モハメッド・ナジブ
ラマッラー:パレスチナ自治政府(PA)は、ヨルダン川西岸地区内のイスラエル管理下のC地区におけるパレスチナ人による開発に対する制限の強化および西岸地区全体におけるその他の制限に抗議した。
また国際社会に対し、二国間解決への深刻な脅威となっているイスラエルの措置に介入して阻止するよう求めた。
イスラエルが管理するC地区はヨルダン川西岸地区の60%以上を占める。
PAは、イスラエルが、様々な手段による様々な入植・軍事上の目的のための住宅の破壊、入植地の拡大、土地の接収を通して、またパレスチナ人が土地を取り戻して家を建てるのを妨げることによって、C地区に対する戦争を行っていると非難した。
この抗議の背景には、EUがC地区におけるパレスチナ人の存在に対する支援を強化していると主張する文書が最近公表されたことでイスラエル人から怒りの声が上がっているという状況がある。
パレスチナ人はイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ次期首相および閣僚のイタマル・ベン・グヴィル氏やベザレル・スモトリッチ氏らが率いる右派政権がC地区のイスラエルへの併合に動くのではないかと不安の声を上げている。実際、スモトリッチ氏はそれを行うと何度か脅している。
イスラエルは既にC地区における法執行、計画、建設をほぼ完全に掌握しており、イスラエルの入植地や軍事訓練エリアはこの地区に集中している。
C地区に住む推定30万人のパレスチナ人は530の居住区で暮らしており、そのうち241は全体が同地区内にある。これは、1995年9月28日に締結された「ヨルダン川西岸地区・ガザ地区に関するイスラエル・パレスチナ暫定合意(オスロ2)」の直接の帰結の一つだ。
この合意では、5年間の移行期間の一環としてヨルダン川西岸地区を一時的に分割し、C地区をイスラエルの管理下に置くことが規定された。
イスラエル軍が駐留するC地区全体には、入植地、バイパス道路、境界地帯が含まれる。また、同地区はイスラエル管理下からパレスチナ管理下に移行するとされていたが実現しなかった。
PAのイブラヒム・メルヘム報道官はアラブニュースに対し、イスラエルは入植目的のためにパレスチナの土地を接収すべきではないと語った。
また、PAがイスラエルによるパレスチナの土地の行政区画を認めていないこと、また米国、EU、国連が二国間解決を損なうとしてC地区内のパレスチナの土地のイスラエルによる接収・専有措置に反対したことを指摘した。
さらに、PAは様々な方法で農家を支援することでC地区のパレスチナ人の安定性を高める戦略を採用したと強調した。
しかし、パレスチナ省庁がこの地区の農家に提供した農業設備をイスラエル当局が破壊しているという。
メルヘム報道官はアラブニュースに対し次のように語った。「パレスチナ農業省がトラクター、温室、農業機器、肥料、水タンクをこの地区の農家に提供しても、イスラエル当局が次の日に来て全部壊してしまうので、PAの開発努力が妨げられている」
同報道官は、ネタニヤフ氏率いる次期政権がより厳しい措置を取るかもしれないという懸念を隠さなかった。
C地区は水源や自然保護区など天然資源が豊富で、パレスチナの農地と牧草地の大半はこの地区にある。
考古学遺跡に加え、パレスチナのあらゆる主要事業にはC地区での作業が必要とされる。
この地区にはイスラエル人入植者約38万5900人とパレスチナ人約30万人が住んでいる。
C地区におけるイスラエルの計画・区画規制は、この地区の約70%においてパレスチナ人による建設を禁止しており、残りの30%においても許可を得るのはほぼ不可能だ。
国家イニシアティブ党のムスタファ・バルグースィー事務局長はアラブニュースに対し、イスラエルの次期政権がヨルダン川西岸地区の残りの土地を併合してパレスチナ独立国家の可能性を消してしまうのではと憂慮していると語った。
またPAに対し、ヨルダン川西岸地区C地区を「優先的な地区」とみなして住民の安定を強化するためにさらなる取り組みを行うよう求めた。
過去20年間C地区で活動しているパレスチナ医療救援委員会の会長でもあるバルグースィー事務局長は、「C地区における活動は抵抗としての開発の一つの形と考えられている」と付け加えた。
さらにEUに対し、EUが出資しているC地区の事業が破壊されたことに対してイスラエルに制裁を課し貿易協定を取り消すよう求めた。
パレスチナ自治区のEU報道官であるシャディ·オスマン氏はアラブニュースに対し、国際法上は占領下のパレスチナの土地であるC地区においてEUはいくつかの事業や開発・人道支援に対する出資や実施を行っていると指摘した。
同氏はアラブニュースに対し、EUの政策は「現在そして今後も、これらの事業に対する出資や実施を継続することに基づいている」と語った。
また、欧州による支援は「継続するし、我々はヨルダン川西岸地区の一部であるC地区で活動するつもりだ(…)この立場については全てのEU加盟国が同意している」と付け加えた。
続けて、C地区におけるパレスチナの事業に対してEUが過去3年間に提供した支援は3000万ユーロ(3170万ドル)に上ることを明らかにした。
さらに、ヨルダン川西岸地区C地区においてEUが出資した事業をイスラエル軍が破壊していることに懸念を表明し、EUが常にこの問題に関してイスラエル当局と協議していることを確認した。