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ナクバを思い出しながら抱くかすかな希望

14 May 2019 12:05:59 GMT9

パレスチナ人は今日、71度目のナクバ記念日を迎える。ナクバは、イスラエル独立宣言の結果、パレスチナの人々に強制退去や侵略、不正義が降りかかった「大惨事の日」だ。

1948年のその日以来、パレスチナの土地を回復しようとする試みは、それが平和的な手段か軍事的手段かに関わらず、全て失敗してきた。事実、1917年にイギリスのバルフォア宣言によってイスラエルの国家の種がまかれて以来、パレスチナ人は非常に不利な立場に置かれてきた。イスラエルは、旧オスマン帝国の一部を継承して分割した2つの宗主国であるフランスとイギリスの支持を得ており、アメリカからは政治・軍事・金融面で莫大な支援を受けている。一方でパレスチナ人は、アラブの力添えに頼っている。彼らはアラブがイスラエルで起こそうとした戦争の結果、さらに多くの土地を失った。そしてパレスチナ人内部の亀裂、アラブの拒絶、またはイスラエルの強硬姿勢が原因で、多くの和平のチャンスを逃した。

アラブニュースが昨年のナクバ70周年記念日を特集で取り上げた時、私は、和平は「遠いがまだ可能」であると書いた。そして時間が経てば経つほど和解は難しくなると主張した。イスラエルがさらに多くの違法入植地を建設し、ハマスがより多くのミサイルを発射して、憎しみがさらに深まるからだ。

しかしここ数ヶ月の間、興味深い進展の兆しが見られた。まだ可能性の段階だが、状況が覆り、和解の可能性が高まって、そこに至るまでの距離が近くなるかもしれない。その進展とは、ジャレッド・クシュナー氏の和平プランのことだ。トランプ大統領の義理の息子でもあるこの大統領顧問が主導する取り組みには、多くの人が懐疑的な見方を示してきた。またクシュナー氏はその提案を厳しく秘密に守ってきたため、和平プランは実際には存在しないという意見を含む多くの憶測を生んできた。

そのような問題におけるクシュナー氏の経験不足に難癖をつけるのは、ベテランの政治家や外交官にとって非常に都合のよいことばかりだ。しかし、この対立を解消するための70年以上におよぶ試みにおいて、彼らはいったい何を実現してきたのだろうか?それは、過剰な「プロセス」と不十分な「和平」だったと言えるだろう。

既存の枠組みにとらわれずに物事を考える時だという強い反論が出ているのは、それが理由である。もしジャレッド・クシュナー氏が「ディール術」の達人であることが判明すれば、そしてそれをやってのければ、彼の「トランピアン」はどのようなものになるのだろうか?

皮肉屋は内容ついて何も知らないにも関わらずクシュナー氏の和平プランをもう否定しているが、パレスチナ人にとっては自分の国を持つ最後で最高のチャンスとなるかもしれない。

クシュナー氏の構想が明らかになるは、イスラムの聖月ラマダンが終わった6月初旬と予想されている。では、その中身はどのようなものだろうか?根拠のない憶測のいくつかに反して、サウジの情報筋はアラブニュースに対し、パレスチナ人が自身の民族国家を持つこととなる二国家解決になると話した。さらに、サウジアラビアがパレスチナ人に協定を押し付けようとしているという報道も真実ではない。「どのような提案もまだ、イスラエルとパレスチナ両サイドの合意と順守の承認が必要となる」と、サウジの情報筋は話した。「それは、これまでの全ての和平提案においてサウジがとってきた態度だ。それには、サウジが主導した2002年のアラブ和平構想も含まれる」。クシュナー氏の和平プランには当該構想の一部が含まれるだろうが、全く同じものにはならないだろう。

アラブニュースはクシュナー氏のプランについて、両サイドの痛みを伴う犠牲を必要とするものになると理解している。確かに、それはイスラエル人の不法な占拠を終わらせるが、紛争中の領土の交換が含まれている可能性もある。また、国境を確定するための合意された方法を見つけることでイスラエル人の安全を保証すると共に、パレスチナ人国家への武器の流入を制御することになるだろう。

アラブニュースが話を聞いたサウジと米国の二人の情報筋はどちらも、エジプトやヨルダンやその他の土地にパレスチナ人のための代替国家を用意するという陰謀説を否定した。「アメリカ人も、両サイドのエルサレムに対する繊細な感情と、イスラム教徒にとってのアル・アルサモスクの重要性を理解している」と、米国の情報筋は言う。全ての取り決めは、この問題の合意を可能にするものとなるだろう。

サウジアラビアはどのような方法で力添えできるだろうか?サウジの情報筋が言うように、2つの聖堂を持つこの王国だけがアラブとイスラム諸国に対し、パレスチナ人が一度は合意した提案に戻ることを説得できる。またリヤドは援助諸国と密接に協力して、パレスチナ人のために持続可能で豊かな生活を確保するだろう。そうすることで彼らはやっと、教育、雇用、そして経済の改善に集中することができる。

「他の諸国が重要な役割を担っている。ヨルダンは歴史的に極めて重要な役割を担ってきた。エジプトも同じだ。援助諸国、およびEUや日本などの開発提携国も支援することができる」と、その情報筋は言う。

パレスチナ人は受け入れるべきだろうか?プラン全体を見ることなく最終判断をするのは明らかに間違いだろう。しかし、同じことを繰り返して違う結果を期待するというのが狂気の定義でもある。70年の間、アラブが「ノー」と言うたびに、パレスチナ人はさらに多くの土地、権利、そしてチャンスを失ってきた。

今回は二国家解決を確定する最後のチャンスとなるかもしれない。パレスチナ人は熱心な態度で交渉し、未来の世代へ民族国家を確保するために必要なことを手に入れるべきだ。そのようにすれば、誰もがその勇気と犠牲に敬意を表するだろう。一方で、交渉のテーブルに着くのを拒否することからは何も得られない。

もちろんそれは、イスラエルが期待していることである。パレスチナ人がまた「ノー」と言えば、協定を確保するためにできることは全てやったが拒絶されたと、イスラエル人が主張するのを許すことになるかもしれない。そしてそれは、すでにイスラエルに対して寛大になっているトランプ政権を、よりいっそう寛大にさせることになるだろう。

結論:平和に機会を与えようではないか。

  • ファイサル・J・アッバスはアラブニュースの編集長である。
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