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ガザへの道:自由船団が再び航海に

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24 Dec 2019 08:12:30 GMT9
24 Dec 2019 08:12:30 GMT9

私たちにとってガザとはなんでしょうか?イスラエルのミサイルや粗末なロケット砲、破壊された家、弾丸の雨の降りそそぐなか仲間に追い払われる傷ついた子供でしょうか?ガザの血まみれの画像、あるいはドラマチックな映像が日常的に私たちの元へと届きますが、その並外れた不動の心、抵抗のための日々の行動、ソーシャルメディアの投稿をいつもどおりに一目見るだけでは決して本当に理解することはできない種類の苦しみなどという、そうしたガザ地区の現実の日常を真に捉えているものはそこにはありません。

とうとう、国際司法裁判所(ICC)の主任検察官であるファトゥ・ベンソーダが「東エルサレムを含むヨルダン川西岸およびガザで戦争犯罪が行われた、あるいは今も行われている」との「謝罪」を表明しました。12月20日にICCの声明が発表されてすぐに、新パレスチナ派のグループはめったにないつかの間の安心を感じました。ついにイスラエルは非難されることになり、孤立し包囲されたガザ地区での度重なる大量殺戮、またヨルダン川西岸での軍事占領とアパルトヘイトなどの行為への代償を支払うことになる可能性もあるのです。

ただし、ICCが法的手続きを開始し評決を下すのには何年もかかる可能性があります。さらに、イスラエルを起訴するというICCの決定が実行はもちろん尊重される政治的保証はありません。

一方でガザの包囲はいまだ続いており、2014年の戦争、またそれより被害は少ないが、11月に起こった最新のイスラエルの猛攻撃といったような大規模な戦争によってのみ中断されます。そして戦争が起こるたびにより悲惨な統計が作られ、より多くの命が奪われ、より痛ましい物語が繰り返し語られるのです。

何年ものあいだ、世界中の市民社会団体がこの恐ろしい現状に揺さぶりをかけるために努力してきました。彼らは組織を作り、座り込みを行い、政治の代表者たちに手紙を書くなどしましたが、何の成果も得られませんでした。動かない政府に苛立ちを覚えた活動家たちの小さなグループは、2008年8月に小さな船でガザへと旅立ち、国連にできなかったことを成し遂げました。たとえつかの間であったとしても、彼らは貧しいガザ地区のイスラエルによる包囲を壊したのです。

フリーガザ運動のこの象徴的な行動には大きなインパクトがありました。占領下のパレスチナのパレスチナ人たちへ、彼らの運命はイスラエル政府および軍事力によってのみ決められるわけではないこと、国際社会の恐ろしい沈黙に挑戦することができる人々がいること、そしてすべての西洋人がパレスチナの長年に渡る受難について政府のように共謀しているわけではないことを示す明確なメッセージを送ったのです。

それ以来、小規模の艦隊で海を渡る、あるいは大規模のキャラバンでシナイ砂漠を行くかして、 さらに多くの連帯使節団が彼らの後に従おうと試みました。一部はガザにたどり着き、医薬品やその他の物資を届けることに成功しました。しかしその大半が送り返されるか、国際海域でイスラエル海軍に船を乗っ取られたのです。

これらの結果すべてがパレスチナ人との連帯の新たな一章を書くことになり、それは時たまのデモや一般的な嘆願書への署名を超えたものでした。

イスラエルの暴力は無計画なものでもなければ、ただイスラエルの悪名と国際法および人道法の無視を反映するだけのものでもないことを理解しなければなりません。

ラムジー・バルード

2002年に起こった第2次パレスチナインティファーダは、パレスチナにおける「活動家」の役割をすでに再定義していました。国際連帯運動(ISM)の設立により世界中の何千人もの国際活動家たちがパレスチナでの「直接行動」に参加することができましたが、それは象徴的にとはいえ、通常は国連保護軍が行う役割を果たしたのです。

しかしISMの活動家は、イスラエルの占領に対する市民社会の拒絶を示すのに非暴力的な手段を採用しました。予想通り、イスラエルはその活動家の多くがテルアビブの基準で「友好的」とされる国から来たという事実を尊重しませんでした。アメリカ人のレイチェル・コリーとイギリス人のトム・ハーンドルはそれぞれ2003年、2004年に殺害されましたが、それは後に続くイスラエルの暴力の単なる前兆にすぎませんでした。.

2010年5月、イスラエル海軍はトルコ所有のMV・マーヴィ・マルマラ号などで構成される自由船団を攻撃し、10人の非武装人道主義者を殺害、また少なくとも50人以上を負傷させました。レイチェル・コリーとトム・ハーンドルの殺害事件のときのように、連帯船へのイスラエルの攻撃に対しての本格的な説明責任はありませんでした。

イスラエルの暴力は無計画なものでもなければ、ただイスラエルの悪名と国際法および人道法の無視を反映するだけのものでもないことを理解しなければなりません。すべての暴力的なエピソードには、「イスラエルの問題」に外部の人間が関わろうとするのを思いとどまらせたいというイスラエル側の目的があるのです。それでも、もちろんイスラエルも含めたどんな国にも戦争犯罪を免責する権利はないという挑戦的なメッセージを携えて、連帯運動は何度でも戻ってきます。

オランダ・ロッテルダムでつい最近行われた会議の後、多くの国際団体で構成される自由船団の国際連合が再びガザに出航することが決定されました。連帯使節団の派遣は2020年の夏に予定されていますが、過去35回の試みのように、船団がイスラエル海軍に妨害される可能性は高いでしょう。それでも、ガザの包囲が完全に解除されるそのときまで別の試みが続き、さらにまたより多くの試みが続くでしょう。これらの人道的使節団の目的は少量の医薬品を届けることではなく、パレスチナ人の占領と孤立を以前の状態に、「イスラエルの問題」にしようとするイスラエル側の物語に抵抗することにあるのが明らかになったのです。

占領下のパレスチナにある国連事務局によると、ガザの貧困率は年2%という大変な速さで増加しているそうです。2017年末にはガザの人口の53%が貧困状態にあり、その3分の2が「深刻な貧困」のなかで暮らしていました。この恐ろしい数字には40万人以上の子供たちが含まれています。

ソーシャルメディアに投稿される画像や映像、そして図表は、イスラエル軍のガザでの軍事的および政治的計画の達成のため、来る日も来る日も本当の飢えを経験している40万人の子供たちの苦しみを伝えることはできません。また、ガザとはイスラエルのミサイル、破壊された家、傷ついた子供であるだけではないのです。それは世界全体からほとんど完全に孤立して、苦しみ、抵抗する国民全体なのです。

真の連帯は、必要であれば遠洋を航海し、イスラエルに長引くパレスチナ人への占領と包囲を終わらせることを目的とするべきです。感謝すべきことに、自由船団の善良な活動家たちはまさにそれを行なっています。

ラムジー・バルードはパレスチナクロニクルのジャーナリスト、執筆者、および編集者。近著に「The Last Earth: A Palestinian Story(原題)」 (プルートプレス、ロンドン)。パレスチナ研究によりエクセター大学博士号取得。Twitter: @RamzyBaroud

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