Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter

ヒズボラのいないレバノンを想像してみよう

レバノンのアイタローン村にはためくヒズボラの旗(AFP)
レバノンのアイタローン村にはためくヒズボラの旗(AFP)

ヒズボラとその指導者が吐く嘘をまだ信じている人がいると思う。今週のイスラエルへの攻撃にレバノンを利用したことを正当化するための嘘だ。同時に、ヒズボラがもはや誰も説得されないような言い訳を使って起こす行動や、レバノンに与えているダメージに同意する人は、ヒズボラ内にすらいないと思う。

南部の開放から、聖地やシリアのシェバー・ファームズの保護に至るまで、ヒズボラは何年も民族的、愛国的、宗教的な言い訳を続けてきた。レバノンはヒズボラのせいで金融取引や貿易や観光の面で国際的に窮地に立たされ、国内では空港から政府庁舎までが占領され、支配されている。

レバノン人一人一人がこれまで、そして今でも払い続けている代償は簡単に計算できる。レバノンにおける有資格のエンジニアの年収は24,000ドルを大きく下回る。これは他国でのエンジニアの給与の約1/4であり、同じことが医師、農夫、タクシードライバーにも当てはまる。

ベイルートの小さな空港は毎年900万人に満たない旅行者を処理するが、人口がレバノンの半分以下のドバイの空港は毎年7,000万人の旅行者を処理する。イギリスのドーヴァー港は毎年1,300万人の旅客を処理する一方、ベイルートの港には毎年9千人しか訪れない。

さらに、レバノン国民には医療、電気、道路や衛生等の公共サービス、その他の多くの基本的なサービスが不足している。通常は政治家の責任とされるが、主な原因は武装組織ヒズボラの存在だ。政治家にヒズボラを責める勇気など到底ない。

ヒズボラが国家の低収入と政治的いじめの唯一の原因である。抵抗を口実として武装民兵を召集しているだけだ。

故ラフィーク・ハリーリー首相がベイルート国際空港を再建したとき、ヒズボラとシリア政権は徹底的に彼を陥れるキャンペーンを展開した。国が必要とする容量を超える空港を作ったかどで、腐敗を疑った言いがかりをつけた。建設計画の最終案では年に3,500万人の旅行者を処理するよう設定された。このいじめはハリーリーの暗殺で幕が下りた。空港開港からわずか4カ月後のことだった。

国を貧しくするような行いは未だ続いており、その狙いはヒズボラの支配下にある国家に関して他の政党組織が独立した決定を行うことやヒズボラとそのメンバーより強くなることを防止することである。

武装組織としてのヒズボラの存在によりレバノンの600万人の民に加えられた害を理解することは難しいことではない。しかし難しいのは、今日でもヒズボラを支持している人たちを理解することだ。イスラエルに対する抵抗の主張を響かせ、武装や国家・当局に対する日々の反抗を正当化する人たちだ。

他の前線の国家はすべて、イスラエルと和平協定を締結している:エジプト、ヨルダン、パレスチナ自治政府、またシリアですら停戦合意を結んでおり、それゆえシリアはヒズボラを使ってレバノンの代わりに英雄的行動を実行してきた。

世界中の旅行者が地域でもトップ人気の行き先であるはずのレバノンを訪れない。ほとんどの政府がレバノンを警告リストに加えたからだ。そしてその唯一の理由はヒズボラだ。

レバノン国民の貧困、何百万人もの移住、そしてシリア難民の流入はすべてヒズボラによるものだ。国家の弱体化とその貧弱なサービスもすべてヒズボラのせいだ。

ヒズボラがレバノンリラの価値下落、低賃金、および失業率の高さの原因だ。資格を持つ人が同地域の他の国の人の2倍の給与の仕事を探せた時代があった。

イスラエルが問題なのではない、ヒズボラが問題なのだ。もしレバノンの政治家がこの問題に対処しなければ、この国はイランとその代理組織が掘った穴の中から抜け出すことができなくなる。

ヒズボラの信奉者やファンは、ヒズボラを強制的に武装解除させ、節度ある政党に変身させることにより、レバノンを守りながらヒズボラを維持することもできる。さもなければ、さらに痛みの大きい決断が下されるだろう。

最後に言いたいことはこれだけだ:ヒズボラのいないベイルート、ヒズボラのいないレバノン全土を想像してほしい。

アブドゥルラーマン・アル・ラシードはベテランのコラムニストである。ニュースチャンネルのアル・アラビーヤにて元ジェネラルマネージャー、アシャラ・アル・アウサトにて元編集長を務めた。

Twitter: @aalrashed

 

https://www.arabnews.com/node/1548711

特に人気
オススメ

return to top