Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter

サウジとイスラエルの国交正常化は可能か?

会談前にサウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子と拳を突き合わせるバイデン大統領。2022年。(ロイター/ファイル写真)
会談前にサウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子と拳を突き合わせるバイデン大統領。2022年。(ロイター/ファイル写真)
Short Url:
30 Jul 2023 05:07:48 GMT9
30 Jul 2023 05:07:48 GMT9

先日のジェイク・サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)によるジェッダ訪問については、既に多くのことが言われている。米メディアの報道によると、議題の一つとして米国の仲介によるサウジとイスラエルの国交正常化合意の可能性が取り上げられたという。当然、サウジはそれを公式には認めていない。しかし、推測し、文脈を整理し、最近の動きを考慮に入れる限り、そのような合意が実現する可能性は高いと結論せざるを得ない。

話を先に進める前に、サウジアラビアがパレスチナの大義を「売り渡した」という結論に飛びつく陰謀論者を黙らせておきたい。彼らは、国交正常化に関する協議が(もし本当に行われたならだが)秘密裏に行われたことが、この結論が正しいことの証拠だと主張するだろう。彼らにとってはそれ自体が、何か怪しいことが企まれていたと信じるに足る理由なのだ。しかし、このような見解を広めている人々の知性 (いや、なけなしの知性と言うべきか)に対する失礼を承知で言うと、このような性質の協議の場合、秘密裏に行われ、成功した場合にのみ発表されるのが普通だ。パレスチナ人に聞いて見るといい。あるいは映画『OSLO / オスロ』を見れば分かる。

第2に、サウジアラビアは言行が一致している数少ない国の一つだ。イランとは異なり、サウジの立場はイデオロギー的であったことはない。ユダヤ人を海に投げ込めなどと説いた(より正確に言えば説いているように装った)ことはないという意味でだ(イランは1980年代、イラクとの戦争中にイスラエルから密かに武器を調達しながらそう説いていた)。実際、サウジアラビアは1991年のマドリード会議以来、パレスチナ人の権利を最優先とすると同時にイスラエルに対しては同国が必要とする承認と保証を与えるような和平合意の実現に向けた努力の最前線にいる。

念のために言っておくと、2002年にアラブ連盟で採択されたアラブ和平イニシアティブをイスラエルに対して提案したのは実は故アブドゥラー国王だった。より最近の昨年にも、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子はアトランティック誌に対し、サウジアラビアはイスラエルを「同盟国になり得る国」として見ていると語っている。

国営サウジ通信は、「我々はイスラエルを敵としてではなく、共に追求できる多くの利益を共有する同盟国になり得る国として見ている」という皇太子の発言を伝えている。皇太子は、「しかし、その前に我々はいくつかの問題を解決しなればならない」としたうえで、イスラエル・パレスチナ紛争の解決を望むと言っている。

第3に、2022年後半から報じられているサウジのさらなる要求という側面がある。3月に本コラムで書いたように、パレスチナ人のための公平かつ公正な解決はサウジにとって常に最優先であり続けてきた。しかし、仮にイスラエルが解決に向けて真剣かつ満足のいく措置を取り、突然サウジ・イスラエルの国交正常化と和平合意の実現可能性が浮上したとしよう。その場合、どのような結果が訪れることになるだろうか。

サウジアラビアは、パレスチナ人の権利を最優先とする和平合意の実現に向けた努力の最前線にいる。もし合意が実現した場合、どのような結果が訪れることになるだろうか。

ファイサル・J・アッバス | 編集長

そのような合意が結ばれたとしたら、米国はサウジの原子力開発計画を懸念しなくなるだろうし(そもそも最初から平和的利用を意図したものだったのだが)、サウジを保護するという口約束を文書化することに何のためらいもなくなるはずだ。実際、イスラエルはサウジにとって安全保障上の脅威になったことはないが、イスラエルとの和平合意が実現すればサウジにとっての現実的脅威はイランとフーシ派だけになるだろう。前者が米国のことを「大悪魔」と呼んでいること、そして後者の公式スローガンが「米国に死を」であることを考えれば、バイデン政権は、それが「主要非NATO同盟国」という形であれ何であれ、サウジとの合意締結を約束することに何のためらいもないはずだ。

実際、両国間の深く根ざした多面的な80年にわたる関係は別にしても、米国がサウジの油田をあらゆる攻撃から守ることは完全に理にかなっている。そのような攻撃が行われれば石油供給が不足し、それが最終的に大きな価格上昇を引き起こすことになるからである。どんなジュニアエコノミストでも冷笑家に対して指摘できるようなことだ。

それは別にしても、激しく批判されているバイデン政権にとって、重要な選挙の年を前にした大きな外交的勝利となるだろう。ただ、(4月にリンゼー・グラム共和党上院議員が公に支持を表明したように)超党派的な賛成がある程度はあるにせよ、このような決定を連邦議会に承認させるにはホワイトハウスによる多大な努力が必要だろうが。

最後に付け加えると、サウジとイスラエルの合意が実現すれば、ベンヤミン・ネタニヤフ首相率いるイスラエル現政権内の極右の狂信者たちを抑え込むと同時にパレスチナ人に国家を最終的に保証できる、待ち望まれていた一石二鳥の手段となるかもしれない。

我々の尊敬すべき同業者であるトーマス・フリードマン氏は、ニューヨーク・タイムズ紙に雄弁にこう書いている。「ユダヤ人至上主義者や宗教的過激主義者を含むネタニヤフ首相の連立与党は、次の質問に答えなければならない。ヨルダン川西岸地区を併合することもできるし、サウジアラビアおよびイスラム世界全体と和平を結ぶこともできる、両方はできない。どちらを選ぶ?」

繰り返すが、これまで書いたことはどれも公式には認められていない。しかし、可能性であれ浮上したことは、パレスチナ、イスラエル、そしてサウジアラビアににとって大きな前進だ。サウジは、ビジョン2030が実現した大きな繁栄を守るだけでなく、地域および世界の良き力になることを目指す、注目すべき外交を新たに始めているのだから。

— ファイサル・J・アッバスはアラブニュースの編集長。 ツイッター: @FaisalJAbbas

特に人気
オススメ

return to top