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サウジアラビアがコロナをいかに抑え込んだか

サウジアラビアは2ヶ月間の間、コロナを国内に持ち込ませないことに成功した。これによりコロナに対する国の防衛を強化する貴重な時間を稼ぐことができた。 (AFP通信)
サウジアラビアは2ヶ月間の間、コロナを国内に持ち込ませないことに成功した。これによりコロナに対する国の防衛を強化する貴重な時間を稼ぐことができた。 (AFP通信)
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23 Sep 2020 10:09:41 GMT9
23 Sep 2020 10:09:41 GMT9
  • 6月の感染者数のピーク時から、サウジアラビアの1日あたりの新規感染者数は500人を割り込んでいる。

ジョナサン・ゴナール

ロンドン:コロナ禍がピークを迎える時期において、6月17日はサウジアラビアがこれまでに経験したことのない最悪の公衆衛生危機との戦いにおける他の日と変わらず、何事もなく過ぎていった。

しかし将来、国内の新型コロナウイルス新規感染者数が過去最多を記録した6月17日は、サウジアラビアの人々にとって世界を屈服させたミクロの敵との壮絶な戦いを思い出すのにふさわしい日となるかもしれない。

6月17日の4,919人という新規感染者数は、その時は非常に大変な数字に思えたが、実際、コロナウイルスとの戦いの流れはサウジアアラビアのほうに有利に転じていた。その後、徐々にだけれども着実に、国内の1日あたりの新規感染者数は減少し始めた。3月2日に最初の新規感染者が確認されてから、サウジアラビアはわずか107日でコロナ禍最大の山を越えたのだ。

新型コロナウイルスは今年1月初旬に中国で最初に確認され、その後急速に世界中に広がった。しかしサウジアラビアは2ヶ月の間、コロナを国内に持ち込ませないことに成功した。これによりコロナに対する国の防衛を強化する貴重な時間を稼ぐことができた。

「我々は、他の多くの国々よりも幸運だった。なぜならサウジアラビアの最初の感染確認は他国より少し遅れて始まったからである」と公衆衛生担当副大臣のハニ・ジョクダール博士は、8月にリヤドで開催された『グローバル・デジタル・ヘルス・サミット』で講演した際に語った。「(サウジアラビアでの感染拡大が他国より遅く始まったため)世界の他の地域で何が起こっているのか観察し、国内での感染対策を構築する小さなチャンスを得た。」

サウジアラビアは、世界でもいち早くコロナウイルス検査を行う検査機関を設置し、3月5日以降症状のある人であれば誰でも検査を受けることができるようになった。過去5ヶ月間で500万人以上が検査を受けた。

「我々は今日、取り組みの成果を目の当たりにする」

サウジアラビア保健省の広報官を務めるモハメド・アル・アブド・アル・アリー博士は述べた。

今年2月には、感染が確認された国々とサウジアラビアとの間の渡航が早急に制限され、3月15日までにすべての国際線が禁止され、その後すぐに国内線による渡航も制限された。

そして2月27日、サウジアラビアは外国人巡礼者のウムラやメディナの預言者モスク訪問目的での入国を一時的に停止するという、前代未聞だが必要な措置を取った。また、サウジアラビアは率先してモスクを閉鎖した。

しかし3月2日、サウジアラビアのコロナ防衛は、新型コロナウイルスに感染してバーレーンからサウジアラビアへと帰国した2名によりついに破られた。彼らは既にコロナの感染拡大が始まっていたイランから旅行を始めたという報告を怠ったのだ。

主要な日付

  • 1

    サウジアラビアは1月28日に公共情報キャンペーンを開始し、2月1日にCOVID-19フォローアップ委員会の初会合を開催、および2月6日には中国への渡航を禁止。

    Timeline Image 1月28日~2月6日
  • 2

    サウジアラビアは最初の新型コロナウィルス感染例を報告。キング・ファハド・コーズウェイを渡ってバーレーン経由でイランから旅行に来た男性だった。男性はすぐに隔離され、男性との接触者が検査を受けた。

    Timeline Image 3月2日
  • 3

    サウジアラビアが2例目のCOVID-19感染を確認したため、王国は全てのウムラ巡礼(メッカ小巡礼)を一時停止。2月27日に発表した海外からの巡礼者に対する禁止措置を拡大し、サウジ居住者も対象に含める。

    Timeline Image 3月4日
  • 4

    サウジアラビアは全ての学校と大学を閉校とし、教育省が用意したバーチャル学校プラットフォームを通して教育を継続する。それまでの王国内の感染例11件全てが発生したカティーフ行政区域が封鎖される。

    Timeline Image 3月8日
  • 5

    世界保健機関によるCOVID-19の世界的パンデミック宣言から4日後、サウジアラビアは国際航空便を飛行禁止とし、ショッピングモール、レストラン、および公共公園の閉鎖を命じる。

    Timeline Image 3月15日
  • 6

    サウジアラビアが王国の経済に対するCOVID-19の影響を軽減するため、1,200億サウジリヤル(320億ドル)の総合支援策を発表。

  • 7

    サルマーン国王が午後7時から午前6時までの外出を禁ずる21日間の外出禁止令を発令。医療従事者、公共事業労働者、食品配達、およびメディアは適用除外となる。

    Timeline Image 3月23日
  • 8

    サウジアラビアがG20の指導者たちによる臨時のバーチャルサミットを企画。リヤドのサルマーン国王が主催者となり、パンデミックに対する世界的な対応を話し合う。

    Timeline Image 3月26日
  • 9

    24時間の外出禁止令がメッカ、メディナ、およびジッダの一部から、リヤド、タブーク、ダンマーム、ザフラーン、フフーフ、タイフ、カティーフ、およびアルコバールへと拡大される。必要不可欠な用事がある場合のみ、午前6時から午後3時までの外出が許可される。

    Timeline Image 4月6日
  • 10

    4月26日にいくつかの区域で日中の外出規制が緩和された24時間外出禁止令が、イド・アル=フィトルの祝日のため再び課される。

    Timeline Image 5月13日
  • 11

    日々の新規感染者数が24時間の数字としては最高の4,919人に達する。7月5日には一日の死者数が最多の58人を記録。

    Timeline Image 6月17日
  • 12

    サウジアラビアが1,000人の巡礼者に対し、厳しい衛生対策の下でハッジ巡礼を実施。巡礼者は全員検査を受け、検査結果が出るまで隔離された。巡礼者の中にCOVID-19感染者は確認されなかった。

    Timeline Image 7月29~31日
  • 13

    サウジ保健省が、中国企業カンシノ・バイオロジクスが王国でCOVID-19ワクチンの第3相治験を開始すると発表。

    Timeline Image 8月9日

とはいえ、湾岸協力理事会の6カ国の加盟国の中で最後にコロナウイルスに襲われたサウジアラビアは、多くの国々に比べコロナに襲われることへの準備ができていた。一部は既に利用され、一部はコロナに直面したため急速に開発された数多くのアプリにより、市民らが症状を報告し、オンラインでの診察を予約したり、検査へアクセスすることが可能となった。

このような技術は、大巡礼(ハッジ)の管理運営においても重要な役割を果たすことになるだろう。イスラム教の最も神聖な聖地の管理者として、サウジアラビアは当初から効果的な巡礼の管理に失敗した場合、自国や周辺地域、そして世界全体に対しどのような結果をもたらすことになるか強く意識していた。

今年は、すでにサウジアラビア国内にいる国民と外国人の中から選ばれた象徴的な1000人に限定することが決定した。慎重な検査、監視、綿密な管理により、この異例の年に1件の感染者も確認されることなく大巡礼は無事に終了した。

常に国のトップが、サウジアラビア国内の新型コロナウイルス対策を至るところで主導してきた。3月19日、サルマン国王はテレビで国民に向けて演説した。

サルマン国王は、サウジアラビアは「コロナ禍と対峙するため、影響を制限するためにすべての予防措置を取り続ける。全能の神の援助に頼り、我々の持つ全ての能力の投入し、不動の姿勢で逆境に立ち向かう信者の皆さんの強い決意に、我々は依拠している。」と述べた。

サウジアラビアもそして世界も、まだこの困難を乗り越えてはいない。世界全体での1日あたりの感染者数は増加を続けており、9月11日には過去最多となる31万6千人を超え、合計で3千120万人の感染者数と96万5,372人の死亡者数を記録した。サウジアラビアでは、規制が緩和され、国内の生活が正常に戻り始めているが、国内の1日あたりの感染者数は減少し続けている。

日曜日には、1日の新規感染者数が5ヶ月ぶりに500人を下回った。保健省の広報官を務めるモハメド・アル・アブド・アル・アリー博士は「我々は今日、取り組みの成果を目の当たりにした」と語り、この「大きな改善」は 「全国民の努力のおかげだ」と加えた。

日曜までにサウジアラビアでは、合計で32万9271人の感染者と、4458人の死者を記録しており、2020年という年にサウジアラビアが苦しめられていることは間違いないだろう。

しかし、世界で最も強力で先進的な国を含む他の多くの国々が、どれほどひどい状態に陥ったかを見れば、コロナに対する準備と時宜を得た断固とした行動がなければ、この年はサウジアラビアにとってどれほどひどい年になっていたかが分かるだろう。

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