Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter
  • Home
  • 中東
  • ネタニヤフ政権、ヨルダン川西岸地区での極右戦術を抑えるよう米国から圧力を受ける

ネタニヤフ政権、ヨルダン川西岸地区での極右戦術を抑えるよう米国から圧力を受ける

11月上旬に行われたイスラエルの選挙で右派諸政党が勝利したことを受け、米国はトム・ナイズ駐イスラエル米大使を通してネタニヤフ氏に警告のメッセージを送った。(AP)
11月上旬に行われたイスラエルの選挙で右派諸政党が勝利したことを受け、米国はトム・ナイズ駐イスラエル米大使を通してネタニヤフ氏に警告のメッセージを送った。(AP)
Short Url:
23 Dec 2022 10:12:15 GMT9
23 Dec 2022 10:12:15 GMT9
  • アナリストはアラブニュースに対し、新政権はイランの脅威に対抗するために米軍の兵器が必要なためバイデン大統領の要請に従わざるを得ないと指摘する
  • パレスチナ人サッカー選手がナブルスで死亡したのは、ヨセフの墓における入植者らの攻撃的姿勢をめぐる懸念が高まる中でのことだった

モハメッド・ナジブ

ラマッラー:米国はイスラエルに対し、ヨルダン川西岸地区における暴力に関与している治安当局者や入植者には米国への入国ビザを発行しないと通告した。イスラエル情報筋が伝えた。

米国は、ヨルダン川西岸地区のパレスチナ人への暴力に使用されるのであれば、イスラエルへの軍事支援を削減するか、今後10年間の330億ドルの支援金の年間保証を与えない可能性も示唆した。

この動きは、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ次期首相が新政権の連立合意に達したと発表したタイミングに重なった。

11月上旬に行われたイスラエルの選挙で右派諸政党が勝利したことを受け、米国はトム・ナイズ駐イスラエル米大使を通してネタニヤフ氏に警告のメッセージを送った。

米国は、二国間解決を損なうような措置を一方的に取ることや、エルサレムのアル・アクサモスクの現状の変更など、ジョー・バイデン大統領が考える越えてはならないレッドラインを示した。

イスラエルの政治アナリストであるヨニ・ベン・メナヘム氏はアラブニュースに対し、ネタニヤフ政権はイランでの軍事作戦に使用する兵器を米国から提供してもらう必要があるため米国の要請に従わざるを得ないと指摘する。

同氏はアラブニュースに対し次のように語る。「ネタニヤフ氏は米国の兵器を入手する必要があるからバイデン大統領との対立には踏み込まないだろうし、(連立パートナーであるイタマル・)ベン・グヴィル氏と(ベザレル・)スモトリッチ氏にもこのことを伝えている」

また、バイデン大統領もネタニヤフ氏との対立を望んでいないと指摘する。そうなれば次期政権内の過激主義者の力を強めるとともに、パレスチナ自治政府を弱め二国間解決を損なうことになるからだ。

パレスチナの政治アナリストであるガッサン・アル・ハティブ氏はアラブニュースに対し、イスラエル新政権の構成はバイデン政権にとって挑戦的で悩ましいものだと語る。

また、バイデン大統領はネタニヤフ氏に対し連立政権内の極右勢力を抑えるよう圧力をかけるだろうし、それは彼らの影響力を減じたいネタニヤフ氏の利益にもかなっていると指摘する。

ネタニヤフ氏はしばらく前から、より多くのアラブ諸国の気を引いて国交正常化を果たすために、また米国の最新兵器を得るために、地域におけるイランの脅威を誇張する戦略を取っている。また国内では、イスラエルの存続を危うくする脅威をほのめかすためにイランの脅威を利用している。

しかしネタニヤフ氏は、この考えを推進するのと同時に、パレスチナ自治政府(PA)も同様に存続の脅威をもたらしていると主張しようと悪戦苦闘している。

一方のPAにとっては、イスラエルに対する米国の圧力や政権内の極右勢力の存在が、国際機関や欧州諸国との関係改善に向けた取り組みを再活性化するうえで恩恵となる可能性がある。

これとは別の動きもある。パレスチナ情報筋によると、ナブルス中心部のバラタ難民キャンプの近くにあるユダヤ教の聖地「ヨセフの墓」が緊張と暴力の温床となっているという。

イスラエル国防軍(IDF)に守られた数十人の宗教的入植者らがヨセフの墓に頻繁に突入しており、パレスチナ人、入植者、IDFの間でしばしば投石や武装衝突が発生しているのだ。

この場所では今年に入ってから推定20人のパレスチナ人が死亡している。直近の犠牲者はサッカー選手のアフメド・ダラグメさんだ。彼は21日夜、ヨセフの墓に行くユダヤ教礼拝者を護衛していたイスラエル軍とパレスチナ過激派が交戦した際に死亡した。この衝突では他に22人が負傷した。

パレスチナ情報筋によると、ネタニヤフ氏の陣営が11月の選挙で勝利してから侵入が増えており、入植者らはヨセフの墓に到着した際の写真や動画をソーシャルメディアに投稿して緊張を煽っているという。

ナブルスのパレスチナ治安当局高官(匿名希望)がアラブニュースに対し語ったところによると、IDFと入植者らが繰り返しているこの地区への侵入の際には、事前にパレスチナ治安当局との調整が正式になされないことが多く、代わりにイスラエルのソーシャルメディアや入植者の公式ウェブページを通して事前に発表されるという。

彼らが到着する時には大音量の音楽、踊り、叫び、大騒ぎが付き物で、入植者らはヨセフの墓の敷地内に食べ物をのせたテーブルを置いたりすることも多いという。「これは礼拝ではなく挑発行為だ」と、この高官は話す。

以前はヨセフの墓への訪問は1ヶ月に1回に限られていたうえ、日中の時間帯だったためこの地区のパレスチナ人は職場や学校に行っていることが多かった。しかし今はより頻繁になっているうえ大抵は夜間に行われ、ますます挑発的で極右的なトーンになっているという。

これらの訪問は治安上の負担を増やしており、パレスチナ当局には困惑が広がっている。ヨセフの墓への訪問が行われるたびに暴力事件が発生し、パレスチナ人の死傷者が出ることも多くなっている。

この高官はアラブニュースに対し次のように語る。「パレスチナ市民は、イスラエル軍による迫害や入植者らによる襲撃から自分たちを守ってくれるはずのパレスチナ治安部隊はどこにいるのかと訝しんでいる。しかし、イスラエル側との合意により、我々はイスラエル軍との武装衝突に関与することができない。そのせいでパレスチナの人々から見た治安部隊のイメージや評判が損なわれている」

ヨセフの墓はヨルダン川西岸地区において最も頻繁にパレスチナ人、IDF、イスラエル人入植者の間の流血や緊張の事態が起こる場所の一つとなってしまっており、ここより酷いのはアル・アクサモスクくらいだとこの高官は言う。

パレスチナ警察はヨセフの墓を24時間体制で警備しているが、IDFと入植者らが来る時は撤収する。

イスラエル情報筋はアラブニュースに対し、ヨセフの墓での衝突は、もはやナブルスを掌握できていないパレスチナ治安当局の弱さのせいだと語る。

特に人気
オススメ

return to top