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自分たちの傲慢さで目がくらんだイスラエルの指導者たち

ヨルダン川西岸のマーレ・アドゥミムのイスラエル入植地。(ロイター)
ヨルダン川西岸のマーレ・アドゥミムのイスラエル入植地。(ロイター)

月曜日にマイク・ポンペオ国務長官は、米国は方向転換し、イスラエルの入植地を国際法違反とみなさないと発表した。また、他の領土紛争に適用されないイスラエル特有の「現実」があると発言した。ポンペオ長官の発言を受けて、イスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相は「歴史的な日」だと述べた。

ネタニヤフ首相とドナルド・トランプ米大統領との特別な関係のおかげで、イスラエル政府は近年の国際法違反の大半の責任を問われてこなかった。しかし、権力に酔ったイスラエル政府は、米国全体の雰囲気が変化しつつあり、次の政権で政策が変更される可能性があることがわかっていない。

先週、ソーシャルメディア上であるビデオが拡散された。駐米イスラエル大使が入植地を正当化するための講演を行おうとすると、突然全員が大使と入植地を非難する看板を掲げて立ち去ったのだ。これが起こったのはどこかの左翼の無名の学校ではない。ハーバード大学ロースクールでのことだ。入植地とイスラエルの侵略に対する反対は、ますます主流の言説の一部になっている。

4月に行われた世論調査では、イスラエル政府を好意的に見ているのは民主党員の26%に過ぎなかった。バーニー・サンダース、エリザベス・ウォーレン、ピート・ブッティジェッジら、大統領候補者の何人かは、今年のアメリカ・イスラエル公共問題委員会(AIPAC)の会議に出席しなかった。マイク・ペンス副大統領は同会議で誇らしげに演説し、イスラエルへの支持を示す一方で、8人の民主党候補者がこのイベントをボイコットしたと非難した。リベラル派の団体「ムーブオン(MoveOn)」は、民主党の候補者たちにAIPACの会議に参加しないよう求めた。イスラエルの活動に反対を表明できるのは、もはやサンダースだけではないのだ。

しかし、イスラエル政府は、そのうちに政策の変化を生み出すことになる世論の変化を把握していないようだ。11月14日、イスラエルは民間人の家を爆撃し、彼の家族8人を殺害した。悲痛な報道の中で、その民間人男性は、自分たちは「イスラム聖戦」のメンバーではないと言って、殺された彼の子供たちの服を見せた。彼らは普通の家族だった。イスラエルは、世論が民間人の犠牲者を巻き添え被害として扱うと考えて、こだわらずに爆撃する。しかし、遅かれ早かれ、違反の責任を負うことになるだろう。ヨーロッパではすでに世論が変わってきている。

国連総会第2委員会では先週、イスラエルによる2006年のレバノンへの爆撃で海岸に生じた油膜について、レバノンに賠償するようイスラエルに求める決議が採択された。同決議では、天然資源に対するパレスチナ人の主権も再確認された。同様に、決議はイスラエルに対し、パレスチナのインフラや家屋を破壊するのを止め、ガザを含むパレスチナの復興・開発プロジェクトを実施するよう求めた。

イスラエル政府は、取るに足らない、注目されることのない国連決議の一つとみなすかもしれない。しかし、世論が変わり続けるにつれて、イスラエルも従わざるを得なくなる可能性がある。実際、できるだけ早くパレスチナおよびその近隣諸国と和平を実現することは、イスラエルの利益にかなっている。イスラエルは、違法な入植地を増やすことで、「新しい現実」を作り出していると考えている。「新しい現実」とは交渉を行う上で新しい基準となるものだ。しかし、国連決議に従わざるを得なくなった場合、入植地は実際には交渉の有利な材料ではなく、自らが招いた問題となる。

「反ユダヤ主義」の概念は、イスラエルに批判的なものだけでなく、イスラエルに触れただけであっても、ほとんどすべてのものに適用されるが、一方で、他の誰かを批判するのと同じようにイスラエルを批判しても構わないと、ますます多くの人々がこの概念が該当する範囲を制限している。

先月行われたJストリートのイベントで、ネタニヤフは人種差別主義者だと言うことは反ユダヤ主義ではないとサンダースが発言した。AIPACと敵対的な関係にあり、二国家解決案を強く主張するJストリートは、5人の民主党大統領候補を招待した。民主党がトランプ政権に取って代わる可能性があり、もし政権交代が実現すれば、イスラエルはパレスチナ人に国家を与えざるを得なくなるだろう。

政府が依然としてワシントンに影響力を持っている間に、パレスチナ人との交渉を締結し、崩壊してしまう前に、何であれアメリカ国民の間に残っているイスラエルのポジティブなイメージを維持することはイスラエルの利益になる。しかし、イスラエル政府の問題は権力の傲慢さだ。これは多くの帝国を崩壊へ導いたものだ。権力で目がくらんだ国家が非合理的な行動を始めるのだ。

これまでのところ、イスラエルはいくつかの国連決議に違反しても、国連での米国の支持によって責任を逃れることができた。しかし、世間の認識が少しずつ変化するにつれて、この方針は最終的にどこかの時点で変化する。その時、イスラエルは他の国々と同様に国際法を遵守せざるを得なくなる。しかし、傲慢さで目がくらみ、その時がまもなく来るというのがイスラエル政府には見えないのだ。

ダニア・コレイラット・カティブ博士は、ロビー活動に焦点を当てた米国とアラブの関係を専門とする。エクセター大学で政治学の博士号を取得し、ベイルートのアメリカン大学所属のイッサム・ファレス公共政策・国際情勢研究所の研究員である。

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