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節目となるダボス会議で団結を目指す世界のリーダーたち

スイスのダボスで開催される世界経済フォーラム(WEF)の会場となる、コングレスセンター。(ロイター)
スイスのダボスで開催される世界経済フォーラム(WEF)の会場となる、コングレスセンター。(ロイター)
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17 Jan 2020 02:01:40 GMT9
17 Jan 2020 02:01:40 GMT9

世界経済フォーラム(WEF)は、来週スイスのダボスで開催される、50周年の節目となる首脳会議へ向けて準備の最終段階に入った。今回は半世紀にわたる同様の会議を経た国際協力の節目となるとはいえ、暗雲が垂れ込めている。その不安は今年のテーマ「持続可能で団結した世界を築くステークホルダー」にも反映されている。

その緊張感を体現しているのが、スイスのスキーリゾート地でこの会議に出席するドナルド・トランプ米大統領だ。気候変動パリ協定を含む世界的な協定の範囲を弱体化させ、過去数年にわたり国際的な協定および協力を破綻させる主な要因となってきたのはトランプ大統領の「米国ファースト」である。

確かに、トランプ氏はアジェンダにおいて国内外でかなりの支持を得ており、11月にはさらに4年の任期を勝ち取る可能性が高い。だがトランプ氏はダボスおよびその周辺のエリートや活動家からはあまり支持されていない。トランプ氏を世界の救世主ではなく危険人物とみなす傾向にあるからだ。

他の人々はダボスでもっと歓迎されており、例えば習近平氏は2017年にスピーチをした最初の中国最高指導者となった。トランプ氏による保護貿易論のレトリックをものともせず、グローバリゼーションを熱心に擁護した。

持続可能で団結した世界を促進するという今年のダボスの主要テーマは、ソ連共産主義の崩壊を見た1980年後半から1990年前半の約束から1世代が過ぎ、冷戦後の世界のありように対する多くの期待が、とりわけ国際協力に関して打ち砕かれてきたことを強調している。WEF自体は、対話のための世界規模のプラットフォームにおける過去数十年の備えを通し、この楽観主義と悲観主義の波に乗ってきた。

1988年にギリシャとトルコによって署名されたダボス宣言は、両国間の戦争を直前で回避させ、国際協力の強化に成功した。翌年、北朝鮮と韓国が最初の閣僚級会合をWEFで開催し、東ドイツのハンス・モドロー首相とドイツのヘルムート・コール首相は、1990年にドイツ再統一を議論するために集った。

30年が過ぎ、平和で満足のゆく生活を提唱する自由主義、資本主義、民主主義による普遍的な秩序がもたらしうる未来の理想なビジョンは蝕まれてきた。複数の報告が指摘しているように、貿易摩擦、環境リスク、サイバー犯罪、地政学的リスクといった現在の潜在的に有害な組み合わせが、世界の政治経済の基本構造を脅かしている。

間違いなく1世代前から、軍事的な意味では確実に、米国は世界最強の国である。また、例えば今月のガーセム・ソレイマーニー暗殺後の対応を検討中のイランなど、想定しうるいかなる敵に対しても、米国はその圧倒的な軍事力を展開できる。

とはいえ、米国主導の秩序に立ちはだかる複数の難問が存在し、WEFが議論するであろう国際的な決裂を後押ししている。例えば、ロシアのクリミア併合後、トランプ氏が緊張緩和に努める意欲を公言していたにもかかわらず、米露関係は冷戦以来最も緊張が高まっている。さらに、イスラエルとパレスチナの和平プロセスは再崩壊し、米国と北朝鮮は朝鮮半島の核外交において行き詰まっている。

加えて、アメリカ同時多発テロ事件から約20年が経過しても、米国は依然としてアフガニスタンと中東に大きく関わっている。実際、2020年にイランとの緊張が高まり続けるなら、米国はますます中東問題の深みにはまる可能性がある。

とはいえ、プラスの側面を見れば、今の世界には国際協力のためのいくつものチャンスが存在し続ける。2015年の画期的な世界気候変動パリ協定の例を挙げておこう。これは、地球温暖化に取り組む努力を促進する歓迎すべき一歩となった。

冷戦後の世界のありように対する多くの期待は、とりわけ国際協力に関して、打ち砕かれてきた。

アンドリュー・ハモンド

30年前と比較して、中国の台頭は世界情勢における最大のゲームチェンジャーの1つとなった。さらに、米国と中国が貿易協定の第1段階に署名する週には、国際秩序の将来が米中2国間の関係に左右される可能性がますます高まる。これは、 時に多角的世界とよばれるもの、緩やかに調整された2国間および地域の貿易協定のネットワークを形成する可能性がある。

そのような未来が実現できるかどうかの重要な指標の1つは、最終的に経済的緊張を解消するため、双方がより広範で、より野心的かつ持続可能な第2段階の合意に達することができるかどうかである。そうなれば、世界がゼロサムの貿易関係、最終的には本格的な経済戦争へと突き進む潜在的な代替案ではなく、新たな多角的貿易体制の形成につながる可能性がある。

多角的貿易体制は現状よりも複雑で満足度は低いが、さもないと我々すべての運命となりうるゼロサム世界よりはましである。

アンドリュー・ハモンド氏はロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのLSE IDEASのアソシエイト。

 

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