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サウジアラビアがクリーン水素にグリーンライト(青信号)を灯す

アブドラ国王石油調査研究センター(KAPSARC)はアブドラ王立科学技術大学と協力して、クリーン水素開発の分野でのサウジアラビアにとっての機会を探っている。(SPA/ロイター)
アブドラ国王石油調査研究センター(KAPSARC)はアブドラ王立科学技術大学と協力して、クリーン水素開発の分野でのサウジアラビアにとっての機会を探っている。(SPA/ロイター)
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17 Aug 2021 06:08:33 GMT9
17 Aug 2021 06:08:33 GMT9
  • サウジアラビアは将来の低炭素に重要な役割を果たすとエネルギー研究が予想

ヘブシ・アル・シャマリ

リヤド:水素はニッチな電力源からグリーンエネルギー革命のフロントランナーになる可能性を秘めた存在へと変貌を遂げつつある。サウジアラビアは世界最大級のガス供給国になりえるという研究予想が発表された。

2050年までにカーボンニュートラル経済を実現し、地球温暖化に取り組む上で、再生可能エネルギーをもとに生産される低炭素で無害なガスである「グリーン」水素が重要な役割を果たせることに、多くの専門家が同意を示している。

アブドラ国王石油調査研究センター(KAPSARC)が発表した新たな研究成果によると、サウジアラビアには出現しつつある「クリーン水素」市場のリーダーになるための資源が存在している。

国際再生可能エネルギー機関によると、現在、1キログラムのガスの生産コストは5ドル弱だ。ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)によると、太陽光に恵まれるサウジアラビア王国には、今後30年間で11兆ドルに達すると予想される世界のクリーン水素商品市場における競争的優位が備わっている。

サウジアラビアにはブルー水素やグリーン水素の大規模生産に必要な技術、インフラ、資源が備わっている。

KAPSARC研究者、フレデリク・ブラウン

KAPSARCはアブドラ王立科学技術大学(KAUST)と協力して、クリーン水素開発の分野でのサウジアラビアにとっての機会を探っている。大規模な技術展開、市場の需要、インフラ利用、資源要件などの分野の研究に取り組んでいる。



KAPSARC研究者、フレデリク・ブラウン

同センターでは、将来の世界の水素市場における、サウジアラビアにとっての機会と課題に関する研究プロジェクトに取り組んでいる。その一環として、気候環境プログラムの研究者であるヤン・フレデリク・ブラウン博士と、市場産業開発プログラムの上級研究員ラミ・シャバネ氏は最近、サウジアラビア王国内外でのクリーン水素の未来を探究する解説書を出版した。

ブラウン博士は、水素は工業プロセス加熱、大型長距離陸路輸送、航空、海運など、エネルギーバリューチェーンの各セグメントの「脱炭素化」に役立つ可能性がある、とアラブニュースに語った。

「運輸はサウジアラビア王国の二酸化炭素排出セクターとして第3の規模だ。再生可能エネルギーによる電気や天然ガスから生産される水素は、運輸部門の一部を脱炭素化する上で非常に適している。そのセクターでは、例えば短時間充電要件などに関して、燃料電池自動車の方が通常の電気自動車より優れていることになるためだ。トラックやバスなどの大型長距離輸送車両がそうだが、タクシーなど稼働率の高い小型車両も該当する」。

「これに関して、最近NEOMがハイゾン・モーターズ、モダン・グループとの合弁事業計画を発表した。無公害車の商用トラック1万台と現地生産して、サウジアラビアが圧倒的に大きな部分を占める、湾岸協力理事会(GCC)諸国の市場に供給するというものだ」

シャバネ氏によると、将来に水素が果たす役割についての推定は、脱炭素化政策次第だという。

BNEFは、世界の温暖化を産業革命前の水準から摂氏1.5度上昇に制限する場合、水素は総エネルギー需要の最大24パーセントを占める可能性がある、と推定している。対して、水素協議会は、世界の温暖化が2050年までに摂氏2度上昇する場合、水素ガスはエネルギー需要の18パーセントを占める、と推定している。一方、BPは、最終エネルギー総消費量に占める水素の比率は、急速ゼロシナリオと正味ゼロシナリオでそれぞれ7パーセントと16パーセントになる、と推定している。

シャバネ氏は、「水素が燃料として重要な役割を果たすためには、総合的な脱炭素化策、生産コストの低減、インフラの規模拡大、需要拡大が必要になるだろう」と付け加えた。

サウジアラビアのような国がどのようにしてクリーン水素の生産を増やし、運輸など二酸化炭素集約型セクターの比較的「低コスト、低リスク」の市場を創出できるかを探る研究へと、研究の段階が上がろうとしている。

KAPSARCとKAUSTは世界の一流研究者と協力して、サウジアラビア王国の外に目を向けて、日本やEUなど潜在的な輸入国・地域が水素計画をどのように実現しようとしており、サウジアラビアにはどのような機会があるかについての分析を目指している。

ブラウン博士は、ドイツなど重要な輸入国との間で、クリーン水素の生産、加工、応用、輸送の分野での戦略的パートナシップを結ぶことの重要性を強調した。これにはNEOMなどの巨大プロジェクトの実施も含まれる。

サウジアラビアは、水素開発技術を推進して商業利用の準備を整えるための政策を策定して、規制手段を定めようとしている。

ブラウン博士は、「サウジアラビア王国の水素計画は、GCC諸国各地のクリーン水素「ハブ」を通じた生産、協力、需要、インフラの規模拡大により、莫大な恩恵を被る可能性がある。サウジアラビアにはブルー水素やグリーン水素の大規模生産に必要な技術、インフラ、資源が備わっている」と述べた。

「水素は脱炭素化のための多くの解決策のうちの一つであって、唯一の解決策ではない。国内使用と輸出の規模は、中東以外の地域、特に欧州、北米、アジア地域の経済や、当該地域での水素経済の進展ペースに依存する」

「このようなやり方を通じて、サウジアラビアや他の湾岸諸国は規模の経済を構築し、人的資源、資本、技術リソースを費用対効果の高い方法で蓄積できる」

 

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