Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter

トルコ・リビア間の海洋に関する合意が近隣諸国との緊張を高める

トルコの掘削船Yavuzがキプロス沖の東地中海でトルコ海軍のフリゲート艦TCGゲムリク(F-492)に護衛されている。(ロイター)
トルコの掘削船Yavuzがキプロス沖の東地中海でトルコ海軍のフリゲート艦TCGゲムリク(F-492)に護衛されている。(ロイター)
15 Dec 2019 12:12:48 GMT9

トルコ・リビア間の合意も含め、昨今の東地中海情勢を見ている間、私はある悪評高い記事のことを思い出した。アンカラのビルケント大学の国際関係の教授、Pinar Bilginによる「誰の中東なのか」と題されたものだ。

彼女は中東の地域を4つに区別して考えた。中東、アラブの中東、ムスリムの中東、そして地中海の中東。私はこれらのうち4つ目に注目したい。この地域では、EUによる安全保障に関する認識が非常に重要となる。

10年ほど前に東地中海で海洋ガスが発見されて以来、沿岸の国家は自国の国益を最大化しようとする中で、二国間条約を結んだり国際法を臨機応変に解釈することで天然資源を最大限活用しようとしてきた。国際社会は、東地中海の緊張と紛争を緩和する道を模索する中で行き詰まりを見せている。これは多面的で重層的な問題であり、そのうちの一つがリビアである

リビアは事実上分断国家であり、そこでは国際的な組織が現在進行中の内戦に深く関わっている。前指導者のカダフィ大佐が2011年10月に倒された激しい紛争の後も、近い将来に平和的な解決に至る兆候は見られない。その上、代理戦争と言ったような多くの要素が関与するようになり、政治的及びイデオロギー的方針でさらに国家が分断されてしまった。

トリポリにはアンカラに支援を受ける政府が存在する一方で、他方にはハリファ・ハフタル将軍のリビア国民軍が存在する。これを支援する国家にはアメリカ、ロシア、そして湾岸諸国が含まれる。

トルコ・リビア間の合意はこのリビアにおける複雑な状況と東地中海での高まる緊張を背景に調印された。11月27日、トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領とリビアのファイズ・サラージ政権は地中海における二国間の海上境界の制定に関する了解覚書に調印した。これは法的に有効な合意と考えられ、トルコ議会において12月5日に承認され、2日後に官報にて公布され、施行された。

批准をしたことにより、この合意が単なる現政権による方針ではなくこの国の全政党の一般的見解を表していると示すこととなった。これはトルコにとって初の沿岸国との排他的経済水域(EEZ)の合意であるため、この合意は歴史的なものだと言えよう。EEZとはそこにおいてある国が海洋資源の調査と利用について特別な権利を持つ海域のことである。トルコの全ての政党がこの同意を好意的に受け入れ、これはこの国の国益に適うと認めた。なぜなら、これにより掘削、パイプライン、その他の海洋の権利が地中海のうち2つの国の間のかなり広い部分において保障されたからである。

トルコ国内ではこの合意に関して2種類の解釈が存在している。政府の外交政策に批判的な人々はこれには議論の余地があると主張している。とりわけ、この合意の未来はリビアの未来によるからである。

トルコが特定の立場を取ったため、合意の成否はリビア側の協力者の成否にかかっている。政府の外交政策に賛成する人々は、この合意は一撃のもとに敵対する東地中海の沿岸諸国の目論みを打破できると主張している。
この合意には他の沿岸国家からの厳しい反発もあった。特にギリシャからである。海の境界画定の合意だけでなく、トルコとリビアは広範な安全保障と軍事協力に関する合意にも調印している。トルコのフルシ・アカル国防大臣は12月8日、この合意は他国の法的権利への脅威でも違反でもない、と表明した。

エルドアンは、この軍事協定はトリポリ政府の要請があればリビア国内に部隊を展開する権利をトルコに与えると述べた。これは派閥間紛争に苛まれている国家、リビアにおける国連による武器禁輸に違反しない、と付け加えた。

6月にハフタルはトルコとの全ての関係を絶ったと表明し、リビアに入国しようとする全てのトルコの民間機または民間船は敵性とみなす、と述べた。

沿岸国間の(特にNATO同盟国であるトルコとギリシャの間の)海上境界に関する慎重な対話を次期EU首脳部が押し進めることが、この地域が混乱に陥るのを回避するのに不可欠であろう。

シネム・センギス

これらの情勢を考えると、全ての目はロシアの反応へと向いていた。ロシアはシリアにおけるトルコの重要なパートナーである。火曜日、エルドアンはロシアのウラジーミル・プーチン大統領とリビアにおける最新情勢とハフタルの状況について話し合う予定だ。彼はリビア危機は「第二のシリア」になりつつある、と述べた。最近のテレビインタビューで大統領は1月の会談でプーチンに直接本人に訴えかけることを誓った。トルコのリビアへの特別代表によればプーチンは1月8日にトルコを訪問する予定で、リビアについて議論が行われるとのことだ。このようにしてモスクワとアンカラはいつの間にか、シリアとだけでなく、リビアとの対立を深めている。

トルコがリビアに部隊を派遣するかどうかについてはまだ疑問が残る。確かなのは、全てのトルコの政治家たちがリビアとの合意を歓迎しているが、多くの人々はシリアとは違い直接トルコと隣接しているわけではない国で部隊を展開することにはおそらく反対だろうということだ。さらに、ロシアとアメリカのリビアに対する姿勢を考えると、そこに部隊を派遣すれば国際社会の反発を招く可能性が高い。

この全てを鑑みると、高まる緊張を緩和する重大な責任が国際社会の、とりわけEUの双肩にかかっている。沿岸国間の(特にNATO同盟国であるトルコとギリシャの間の)海上境界に関する慎重な対話を次期EU首脳部が押し進めることが、この地域が混乱に陥るのを回避するのに不可欠であろう。

  • Sinem Cengizはトルコの政治アナリストで、トルコの中東との関係が専門。 ツイッター: @SinemCngz
特に人気
オススメ

return to top