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今回ばかりはトランプが正しい 中国はとうに発展途上国ではない

ニュースメディアに向けて語る米国ドナルド・トランプ大統領(ロイター)
ニュースメディアに向けて語る米国ドナルド・トランプ大統領(ロイター)
30 Jul 2019 03:07:59 GMT9

控えめに言っても、貿易政策についてドナルド・トランプと見解が一致する人は多くない。米国大統領は、国際関係で貿易をめぐって対立を引き起こすという方略を好んで用いており、彼のツイッターアカウントから鋭い攻撃を受けた国は、中国、カナダ、メキシコ、日本、韓国、EUと多数に上る。貿易に関し、彼は何らかの点でG20メンバーのほぼ全員と対立しているのである。

そして、ホワイトハウスからもっとも辛辣なツイートを受ける側にいるのが、過去24年間にわたって国際通商を監督してきた世界貿易機関(WTO)である。

彼がなぜこれほど多くの相手を攻撃するのかは容易に理解できる。商業的に不当な扱いを受けていると感じられる状況でトランプが最初にとる手は、関税というショットガンに手を伸ばし、その原因とされる関係者に対して次々に経済的ペナルティを浴びせるというものなのだ。彼はこれを、「アメリカ・ファースト」政策の一環として、貿易立国としての米国の立場を守るものだと考えている。

彼に批判的な人々(そしてその数は膨大である)は、このやり方が世界貿易に損害を与えていること、そして結果的に、過去数十年間にわたり自由な国際通商システムによって繁栄してきた世界経済に損害を与えていることを指摘する。

米国内の批判者たち(またしてもその数は膨大である)は、こうした対決も辞さない政策によって生じた損失を補償するため、トランプが米国の生産者、とくに農家に対してフェデラル・ファンドを使わなければならなくなるという滑稽な事態が生じていると強調する。中国はイリノイ州産の大豆がなくてもかなり幸せに暮らせそうだが、大豆州の農家たちは、大豆で中国から得ていた収入なしでは生きていけないのだ。

トランプのやり方にはこのように馬鹿げたものが多いのだが、どんなに手厳しく批評する者であってもしぶしぶ同意せざるを得ない政策がある。それはWTOがいくつかの国に「発展途上国」というステータスを与え、さまざまな特権や利益を付与するという古いシステムである。

発展途上国の主な利点は、輸入品に関税や制限を課して国内産業を保護できるということである。WTO、そして発展途上国自身が、先進国や強力な輸出国とのより効率的な国際競争に直面する中で、国内経済を強固なものにするためにはこれらが不可欠であると述べているのだ。

WTOが設立された1995年当時であれば、こうした制度が適切だったと言っても過言ではない。しかし、現在の世界は大きく様変わりしている。とくに中国の台頭がその力学を一変させた。

ホワイトハウスは先週、中国を発展途上国に含めることに反対し、そして暗にWTOの構造全体に対して反対する方針を打ち出した。大統領は、「WTO加盟国の2/3近くが、自らを発展途上国とすることによって特別待遇を受け、WTOの枠組みにおける十分な関与を行なっていない」と述べた。

もちろん、その真のターゲットは中国である。彼は中国との間で貿易をめぐる生死をかけた争いで一歩も退けない状態にあるのだ。中国は経済力では米国に次いで2位、輸出と外国投資では世界1位の貿易大国である。中国を「途上国勢力」と呼ぶのは馬鹿げていると言うトランプの言葉は正しい。

中国が発展途上国であることを正当化する主な理由は、1人当たりのGDPが比較的低いことにある。GDPに換算した総経済力では米国に次ぐ第2位だが、14億人の人口で平均すれば、それはとてつもなく薄く引き伸ばされてしまうのだ。国際通貨基金(IMF)の基準では、中国の一人当たりの国民所得は18,000ドルで、これはドミニカ共和国とアゼルバイジャンの中間である。これとは対照的に、IMFによれば平均的なアメリカ人の年収は62,000ドルで、サウジアラビア人の年収は約55,000ドルである。

ホワイトハウスが言うところの「時代遅れの二分法」を何とかして是正する方法はあるはずだが、それが既存のWTOの枠組みの中でどのように実現されるかについての見通しは厳しい。WTOに対しては、トランプだけでなく、国際社会で大きな影響力を持つ多くの人々も改革を求めているからだ。G20大阪サミットでは、「切迫感を持って」WTO改革にあたるという共同決議が支持されている。

トランプの不愉快な手法は誤った形で人々の間に摩擦を引き起こすだけであることが多いのだが、今回ばかりは重要な真実をついていると言うことができる。中国はもはや発展途上国ではない。そして、その現実を反映するよう、ルールを改める時期に来ているのだ。

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