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2023年、死者数が減少して協議が進む中、シリアはついに平和を迎えることができるのか

2023年1月6日、イドリブで行われたトルコとシリア政権の和解の可能性に反対する集会で、巨大なシリア反対派の旗を広げる子どもたち。(AFP)
2023年1月6日、イドリブで行われたトルコとシリア政権の和解の可能性に反対する集会で、巨大なシリア反対派の旗を広げる子どもたち。(AFP)
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15 Jan 2023 07:01:18 GMT9
15 Jan 2023 07:01:18 GMT9
  • 2022年のシリア内戦での死者数は推定3,825人であり、戦争開始以来もっとも少ない年間犠牲者数となった
  • 暴力行為は全国的に沈静化しているが、紛争の火種や引き金となる可能性のあるものはまだ多く存在する

ポール・イドン

エルビル(イラククルディスタン):2022年に殺害されたシリア人の数は、2011年の内戦開始以来もっとも少なかった。しかし、これがこの終わりの見えない紛争の終わりの始まりなのか、あるいはまた新たな暴力が始まるまでの幕あいに過ぎないのかは、はっきりしない。

2022年に殺害されたシリア人は推定3,825人であり、2021年の3,882人から僅かしか減少していないが、それでも2018年以降の全体的な戦争による死者数の減少傾向は続いている。

しかし、この傾向が2023年まで続く保証はない。近年、暴力行為は全体的に沈静化しているが、孤立した一触即発の地域がまだ全国に残っており、地域の政治的要因によってはまだ爆発の可能性がある。

センチュリー・インターナショナルのフェローであり、スウェーデン国防研究庁の中東アナリストでもあるアロン・ルンド氏によると、この数年間、シリアではおもに2つの傾向が見られるという。

ルンド氏はアラブニュースに対して、「傾向の1つは、停滞してより徹底的に凍結された前線へ向かう動きです。これは、全面的な疲弊と、勢力圏の対立を解消しようとするロシア・トルコ・米国の軍事プレゼンスの結果です」と語った。

「もう1つの傾向は、人道的絶望の激化です。これは、2019~2020年頃からこの国の経済衰退が急激に加速し始めた結果です」

2022年12月7日、クルド人が多数を占めるシリアの都市カーミシュリーで、クルド人民防衛隊(YPG)の戦闘員の埋葬の際に、墓地に座る弔問客。(AFPファイル写真)

「主要な輸入品、エネルギー、水が壊滅的に不足しています。国連の新しいデータによると、今や1,530万人のシリア人が人道支援に依存しており、これは現在のシリア人口の70%近くに相当します」

「そのため、暴力行為が最少レベルまで減ったとはいえ、市民を取り巻く状況は、逆説的に、これまでのどの時期よりも悪化しているのです」

シリアは比較的安定した時期となっているが、ルンド氏はそれが「本質的に脆弱」であると指摘する。

「破綻した経済によって社会情勢や統治が引きずられる形で、予測不可能な内部動向によって現状が崩壊する可能性があります」とルンド氏は述べている。

「紛争当事者は自制心を失ったり、自暴自棄になったりすることがあります。新たな危機は、外部要因によってもたらされることもあります」

外部要因としては、ロシアとイランが駐留軍の削減を余儀なくされたことや、トルコの外交政策の転換などが考えられる。米国の中東政策も、次の大統領選挙の結果によっては「劇的な変化」を遂げる可能性がある。

2022年11月22日、シリア北部の反体制派支配地域アフリンで、トルコが支援する「スレイマン・シャー師団」による軍事演習中に、狙撃銃を発砲するシリアの戦闘員。(AFP)

著名なシリア専門家であり、オクラホマ大学の中東研究センターとイラン・ペルシャ湾岸研究のためのファルザネ・ファミリー・センターの両方で所長を務めるジョシュア・ランディス氏は、シリアの経済見通しは「厳しい」と述べている。

ランディス氏はアラブニュースに対して、「2023年の予算案は約32億ドルですが、昨年は約40億ドルでした」と語った。「シリアの通貨が暴落しているということは、ドル換算ではさらに少なくなるということです」

「経済数値の悪化、絶えずデモや抗議を引き起こしている燃料危機、ウクライナ戦争による小麦と燃料の商品価格の高騰はいずれも、平均的なシリア人にとって、さらなる経済の停滞とサービスの悪化を意味しています」

2022年12月19日、シリア北部の都市ラッカ近郊の田舎にある、紛争による避難民キャンプで、洗濯物を乾かす女性と少女。(AFPファイル)

予算額の価値の下落とシリア通貨の継続的な暴落は、シリア人にとって2023年が2022年よりも厳しい年になることを強く示唆している。

同時に、バッシャール・アサド政権の2大支援国であるロシアとイランは、自国の経済問題の深刻化に直面しており、重要な財政的支援を減らすことを選択する可能性が十分ある。

ニュー・ラインズ・インスティテュートの戦略・革新ユニットのディレクターであるニコラス・ヘラス氏は、トルコがシリアとの関係正常化にかつてないほど近づいており、シリア内戦が2023年の「決定的な外交的瞬間」に向かっていると考えている。

2022年10月18日、シリアの町アフリン郊外のカフル・ジャンナ地区で撮影されたトルコ軍。(AFPファイル)

ヘラス氏はアラブニュースに対して、「それは言い過ぎではありません。もしアンカラがロシアの支援を受けた協議を通じてダマスカスと合意に達すれば、シリア革命は終結するでしょう」と語った。

同時に、トルコはシリア北部において、米国と同盟しクルド人を主体とするシリア民主軍に対して、国境を越えた新たな攻撃を行うと繰り返し脅している。アンカラは、アレッポ北方のクルド人支配下の飛び地であるタル・リファットに狙いを定めているようだ。

トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、さらに東にある、戦略的に重要な町マンビジュとコバニの攻略計画も示唆している。

2022年11月22日、シリア北部の反体制派支配地域アフリンで、トルコが支援する「スレイマン・シャー師団」による軍事演習中に、RPGを発砲するシリアの戦闘員。(AFP)

「このトルコの武力衝突は、ダマスカスとアンカラの公的対話の再開と並行して進行しているため、複雑な問題となっています」とルンド氏は述べている。

ルンド氏は、シリアとトルコの和解がこのまま進めば「年内に何らかの形で協調行動をとる可能性が非常に高い」と考えている。

協調行動をとった場合、トルコがこれらの地域を奪還するためにロシアが支援するシリア政府の攻撃を支援したり、ダマスカスがトルコの作戦を容認したりする可能性がある。

「こういった脅威の下では、シリア民主軍は他の地域の支配権を確保するために、一部の地域から自発的に撤退することを決定する可能性があります」とルンド氏は述べている。「しかし、そういった軍事集団は、多くの慎重な調整を必要とするうえ、すべて頑固で攻撃的で、指示をあまり受け入れない傾向があります」

「何が起こるかわかりません。もし関係が破綻するようなことがあれば、軍事的な再燃も十分にあり得ます」

一方、ヘラス氏とランディス氏は、米軍がシリア北東部に駐留し、ジョー・バイデン氏が大統領であり続ける限り、トルコがシリア民主軍に対して攻勢をかけることはないだろうと考えている。シリア民主軍は、シリアのダーイシュとの戦いにおいて、米国の主要な同盟軍であることに変わりはない。

「バイデン大統領はシリアから米軍を撤退させないと約束しています」とランディス氏は述べた。「トルコとシリア民主軍の間で続いている戦争は、シリア北東部での死者が増えることを意味します」

2022年12月15日、シリア北東部ハサケ県にあるテルマルフの町をパトロールする米軍。(AFPファイル)

ヘラス氏はまた、米国がシリアに軍事プレゼンスを維持する限り、いかなる存在もシリア民主軍を圧倒することはできないと主張している。

「米国がシリアに留まっているため、トルコにはシリア民主軍の支配下にあるシリア北東部の大部分をアサド氏に引き渡せる一方的な能力はない」とヘラス氏は述べた。

「トルコはシリアからクルド人を排除して南の国境を解放することを望んでおり、アサド氏はシリア民主軍を敵視していますが、どちらの国も米国に対抗することはできません。そしてロシアが彼らを助けることはできません」

アナリストの意見によると、ロシアの支援を受けたシリアとトルコが合意すれば、シリア革命に終止符が打たれる可能性がある。(AFPファイル)

外交的な展開についてランディス氏は、トルコとシリアの新たな協議を、より長期的な安定に向けた「希望の光」とみている。

ランディス氏はアラブニュースに対して、「戦争を終わらせるためには、トルコとの話し合いが非常に重要です」と語った。「トルコとシリアの間で未解決のままになっている、多くの相違点の解決に向けて大きく前進することはできますが、戦争は今年中には終わらないでしょう」

トルコとシリアは、関係正常化に向けて決着をつけるべき多くの相違点を抱えている。400万人以上のシリア人が、トルコの保護下にあるシリア北西部の飛び地に住んでおり、その中には多くのイスラム戦闘員も含まれている。アサド氏もこれらの戦闘員も、いかなる形の和解も歓迎していない。

2020年11月5日、シリアとトルコの国境から10キロメートルも離れていないシリアの町サルワの難民キャンプが写っている航空写真。(AFPファイル)

「トルコはこれらの地域から撤退する意思があると述べていますが、多くの前提条件があり、なかには野党との政治的妥協など、アサド政権が受け入れそうもないものもあります」とランディス氏は述べた。

米国と欧州によるロシアとイランへの制裁は、今後1年間シリアに影響を与える可能性が高い。ランディス氏は、2015年のイラン核合意は事実上無効化しており、米国の新予算案ではシリアに新たな制裁が科されるだろうと指摘する。

「これはすべて、シリア人が今年も緊縮政策、サービスの悪化、電力不足、健康問題に直面することを意味します」とランディス氏は述べた。

「冬の雨が長引く干ばつに救済をもたらすかどうか、そしてトルコとの和平交渉に前進があるかどうかに、大きく左右されるでしょう」

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