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世界中でガラスの天井を打ち破る女性たち

レバノンの新閣僚:(左から右に)ラミヤー・ヤミーン労働大臣、マーリー・クロード・ナジュム司法大臣、ザイナ・アクル国防大臣、ファールティー・ウーハニヤーン青年・スポーツ大臣、マナール・アブドゥルサムド情報大臣、ガーダ・シャリーム避難民担当大臣、バーブダの大統領府にて。(AP Photo)
レバノンの新閣僚:(左から右に)ラミヤー・ヤミーン労働大臣、マーリー・クロード・ナジュム司法大臣、ザイナ・アクル国防大臣、ファールティー・ウーハニヤーン青年・スポーツ大臣、マナール・アブドゥルサムド情報大臣、ガーダ・シャリーム避難民担当大臣、バーブダの大統領府にて。(AP Photo)
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26 Jan 2020 12:01:28 GMT9
26 Jan 2020 12:01:28 GMT9

近年、世界で政府のリーダー的地位や意思決定機関の重要なポストに就く女性はますます増えている。現在そしてこれまで、どの国の政治においても要であり続ける女性の存在や影響力は否定しがたい。

今年の初めには、欧州およびアラブ世界でも、女性がいくつかの重要なポジションに任命された。

大規模デモで揺さぶられる中、レバノンはザイナ・アクル氏を国防大臣に任命。アラブ世界で女性がこのような役職に就くのは初めてのことだ。正統派キリスト教の家族出身であるアクル氏は軍隊や国防での経歴がないにもかかわらず、同役職に任命された。

公人として比較的多くの女性が重要なポストに就いているレバノンは、地域の中ではリベラルとして知られているが、依然政治は男性中心に回っており、家父長制が国を牛耳っている。これは、宗教的および宗派的な敏感性に基づく、レバノンの複雑な権力分担制度、またアラブ世界における一般的な女性の地位と関連している。しかし昨年、レバノンは初となる女性の内務大臣を任命し、同大臣はこれを「すべての女性の誇り」だと称賛した。

サード・ハリリ首相の辞任後、ハッサン・ディアブ新首相は6人の女性閣僚を含む新内閣を立ち上げた。新たなレバノン政府には、国を軌道に戻すための仕事が山積みだ。新内閣が直面する課題には、国民の信頼回復、多民族社会における複数の党派間での信用と平和の構築、経済状況の改善、デモ隊の要求に対する効果的な対応などがある。そのため、チャンスと課題の両方が新内閣の女性閣僚を待ち受ける。国防および内務大臣はすでに、国家安全保障に関する状況に対処するのに女性は相応しくないというステレオタイプを打ち破った。

その他、注目すべきは政府高官の役職を担う女性の数が低かったギリシャだ。ギリシャ議会は先週、圧倒的過半数の支持により、最高裁の裁判官で人権保護活動家の62歳のエカテリニ・サケラロプル氏を同国初の女性大統領として選出した。前進的な女性裁判官を大統領に推薦するという前代未聞の動きに驚いた者も多くいたが、キリアコス・ミツォタキス首相は、「ギリシャが未来に向けて国を開く時が来た」とし、さらにギリシャ社会の変化は「トップから始まり、ギリシャの女性たちは相応しいポジションを与えられるようになる」と加えた。

2党制政治の分裂状態が当たり前となっていた国が、間もなく政治スペクトル全体からの幅広い支持を受けた無党派の大統領を迎えるというのは意義深いことだ。サケラロプル氏は保守派の与党新民主主義党が推薦したが、最大野党である急進左派連合(SYRIZA)や中道左派の「変化のための運動」の支持も確保できた。しかし、このベテラン裁判官は国の最高行政裁判所である国家評議会で女性として初めて議長を務めたこともあり、ガラスの天井を打ち破るのは今回が初めてではない。

10年間にわたる財政および政治的危機からの脱出を試みる国の代表への就任を前に、次期大統領は「財政危機、気候変動、人口の大規模な移動とそれが引きおこす人道的危機、法の支配の崩壊、そしてあらゆる形の不平等や排斥といった、21世紀の困難な状況や課題」について言及している。

レバノンのハッサン・ディアブ新首相、6人の女性閣僚を含む新政府を確立

シネム・センギス

昨年10月、ベルギー国王は同国の200年近い歴史で初めて、女性を首相に任命した。彼女もまた、重要な役職に就く女性の増加を示す多くの例の1人だ。

言うまでもなく、女性閣僚の増加は女性の政治参加を促す。「女性が世界を動かせば、戦争はなくなる」という言葉が昔からあるが、これは正解でもあり、間違ってもいる。歴史的事実から、この言葉には完全に同意できない。トルコの最初で今のところ唯一の女性首相タンス・チルレル氏、そしてインドのインディラ・ガンディ首相がその例だ。その理由として考えられるのは、家父長制への支持が強い国では、女性リーダーはその性別のせいで「弱い」と見なされ、この認識によって一部の女性リーダーはさらに攻撃的な政策に踏み出そうとする。しかし、男性中心のリーダーシップも平和をもたらしてはいない。つまり上記の言葉は厳密には真実ではないかも知れないが、政府のトップリーダーの役職に女性が増えることは、大きな変化につながるという点には合意できるだろう。そしてその変化は不利ではなく、おそらく前向きなものだ。

  • シネム・センギス はトルコと中東の関係を専門にするトルコの政治アナリスト。 Twitter: @SinemCngz
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