• フィリップ・ラザリーニ事務局長は、UNRWAの財政危機は「限界」に近づいていると警告した
• ヨルダン副首相は、同国は「大きな課題」に直面していると述べた

キャスパー・ウェッブ

ニューヨーク：ヨルダンなどの国々が受け入れているパレスチナ難民を支援するための資金の危機は「全く持ちこたえられない」状況を作りだしており、まもなく限界に達する恐れがあると、UNRWAの事務局長が警告した。

国連近東パレスチナ難民救済事業機関（UNRWA）は中東各地に500万人以上いるパレスチナ難民を支援しているが、寄付提供国が拠出資金を削減する中で一連の財政危機に見舞われている。

UNRWAは来年に設立75周年を迎えるが、フィリップ・ラザリーニ事務局長は、数百万人のパレスチナ難民を守るためには直ちに資金を調達することが必要だと警告している。

同事務局長は21日、国連総会に合わせて行われた記者会見に、ヨルダンのアイマン・サファディ副首相兼外務・移民相と共に登壇した。

両者は、UNRWAへの拠出増額を促すためにヨルダンとスウェーデンが主催したハイレベル会合に出席したところだった。

ラザリーニ事務局長は、UNRWAがヨルダン、レバノン、ガザ地区などでの活動を年末まで継続するためには1億7000万～1億9000万ドルが必要だと述べた。

さらに次のように続けた。「我々は今日、いくつかの確約を得ることができた。これらの資金が当面の間の広報や活動の助けになることは間違いない。しかし、まだ目標額には達していない」

ヨルダンのサファディ外相は、UNRWAの資金危機のさなかで多数のパレスチナ難民を受け入れている同国が抱える問題について詳しく話したうえで、UNRWAは「困窮に満ちた非常に暗い状況の中で唯一の希望の光」だと述べた。

さらに次のように続けた。「課題は非常に大きい。UNRWAが直面する困難は複雑なうえ拡大している。だから我々は国際社会に対し、UNRWAが必要とする支援を提供するために行動するよう求める」

「まだパレスチナ難民のために正義を実現することができないのであれば、少なくとも彼らにまともに生活する機会を与えようではないか」

21日の会合では国連加盟国数ヶ国がUNRWAへの拠出金の増額を約束したものの、UNRWAは10月までサービスを提供する手段を手にしたに過ぎない。

ラザリーニ事務局長はメディアに対し次のように語った。「私は加盟国の代表らにこう言った。『本機関の財政危機について話す我々が壊れたレコードみたいに聞こえることは分かっている』。ただ、こうも言った。『我々がこの危機の中で何とかやっていけていることを当たり前のことと思わないでほしい』」

 「限界に達する時が来るだろう。パレスチナ難民からのニーズや期待が高まっている状況への対処が全く持ちこたえられなくなっている」

「このような緊張状態のまま続けることはできない。極めて不安定だ。地域社会にとっても（…）受け入れ国にとって不安定なのだ」

「また、この状況は地域内で、国際社会から見捨てられたという思いを掻き立てている」

ラザリーニ事務局長は、UNRWAの資金危機から最も大きな打撃を受けるのは子供たちだと警告した。同事務局長は最近、パレスチナ難民の子供たちための学校の開校に立ち会ったが、この学校が年末まで存在しているか分からないという。

また、新型コロナパンデミックと緊縮財政も難民の子供たちの苦境に拍車をかけたと指摘した。

「今日の会合で私が加盟国に示した1つの指標によると、（パレスチナ難民の）生徒のうちアラビア語と数学の成績で平均水準に達しているのは僅か20%だという。2015年には60%だった」

「これは極めて重大だ。質の高い教育を取り戻す方法を皆で考えなければならない」

サファディ外相は、エジプト、サウジアラビア、イスラエル、EU、米国の間でパレスチナ問題をめぐる取り組みが行われる可能性、そしてパレスチナ難民の苦境が解決される可能性について質問を受けた。

サウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子は最近、同国はイスラエルとの政治的合意に向けて事を進めていると述べた。

サファディ外相は次のように答えた。「サウジアラビアとイスラエルの間の政治的合意に向けた努力に関してサウジ皇太子が言ったことについてはコメントしないが、我々はサウジアラビアの兄弟たちの立場を信頼している」

「パレスチナ問題やパレスチナ人の権利に関する支援を行い、地域の平和と安定を実現する唯一の道としての二国家解決を支持するという点で、彼らの立場は非常に確固たるものだ」

サファディ外相はヨルダンの立場を改めて表明した。「我々は二国家解決に関してこう主張している。もしそれが損なわれ、そのような形の解決に至る希望が完全に失われてしまった場合、一国家解決が行われることになるが、それは解決ではない」

「人種差別が行われる酷い状況になり、さらなる紛争、さらなる状況悪化につながるだろう」

ラザリーニ事務局長は、今回の国連総会においては主に、パレスチナ難民問題を「再び政治的アジェンダに」載せることに力を入れていると述べた。

さらに次のように続けた。「私が主に求めているのは、パレスチナ難民の権利の保護という問題がアジェンダに載せられること、そして、そのような議論に続いてUNRWAのような機関の持続可能性についても話し合われることだ」

ラザリーニ事務局長は、レバノンのアイン・エル・ヒルウェ難民キャンプで最近発生した暴力事件にも言及し、「非常に憂慮すべき」事態だと述べた。

さらに次のように続けた。「周知の通り、この事件のせいで子供たちは学校に戻ることができずにいる。学校が過激派によって使用されているからだ。我々は過激派に対し、学校を明け渡すよう何度も要求してきた」

「子供たちは守られなければならない。尊重されなければならない。しかし、悲しいことにそうなっていない」 

「アイン・エル・ヒルウェで今起こっている戦闘は、既にこのキャンプに蔓延していた異常な悲惨さに拍車をかけていると思う」

サファディ外相は、政治プロセスへのヨルダンの関与について語り、同国は解決策を見出すために「全員と話をしている」と述べた。

さらに次のように続けた。「我々はイスラエルを含む全当事者とやり取りしている。全員と話をしている」

「米国やEUとも協力している。パレスチナ、他のアラブ諸国、エジプトなどとも全面的に連携して、政治的地平を見出そうと努めている」