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AIによってスマートシティの夢を実現する方法

計画されたサウジアラビアのNEOM都市では、実質的に都市環境のあらゆる側面にテクノロジーを組み込むことを約束している(ファイル/AFP通信)。
計画されたサウジアラビアのNEOM都市では、実質的に都市環境のあらゆる側面にテクノロジーを組み込むことを約束している(ファイル/AFP通信)。
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14 Sep 2023 12:09:31 GMT9
14 Sep 2023 12:09:31 GMT9

2008年の金融危機以降、都市主義とサービス提供に対する新しいアプローチが世界中で定着し始めた。テクノロジーの進歩に伴い、都市計画者は都市住民のニーズをモニタリングし、テクノロジーを利用してサービスを提供する新しい方法を考案した。無数の都市管理業務にInternet of Things(IoT)を導入することで「スマートシティ」が誕生した。10年以上が経ち、スマートシティ革命は世界の主要都市で一般的なものとなった。しかし、このコンセプトは、都市主義における全面的な革命というよりは、ブランディングの大手柄であったようだ。

都市生活を楽にするためのテクノロジーの利用は、新しいことではない。6000年以上前に最初の都市が誕生して以来、人類は日常生活で日々行う単調な作業をテクノロジーによって改善する方法を探し続けてきた。スマートフォンの登場により、都市計画者は膨大なデータを収集し、住民が何を必要としているかをより理解できるようになった。監視技術としてスマートフォンは個人に関する膨大な量の情報を収集するという点で、人類史上、他の追随を許さない。このようなデータによって、都市計画者は、都市環境をどのように利用し、どこに資源を配分すべきかについて、根本的に新しい洞察を得ることができる。

しかし、スマートシティのブランディングでは、データのモニタリングではなく、個人の楽さに焦点が当てられる傾向がある。ドバイやシンガポールのような都市では、役所が公的な手続きに紙を使わないようになったため、住民がスマートフォンのアプリを使って都市のサービスを利用している。住民はスマートフォンのアプリを使って、サービスの停止を報告したり、罰金を支払ったりすることなどが可能である。スマートシティのマーケティング担当者は、住民が所用のため都市の物理的な役所を訪れる必要がなく、需要に基づいて資源が自動的に割り当てられる未来を思い描いている。

過去10年間、世界中の多くの都市が、程度の差こそあれ、スマートシティというアプローチを採用してきた。ケープタウンのような都市でさえ、住民はスマートフォンやオンラインで多くの問題に対処できる。真に革新的なスマートシティのモデルは変わりつつある。紅海沿岸に計画されているサウジアラビアのNEOM都市では、実質的に都市環境のあらゆる側面にテクノロジーを組み込むことを約束している。

スマートシティの核心は都市環境に組み込まれたモニタリング・アーキテクチャ

ジョセフ・ダナ

地球の裏側では、カリフォルニア州の有数のテクノロジー投資家グループが、彼らの都市をゼロから建設し、都市問題を解決するためのスマートシティのコンセプトを試験的に実施しようとしている。California Foreverは、シリコンバレーの億万長者リード・ホフマン氏、ローレン・パウエル・ジョブズ氏、マーク・アンドリーセン氏が支援するプロジェクトで、北カリフォルニアに「夢の都市」を建設する計画である。このプロジェクトにより、既に広大な土地が取得され、最新の太陽光発電を備えたセキュリティと生活の質を実現する未来のスマートシティの建設が約束されている。

こうした投資家は、カリフォルニアの都市の深刻な衰退に対処している。サンフランシスコからサンディエゴまで、カリフォルニアの都市は犯罪やホームレスの増加に歯止めがかからない。California Foreverの技術支援者は、最新の監視技術により整備され、管理された環境であるスマートシティのコンセプトに賭け、カリフォルニアのますます危険な都市部の代わりを提供しようとしている。

これは理にかなっている。スマートシティの核心は、都市環境に組み込まれたモニタリングのアーキテクチャにある。しかし、世間で語られるのは、常にもっと緩やかなものだ。この二律背反を十分に理解するには、過去20年間に新興市場がどのように変貌してきたかを考える必要がある。2000年代半ば、投資家たちはリターンの大きい新しい市場を探し始めた。グローバリゼーション、低金利による安価な資金、若年人口の増加により、主にグローバルサウスの新興市場諸国は投資家のホットスポットとなった。新たな投資家心理を正当化し加速させる新たなストーリーが生まれた。すなわち、テクノロジーと若年人口の増加が、世界経済の歴史的な転換を指し示していたのである。未来は新興市場にあったのだ。

スマートシティのビジョンが約束するシームレスな体験はAIでより簡単に実現可能

ジョセフ・ダナ

技術的には間違いではかった。テクノロジーによって、世界中の知識労働者による市場へのアクセスが拡大した。新興国の多くの都市では、若者の人口が増加しており、彼らの親よりも多くの機会を享受している。ドバイのような都市は、イノベーションの新たな結節点となり、多様な人々が集まっている。近年、高金利によってこのような高揚感を煽っていた安価な資金が枯渇したため、ストーリーが崩れた。しかし、一部の新興市場諸国では真価を発揮している。

スマートシティというストーリーは、引き続き、新興市場には欠かせないストーリーである。駐車券の支払いにスマートフォンを使うことは、生活を楽にするテクノロジーのデモンストレーションとして、多くの市職員によってブランド化された。スマートシティは、新興市場国の一部で植民地支配の遺産としばしば関連付けられる官僚主義というハードルを取り除いてくれる。

このような開発が世界的に一般的になった今、ストーリーの転換が必要である。都市に関する考え方を変える分野の一つが人工知能の台頭である。過去10年間に都市が収集した大量のデータのおかげで、AIシステムを導入して資源配分の予測と実施が可能である。スマートシティのビジョンが約束するシームレスな体験は、AIでより簡単に実現可能である。

真のスマートシティの夢は終わっていない。人間が都市に住む限り、都市環境を改善しようとする動きは続くだろう。新興市場の成長に関連したスマートシティのブランディングは、恐らく最盛期を迎えており、新しいテクノロジーにより計画者にさらなる選択肢が与えられるにつれて変化していくだろう。このように、都市主義の歴史における重要な一章が幕を閉じ、新たな一章が始まろうとしている。

  • ジョセフ・ダナ氏は南アフリカと中東を拠点とするライター。エルサレム、ラマッラー、カイロ、イスタンブール、アブダビから報道している。アブダビを拠点に新興市場における変化を探るメディアプロジェクト「emerge85」の元編集長。ツイッター@ibnezra
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