4年前に「ビジョン2030」を策定して以来、サウジアラビア王国は、経済のさらなる多様化と発展を目指したいくつかの社会および経済の変革を経験している。より高額の投資、民営化拡大、革新的ソリューションへの政府支援の強化、そして特にエンターテイメント、カルチャー、スポーツなどの分野における新しいテクノロジーのより広範囲な導入を通して、サウジは目を見張る速さで大きく前進している。

サウジアラビアは現在、2020年開催のG20議長国に決まっている。2020年G20の3つの主要な目標は、人々に力を与えること、地球を守ること、そして新たな領域を生み出すことだ。3つ目の目標には、長期的で果敢な戦略の採用により革新と技術的進歩の恩恵を共有するという目的が含まれる。サウジ主催によるこのG20の目標を促進させるために、サウジデータ・人工知能庁はさらに、初開催の人工知能（AI）サミットを主催する。このG20の目標の第3の要素はさらに、「ビジョン2030」と直接的に結びついている。

「ビジョン2030」は、サウジ経済、特に製造、ヘルスケア、観光といった主要分野における革新と近代化のために適切な環境を作り出すことに、より大きな重点を置いている。これらの分野は2030年までに、ほとんどがテクノロジーに推進されるようになるだろう。サウジは現在、目標の達成に向けて次のことに取り組んでいる。競争力強化のための製造・サプライチェーンの自動化。平均寿命を延ばすことを目的とした、医療提供者と患者が容易に利用できる電子的医療記録の使用。そして、より多くの訪問者を引き付けるための、スマートツーリズムアプリの使用とカルチャー、レジャー、エンターテイメント活動への投資。

サウジアラビアはデジタル化とAIを主要な手段として、様々な方法で「ビジョン2030」の目的を推進させている。IoTやブロックチェーンなどのAIやテクノロジーだけでなく、情報伝達技術インフラストラクチャ―の発展により、新たなビジネス、製品やサービスが生まれると考えられ、よって「ビジョン2030」の目標を念頭に置いたサウジ変革への下支えが活気づけられる。その結果、テクノロジーにより、起業家は自らのアイデアを発展させることができ、既存の市場関係者は将来の仕事のために自社従業員のデジタルスキルを確実に向上させることに乗り気になるのだ。

起業家精神を花開かせるのに加えて、「ビジョン2030」の重要な目標の一つは、現在は大きく天然資源に依存している収入源を多様化してサウジ経済の構造を革新することで、デジタルテクノロジーの利用をベースとした新しく開かれた経済に向けた移行の助けとし、貿易と投資の革新的な形態を創り出すことだ。サウジ政府のアプローチは、AI、ロボティクス、IoT、より広範囲でのクラウドコンピューティングといった変容するデジタルソリューションを導入することだ。

これらの目標達成を支えるために、サウジはAI部門をサポートするために準備した新たな特別法を導入しており、これにより中東地域で初めてIoT分野にライセンスを与える国となった。この開発はサウジアラビアが、デジタル革命に促進される新たな機会を活用することにより、発達しつつあるIoT市場の地域リーダーになるための基礎となっている。IoT市場の価値は、2030年までに120億ドルを超えると予想されている。

サウジはAI部門をサポートするために準備した特別法を新たに導入した。

Umera Ali

その一方、通信・情報技術省関係者によると、2030年までにAI市場の大きさは350億ドルを超えることになりそうだ。益々高度化、グローバル化するこの市場で競争力を維持し、技術分野で勝者となるために、サウジアラビアは新たなインフラストラクチャーとテクノロジーに非常大きく長期的な投資をする必要があるだろう。

ここ数年、サウジは必要なインフラを構築することで、デジタル化のため国家的計画を首尾よく実行している。この結果達成したことはいろいろあるが、特にワイヤレスインターネットのスピードは世界平均よりもはるかに速くなり、農村地域でのインターネットアクセスが可能になり、100万世帯以上への光ファイバーネットワークアクセスに追加予算が充てられた。

「ビジョン2030」の結果はまだ明らかではない。設定された目標の達成は、規制策定や現場人材の育成、投資の促進、ライセンスや許可などの手続きの簡素化を含むビジネス環境を強化するために、サウジ政府が民間部門と緊密に協力する能力に大きく依存している。

上記の技術的変革を導入するためのタイムラインについて尋ねると、技術・産業・デジタル能力副大臣であるAhmed Al-Theneyan博士は、事態は予想よりも早く起きていると語った。「以前なら何年もかかったことが、今は何日かで済んでしまいます。人々は『ビジョン2030』に非常に沸き立っており、計画はすでに具体的な結果を出し始めています」と博士は述べた。その点について、拡大する投資、民営化機会の可能性、技術的ソリューションへの政府の支援強化、そしてより広範囲なテクノロジーの採用を通して、かつてない程のスピードで、すべてのサウジ市民にとって変化がはっきり認識できる現実になりつつあることに疑問を投げかける人はいない。

疑いなく、サウジをかつてない転換の旅へと連れ出す歴史に残る成功を、我々は目の当たりにしている。サウジ政府に推進されるデジタル構想の急速な採用が、サウジの将来の経済モデルのための基礎を設定するだろう。その経済モデルはほとんどが、革新的で台頭しつつあるテクノロジーに牽引されるだろうと、我々は予測している。

• Umera AliはDWF Middle Eastの銀行・金融パートナーとして、従来型およびイスラム金融の両方の問題について助言し、また同社のイスラム金融業務を指揮している。

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