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ネタニヤフ首相、非難をよそに司法改革を推進

週次閣議の議長を務めるイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相。エルサレムの首相官邸。(ロイター)
週次閣議の議長を務めるイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相。エルサレムの首相官邸。(ロイター)
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16 Jan 2023 04:01:30 GMT9
16 Jan 2023 04:01:30 GMT9
  • 司法改革が実現すれば最高裁判所の権限が弱まり、裁判官任命が政治化されることになる

テルアビブ:イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は15日、政府は同国の司法制度改革の推進を計画していると述べた。司法改革をめぐっては、司法当局高官が激しく批判しているほか、数万人によるデモが発生するなど反発が高まっている。

汚職で公判中のネタニヤフ首相は司法改革を新政権のアジェンダの最重要課題としているが、それに反対する声の高まりに早くも挑戦を突きつけられている。反対派は、司法改革は同首相が汚職裁判で有罪を回避する助けとなるか裁判自体を消滅させてしまう可能性があると訴えている。

司法改革が実現すれば最高裁判所の権限が弱まり、最高裁が無効にした法律を議会が単純多数で可決できるようになるとともに、裁判官任命について政府により大きな権限が与えられ、政府の法律顧問の独立性が制限されることになる。

司法改革案に対しては最高裁判所長官が声を上げ、「司法制度に対する見境のない攻撃」だとする異例の批判を行った。司法長官も先任者の多くと同様に司法改革を非難しており、14日にはテルアビブで数万人が司法改革に抗議するデモを行った。

そういった反対をよそに、ネタニヤフ首相は閣議において、11月の選挙で有権者は司法制度を改革するという公約を支持して票を投じたのだと述べた。

ネタニヤフ首相は次のように述べた。「我々は改革の法制化を成し遂げる。それは、修正が必要な部分を修正し、個人の権利を完全に保護し、司法制度に対する国民の信頼を回復するするような形で行われる。司法制度はこの改革を大いに必要としている」

15日に発表された世論調査の結果が示しているのはもっと複雑な事情だ。

この調査の対象となったイスラエル国民の58%は、議会が可決した法律が民主主義の原則に抵触する場合は最高裁判所がそれを覆す権限を持つべきだと答えている。この調査は、無党派組織「イスラエル民主主義研究所」が選挙直前の10月に1092人を対象に実施したもので、許容誤差は2.8%だった。

この調査は同研究所が年に一度発表する「イスラエル民主主義指標」の一環として行われた。この調査では一方で、イスラエルのユダヤ人のうち最高裁判所を信頼していると回答した人は42%と、複数年平均の59.5%から減少している。議会を信頼していると答えた人はわずか18.5%だ。これらの数字はイスラエルの少数派であるアラブ人の間ではやや低くなっている。

過去にもイスラエルの司法制度の改革を求める声はあった。1990年代により大きい権限を与えられた司法制度は、立法プロセスに過度に介入していると批判されてきた。しかし、ネタニヤフ政権の法相が目指す全面的な司法改革に対しては、イスラエルの抑制と均衡のシステム、ひいては民主主義の根幹への弔鐘であるとして反対派は警戒を高めている。

ネタニヤフ首相とその同盟者らは司法改革について、統治のプロセスを容易にし、国の行政と司法の間の「不均衡」を再調整する方法であると考えている。

政権発足の数週間後に提出されたこの司法改革案は、イスラエルの自由と民主主義の理想を守ることと、それらから離れることとの間で、この国の社会がいかに深く二極化しているかを明らかにした。また、史上最も右寄りの現政権がいかに迅速に政策を推進するつもりであるかも示された。それらの政策の多くは批判を集めており、予想外の方面からも非難の声が上がっている。

ネタニヤフ首相が率いるのは超国家主義政党や超正統派ユダヤ教政党を含む政権だ。これらの政党は過去に、最高裁判所による判決や政府の法律顧問による不利な助言によってアジェンダを阻止されたことが何度かあった。そのため、これらの政党は政権発足に向けた交渉にあたって司法改革を最優先事項としたのだ。汚職裁判の影で政権復帰を熱望していたネタニヤフ氏は、交渉において連立パートナーに対し寛容になったようだ。

そういった譲歩の中には、過激な宗教的超国家主義小政党の党首で反LGBTQ的発言を繰り返してきたアヴィ・マオズ氏を特定の教育プログラムの責任者にする約束も含まれていた。当初議論された際には市長らや子を持つ親たちから反対の声が上がったにもかかわらず、内閣は15日にこの約束を承認した。

通常は主に象徴的な役割しか持っていないイスラエルのイツハク・ヘルツォグ大統領は、司法改革をめぐる分断の橋渡しをすべく介入した。同大統領は声明の中で、政治家らと一連の会談を開き「歴史的な憲法の危機」の回避のために取り組んでいると述べた。15日にはエルサレムの大統領官邸の外で数百人がデモを行った。

ネタニヤフ首相は、司法改革は議会の監視のもとで慎重に行われると主張している。

AP

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