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地震後のイスタンブールは、さらに大きな災害への恐怖にとらわれている

息子とともに、アンタクヤ市の倒壊した建物の瓦礫の中に座る男性。マグニチュード7.8の地震により、トルコ南東部の山岳地帯は広範囲に破壊された。(ファイル/AFP)
息子とともに、アンタクヤ市の倒壊した建物の瓦礫の中に座る男性。マグニチュード7.8の地震により、トルコ南東部の山岳地帯は広範囲に破壊された。(ファイル/AFP)
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15 Apr 2023 08:04:22 GMT9
15 Apr 2023 08:04:22 GMT9
  • エルドアン大統領にとって困難が予想される5月14日の選挙を前に、安全な住宅への関心が高まっている

イスタンブール:トルコ現代史上最大の地震の発生は、同国の反対側に位置するイスタンブールで、さらに大きな災害が起きるのではないかとの不安を呼び起こし、数十万人がより安全な家を求めて躍起になっている。

トルコ最大の都市イスタンブールは、北西部のマルマラ海を横断する断層のすぐ北に位置し、同市の1600万人の住人のうち約500万人が、高リスクの住居に住んでいることが公式データで明らかになっている。

2月6日に南東部を襲った地震で5万人以上が死亡して以来、大都市イスタンブールは不安に包まれており、この地域で1万7000人が死亡した1999年の地震の記憶がよみがえっている。

2月の地震で数万棟の建物が倒壊したため、トルコ全体の建築基準のずさんさが災害を招いたとして非難されており、イスタンブールの数多くの老朽化した建物の安全性への懸念が高まっている。

イスタンブールのリスクは意識していましたが、あのような大地震が起きて、それがさらに現実味をおび、不安になりました。

セビム・アイドミールさん、アンタキヤ市在住

地震後のイスタンブールでは、50万人近くが住む高リスクの住宅の取り壊しや建て替えの申請が3倍に増えた。また、すでに高騰していた賃貸住宅の価格も、ここにきてさらに上昇している。

「イスタンブールのリスクは意識していましたが、あのような大地震が起きて、それがさらに現実味をおび、不安になりました」と、南部の都市アンタキヤで、叔父と友人を地震で亡くしたセビム・アイドミールさん(25)は言う。

再び悲劇が起こるかもしれないとの恐怖に襲われ、彼女はイスタンブールを離れざるを得なかった。同市で新しいアパートを借りる余裕はなかったからだ。

1999年の地震の後にも同様の恐怖が広がったが、時間が経つにつれ、沈静化していた。

この2カ月で何人がイスタンブールを後にしたかは不明だ。

引越人協会の代表であるアリ・アイルマズディール氏は、引越し業者に電話で依頼してくる人は、2月の地震の前は一日に3から5人ほどだったが、今では毎日15から20人が電話してくると述べた。

レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領にとって20年間の政権運営で最大の困難とされる5月14日の選挙を前に、安全な住宅への強い関心がわき起こっている。

地震学者による2019年の報告書によると、2月の地震と同様のマグニチュード7.5の地震が発生した場合、ヨーロッパとアジアを隔てるボスポラス海峡にまたがるイスタンブールに存在する117万棟の建物のうち、17%が少なくとも中程度の被害を受けるとされる。

しかし、地震学者は、2つの地域は異なる断層上にあり、2月の地震によってイスタンブールでの地震発生確率が変化することはない、と述べている。

だが、多くの住民は、10月にインフレ率が24年ぶりのピークに達して85%を超え、また、他の場所で仕事を見つける見通しが立たないため、生活費高騰の危機への不安に包まれているという。

イスタンブールで何らかの災害が発生すれば、マルマラ地方が国内総生産(GDP)の約41%を占めているため、トルコ経済は停滞するだろう。

博士課程の学生で最近母親になったニライさんは、イスタンブールを離れたいと思ったが、夫が金融関係の仕事をしているため市内に住む必要があると同時に、自分たちの経済力では安全な地域には住めないため、行き詰まりを感じている。

マルマラ海沿いの、高リスク地区とされるアヴジラーに住むニライさんは、「地震後の価格高騰のため、より強固な地盤があるとされる地区に引っ越すことは不可能です」と言う。

バフチェシェヒル大学経済社会研究センターによると、トルコの賃貸料は2月に前年比で190%、イスタンブールの賃貸料は前年比で138%に達しており、2月の消費者物価上昇率55%を大きく上回った。

引っ越せない人々の多くは、代わりに建物の安全性の調査を依頼して安心を求めている。建物全体の約70%は、建築基準が大幅に強化された2000年よりも前に建てられたものだ。

ムラット・クルム都市計画相は今週、市内の建物のうち約150万戸が、高リスクと考えられていると述べた。

公式データによると、1世帯につき平均3人以上が居住しており、これらの物件には最大で500万人が住んでいる計算になる。

イスタンブール市の住宅機関であるKIPTASによると、49万戸の住宅について、費用をかけて行う取り壊し、および再建の申請を受けたという。

地震前の申請件数である8,600件から25,000件に増加したことになる。しかし、建物の全住民の少なくとも3分の2がプロジェクトに同意しなければならないため、建設段階に達したのはわずか200件だと、KIPTASは述べた。

KIPTASのゼネラルマネージャー、アリ・クルト氏は、「残念ながら、今回の地震に対する恐怖心は、人々が互いに妥協して自分たちの住居を再建することに同意するよう動かすには、十分ではありませんでした」と述べている。

「人々は自分の家が危険であるという事実を受け入れる必要があります」

また、同市には建物の安全性評価の依頼が15万件以上あり、実行には1年かかると予測されている。

しかし、こうした調査で判明する事実への恐れが、人々に二の足を踏ませている。

「この古い建物が高評価を得るわけがない。書面で見なくてもわかる」と、イスタンブールのアジア側に住む、退職した元公務員のヌルテンさん(76)は言う。

「後で、この家を明け渡せと言われたらどうするんだ?そんなことには応じられないよ」

ロイター 

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