若者にとって良いビジネスになる。

注目に値するのは、犯罪に用いられる武器はイスラエル軍の倉庫から盗まれたものだという点だ。

現在、イスラエル警察が逮捕し起訴しているのは主に犯罪を実行する「請負人」で、組織犯罪集団のリーダーたちや犯罪を依頼した者たちではないとイスラエルのアラブ系情報筋はアラブニュースに明かしている。

イスラエル警察によると、アラブ系コミュニティで活動する組織犯罪集団は7つあり、メンバーの一部は2016年頃にユダヤ系組織犯罪集団が解体されるまでは、それらユダヤ系組織の「請負人」として働いていた。2016年以後は、この空白を数万の武器を手にしたアラブ系ギャングが跡を継ぐ形で埋め、イスラエル人の領域に入り始めた。 

一方、イスラエル警察とイスラエルのパレスチナ人コミュニティの間の相互不信は、コミュニティ内での組織犯罪に対処する際の大きな障害となっている。

パレスチナ人たちはしばしば、警察はアラブ系地域の犯罪に十分な対応を取らないと考えており、警察の方はコミュニティ内の犯罪への取り組みにおいて住民が非協力的であると非難する。

もっとも、アラブ系住民はもし犯罪者を通報すれば報復を受けることになり、その場合警察は守ってくれないと話す。警察は武器を没収するだけで、容疑者を逮捕はしないのだという。数名を逮捕することがあっても、裁判が行われることはない。

イスラエル警察の言い分は、容疑者の起訴には証拠が必要だが、そのための人員も予算も、また公安庁が持つような進んだ技術も自分たちにはないというものだ。

このため、公安庁に警察を支援するよう要請が行われてきたが、公安が民事案件に関わることには強い制限が加えられる。

ガリラヤのカフル・ヤシフ出身の戦略専門家、ジャラル・バナ氏はアラブニュースに対し、アラブ系社会に広がる貧困が犯罪の蔓延と若者がギャングに加わる理由の一つだと説明した。18歳以下の男性の内、55%が貧困層に分類されるという。

実行犯の逮捕や警察の武装、警官に容疑者を射殺する権限を与えることでは、暴力を終わらせることはできない。

バナ氏によると、イスラエル警察は犯罪と闘おうとはしているが、やり方が十分ではない。「長年はびこってきた犯罪を1年や2年で根絶することは不可能です」とバナ氏はアラブニュースに語った。

「アラブ系犯罪組織がユダヤ人コミュニティに浸透し始めて戦略上の脅威となったため、イスラエル警察はアラブ系コミュニティの犯罪と闘い始めました」。バナ氏は、警察はその気になれば犯罪を大きく減らすことができるのだと我々に話した。

というのも、例えば1999年から2001年にかけてユダヤ人コミュニティにおける組織犯罪ギャングの掃討では彼らは成功し、ギャングは壊滅しているからだ。

イスラエルに住むアラブ系情報筋はアラブニュースに対し、アラブ系住民への犯罪に関与していた者の多数は逮捕を恐れ、トルコやUAEに逃れたと話した。

バナ氏はイスラエルで暮らすアラブ系住民の間に広がる恐怖は暴力と犯罪の蔓延によるものだと指摘し、次のように語った。「酷く、恐ろしい状況です。武器とドラッグが取引され、商売の利益はゆすり取られ、市長たちは組織犯罪ギャングやそれに従う者を入札で選ぶよう強要されています」

ガリラヤのカフル・カンナ村出身の作家で講師、マフムード・ハティーブ氏はアラブニュースに対し、年間の死者が100名を超えるのであれば、警察の犯罪対策は失敗ということだと述べた。容疑者が逮捕されても、すぐに釈放されてしまうという。

ハティーブ氏はまた、犯罪に立ち向かい、暴力と犯罪への関与を抑止するための法律を制定し、イスラエルのアラブ系コミュニティ内で宗教的・民族的価値観を促進するには警察のさらなる努力が求められると話した。

「人々の安全が失われていることは、犯罪による犠牲者の数以上に悲しむべきことです。150万のアラブ系住民が安全どころか、常に恐怖にさらされて生活しているのです」

イスラエルの首相と公安担当相が暴力と違法な武器の取り締まりを誓い、膨大な予算が投じられ、組織犯罪対策案が練られ、警察署が作られ、また新たにイスラエルのパレスチナ人コミュニティにおける組織犯罪グループと闘うための部署が新設されたにもかかわらず、暴力と犯罪は続いている。

イスラエル警察は「サイフ」(剣の意)と名付けられた、イスラエルのパレスチナ人コミュニティにおける暴力と犯罪対策に特化した部隊を新設した。

イスラエルの警察は、人口900万人(内150万人はパレスチナ人住民)に対し3万2,000の人員で稼働しているが、最大の難題であるイスラエルのパレスチナ人コミュニティにおける暴力と犯罪に対処するため、5,000人以上の増員と予算増額、技術面の改善を要求している。さらに警察は、公安庁がヨルダン川西岸地区でハマスに対して行っているのと同様に現金や車両の没収、口座の差し押さえなどの経済的手法で暴力と犯罪に立ち向かうことも決めている。

警察がイスラエルのアラブ系コミュニティにおける犯罪に対し、対策を強化するという見込みもある。アラブ系犯罪組織がアラブ系の村から隣接するユダヤ人都市に移動し、許容できない存在となっているからだ。

イスラエルのアラブ系コミュニティにおける暴力と犯罪は、それらが減少していると言われていたにもかかわらず、実際には続いている。それどころか、ギャングの脅威は彼らが自動車爆弾を用い始めたことで大きく高まり、それにつれて市民の恐怖と不安も増大している。自動車爆弾は、アラブ系コミュニティで犯罪が発生し始めて以来、組織犯罪集団が採用したもっとも危険な方法である。

一方、イスラエルのベン・グウェル次期国家安全保障大臣はイスラエルのアラブ系コミュニティにおける暴力と犯罪に断固とした措置を取ると表明した。だが、イスラエルのアラブ系住民にとっては「ベン・グウェル氏

の策はすべて暴力に基づくため、彼は問題を増やすことはあっても解決はできない」のだとバナ氏はアラブニュースに語った。

別の機会には、極右議員であ・ベン・グウェル氏はアル・アクサモスクでの現状を変更してユダヤ人も聖域で礼拝できるようにすることを新連立政権に加わる条件としたと述べた。

特筆すべきは、アル・アクサモスクでのユダヤ人の礼拝は実質的に禁止されていることである。もっとも、イスラエル警察はアル・キブリモスクと岩のドームから離れた聖域の上部で無言の祈りを捧げることは許可している。

アル・アクサモスクの説教者でイスラム委員会の長を務めるエクリマ・サブリ氏はアラブニュースの取材に、次のように応じた。「ベン・グウェル氏やその他の狂った人々が何をしでかすか、常に警戒を怠らないようにしていますが、アル・アクサモスクで祈ることができるのはイスラム教徒のみで、これは私たちの正当な権利だという点を確認したいと思います。ベン・グウェル氏の発言を、ムスリムへの攻撃と見なします」

サブリ氏は続けて、以下のように強調した。「私たちはいかなる状況下においても、アル・アクサモスクとその中庭でユダヤ人が礼拝することを阻止します。どのような犠牲を払おうともです。ヘブロンのイブラヒミ・モスクの分割という悲劇、時間や場所によってイスラム教徒とユダヤ教徒が分かれて礼拝するという例を繰り返させてはなりません」

 

アラブ系住民はもし犯罪者を通報すれば報復を受けることになり、その場合警察は守ってくれないと話す。

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