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船舶の保護へ向けた米軍のプレゼンス

サウジ北部のキング・ハリド軍事都市で共同訓練に取り組むサウジアラビア陸軍と米軍部隊(SPA)
サウジ北部のキング・ハリド軍事都市で共同訓練に取り組むサウジアラビア陸軍と米軍部隊(SPA)
20 Jul 2019 10:07:40 GMT9

サルマン国王がサウジアラビアに米軍部隊を駐留させる許可を下したが、これはある重要な兆候を示している。どの国であれ、自国内で外国軍隊の活動を許可するかの判断は、慎重に扱うべき問題である。したがって、同国の最高権威者である国王が、取り決めに自ら署名をしたことは、地域の安全保障と安定性を強化する取り組みに、お墨付きを与えたことに他ならない。

米国防総省の発言によると、部隊とリソースをサウジアラビアに展開することで、「差し迫った明確な脅威」に対して「抑止力を一層強化する」とのことだ。当然ながら、「砂漠の嵐作戦」当時の規模の展開を期待している者はいない。わずか500〜1000人規模の部隊だと報じられている。

いずれにせよ、例え米軍のプレゼンスが象徴的なものであったとしても、オバマ政権が全く見当違いの方向へと舵を切った外交政策が、大きなシフトを迎えていることが、改めて浮き彫りとなった形だ。アラビア湾で緊張が高まる中、この動きはサウジアラビアやアラブ諸国によって、トランプ政権が同盟国を差し置くことなく、国益に適う選択をするようになった、もう一つの兆候として解釈されるだろう。

我々は、つまり米国とその同盟諸国、そして米国民は、いわゆる「オバマドクトリン」の代償を負わされ続けている。イランの猛獣をなだめようと試みたのは、オバマ政権の危険な賭けであった。核合意という「飴」を使えば、ならず者のイランが文明国に返り咲き、テロのネットワークを築くのをやめ、経済成長に専念するであろうと期待を抱いたのは軽率であった。

イランは予想通り、棚ぼた式に手に入れた資金を使って、地域の不安定化にかける予算を増額した。これを受け、イランが支援するフーシ派民兵は2016年末、米海軍に対して3度にわたる攻撃を行い、米政権は現実と向き合うことを強いられたのだ。

今回の駐留問題についても、この出来事を踏まえて考えなければならない。なぜならトランプ政権の決定が、米リベラルメディア(「アメリカに死を」を標榜するイデオロギーに傾倒した武装民兵組織、フーシ派のスポークスマンに発言の機会を与えたメディアである)の批判の矢面に立たされることは必至だからだ。

イエメンについても同様に、国連が承認した政府による要求を受け、サウジ主導の多国籍軍が駐留しているということを忘れてはならない。意図的に、しかも悪びれることなく民間空港や人口密集地を標的とするフーシ派とは違い、多国籍軍は何か過失があれば、報告して謝罪を行っている。それに加え、サウジアラビア政府が外交的な解決の糸口を探るため、あらゆる国際的な取り組みを支援してきた一方で、フーシ派は停戦破りを繰り返している。

先月、イランが協議の席に戻ることを期待して限定攻撃を取り止めたトランプだが、流石にその決定を今では後悔しているのではないだろうか。イランの指導者は、経済が崩壊して国民が苦しもうが構わない。彼らの目的はイデオロギーであり、合理的とは限らないのだ。

この危機が始まって間もない頃の、アラブニュース編集委員会の論調は、誰も戦争を望んでいないし、そこから利益を得ることはないが、イランを抑止するには、限定的なサージカルストライク(一般人を傷付けない精密攻撃)が必要だという内容であった。イランにとっては残念なことに、その船は既に出港してしまった。イランがアラビア湾で違法に拿捕した石油タンカーとは異なり、その船は罰金など支払うはずもない。

それでは今後の動きはどうなのだろうか。意思決定者には3つの選択肢があると私は見ている。今すぐ海で大規模戦争を始める。あるいは、石油タンカーを守るため、ロシアか中国の旗を掲げさせる。または、多国籍軍が組織されるまでの間、時間稼ぎをする。これらのいずれかだ。

3つ目の選択肢が、最もあり得そうだ。

  • ファイサル・J・アッバースはアラブニュースの編集長です。Twitter:@FaisalJAbbas
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