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国連、シリアの強制失踪などによる行方不明者を調査する機関を設立 画期的決断

アレッポ県の町アザズで、シリアの被拘束者、行方不明者の家族・親類が、愛する人に関する情報を求めている。(AFP)
アレッポ県の町アザズで、シリアの被拘束者、行方不明者の家族・親類が、愛する人に関する情報を求めている。(AFP)
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30 Jun 2023 05:06:32 GMT9
30 Jun 2023 05:06:32 GMT9
  • 83カ国が行方不明者の所在を明らかにするための機関を設立する決議採択に賛成、11カ国が反対、62カ国が棄権
  • シリアで内戦が続くこの12年の間に15万人以上のシリア人が強制失踪などで行方不明に

エファレム・ コッセイフィ

ニューヨーク市: 29日の国連総会で、シリアの内戦に対する国際社会の対応の一環として、12年前に内戦が勃発して以来、シリア政権、反体制勢力およびテロ組織の手によって強制失踪などで行方不明になった15万人以上のシリア人の所在・安否を調査し明らかにする独立機関の設置案が可決され、画期的な決断となった。

オリヴィエ・メーズ国連ルクセンブルク常任代表は、決議案を提案するにあたり、「愛する人に何が起こったのか、彼らがどこにいるのかを毎日必死に探し求めている」シリアの家族の「強さと勇気」に敬意を表した。

同氏は続けて、「多くの家族、中でも女性は、愛する人を探す中で、行政上、法律上の困難および経済的不安定に直面し、深いトラウマを抱えることになっている」と述べた。

オリヴィエ・メーズ国連ルクセンブルク常任代表(AFP)

赤十字国際委員会、国際行方不明者委員会、シリア・アラブ共和国に関する独立国際調査委員会などの多くの国際的、国際組織、非政府組織、人道支援組織および家族支援組織が、シリアで発生した失踪事件を捜査・追及している。

しかし、組織同士の連携がとれておらず、愛する人の所在を探し求める家族は途中で手詰まりとなり、また詳細を知る被害者や生存者はどこに情報提供すればいいのか分からなくなっている。

行方不明者の家族は、この危機の規模と複雑性に見合った、
愛する人の所在・安否の調査のための専用の独立国際機関の設立を求めてきた。

彼らの意見を参考に、国連事務総長は昨年、彼らの求めるような、行方不明者の所在・安否を調査、明らかにし、家族に支援を行うための十分に強い権限をそなえた国際機関の設置が、この危機の総合的解決の礎となるとする報告書を発表した。

それを受けて作成された決議案には、アルバニア、オーストラリア、デンマーク、ドミニカ共和国、フィンランド、フランス、ジョージア、ドイツ、ギリシャ、アイスランド、イスラエル、イタリア、ラトビア、リベリア、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、スロベニア、スペインなどの50カ国を超える国が賛成した。

メーズ氏は、この新しい機関は「相補性を強化し、手続きの二重化を避けるもので、データの収集・比較のためのただ一つの入口として機能し、全ての関係者・関係機関および進行中のイニシアティブとの連携・意思疎通を保証する」と述べた。

同氏は、決議は「誰かに責任を問うものではない」と強調した上で以下のように述べた。「ゴールはたった一つ、人道的なゴールです。すなわち、兄弟、子ども、父親、夫といった親類に何が起こったか分からないシリアの家族をめぐる状況の改善、そして彼らに必要な支援を行い、国際人道法が彼らに対して保障する対応を行うことで、被害者の苦しみを和らげることです」
国連の代表の一人は「この新しい人道支援機関がこの12年にもわたる対立の傷を癒す一助となり、そうする中で、和解と長期的平和に向けた努力に対する貢献において重要な役割を果たすこと」に対する希望を表明した。

ジェフリー・デ・ラウレンティス米大使は、この決議はその本質において人道的であることを改めて強調し、「民族、宗教、政治的所属に関わらず、全てのシリア人行方不明者を対象とするものだ」と述べた。

「多くのシリア人が、この機関が誰を保護しようとするものか忘れないよう我々に求めてきました。

すなわち、まだ人生を十分に生ききっていない行方不明者や被拘束者の一人一人を保護しようとするものだ、ということをです。彼らは統計上の存在ではなく、誰かの配偶者であり、子どもであり、兄弟姉妹であり、友人であり、同僚なのです」
「彼らの痛ましい証言が示すように、我々は、支援を受けて当然の被害者やその家族が長い間待ち望んでいた応えを届けなければなりません」
デ・ラウレンティス米大使は、シリア政府はこの機関の設立に協力しない姿勢を示したと指摘した。

マリア・ザボロツカヤ国連ロシア常任代表代理は、国連総会は「国連憲章に違反しており、今日、人を馬鹿にした『人道』の口実のもと、シリアに圧力を与える装置を作るよう操作されている。これはこの営み全体の真の目的とは何の関係もない」と述べた。

同氏はまた、この機構は独立・公平からはほど遠く、「賛同国の命令に忠実に従うことしかできない」と述べ、「行方不明者という問題を真に解決するには、シリア政府との確固たる連携体制を築くこと、そしてシリア政府に有効な支援を行い、行方不明者の問題解決に向けた努力、ひいては人道的な復興全体を妨害する、違法で一方的な経済制裁を緩和することが必要だ」と主張した。

同氏はまた「他国による同国の占領」の終了と「駐在する外国人市民」の送還を求めた。

バッサム・サッバーグ国連シリア常任大使は、決議は「政治的なもので、シリア・アラブ共和国を標的にしたものだ」と述べた。

同士はまた、「この決議案は明らかに、当国に対する甚だしい内政干渉であり、特定の西側諸国がシリアに対して敵対的アプローチを進めている新たな証拠となる。その国々の中心にいるのは米国だ」と述べた。

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