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レバノンの医療危機は「壊滅的」:議院委員会委員長

レバノン議会保健委員会のビラル・アブドゥラー委員長は5日、「がんや(その他の)慢性疾患、腎臓透析などに必要な医薬品の購入のために割り当てられた資金がほぼ枯渇している」と述べた。(AFP)
レバノン議会保健委員会のビラル・アブドゥラー委員長は5日、「がんや(その他の)慢性疾患、腎臓透析などに必要な医薬品の購入のために割り当てられた資金がほぼ枯渇している」と述べた。(AFP)
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06 Oct 2023 08:10:46 GMT9
06 Oct 2023 08:10:46 GMT9
  • ビラル・アブドゥラー委員長は、がんなどの慢性疾患の患者に必要な医薬品のための資金が底を突きつつあると警告した
  • 一方、国からの補助金は削減されており、政府は使途を明らかにすることなく数百万ドルを支出したと非難されている

ナジャ・フーサリ

ベイルート:レバノン議会保健委員会のビラル・アブドゥラー委員長は5日、「がんや(その他の)慢性疾患、腎臓透析などに必要な医薬品の購入のために割り当てられた資金がほぼ枯渇している」としたうえで、同国の医療状況は「壊滅的だ」と警告した。

同委員長の発言は、長引く経済危機と政治麻痺に見舞われているレバノンにおいて、非伝染性慢性疾患の罹患率に対する懸念が高まる中でなされたものだ。

がんや心臓血管疾患はレバノンにおける上位の死因である。フィラス・アビアド暫定保健相は、それらの疾患に対し早期治療を提供できなければ最終的には医療費の上昇を引き起こし、ひいては治療を受ける金銭的余裕のない人々の死亡率を高めることになると指摘した。

アブドゥラー委員長は、現在のレバノンで政府によって下されている決定は全て、「政治的状況が解決され経済が回復するまでは一時的な解決策の範疇に入る」と注意を促した。

2019年に始まりレバノンの通貨価値の90%以上の喪失につながった経済危機の結果、多くの人が貧困に追い込まれ、家族を養うのに苦労している。日用品やサービスを対象とした国費による補助金の多くが既に廃止されているが、経済専門家のルイス・ホベイカ氏がアラブニュースに語ったところによると、レバノン当局は経費削減のための新たな試みとしてパンに対する補助金を2~3ヶ月以内に廃止することを予定している。

レバノンは世界銀行から、小麦に対する補助金のための1億5000万ドルの融資を受けているが、この支援は来年2月に終了する。ホベイカ氏によると、現行のパンに対する国からの補助金の費用は毎月1500万~2000万ドルだという。多くの必需品やサービスに対する補助金が月を追うごとに削減されている。

一方、政治家たちが新大統領の指名に関して合意に達することができずにいる状態が1年近く続いており、ミシェル・アウン前大統領の任期が終了した2022年10月31日以降、大統領が空位になっているが、近いうちに状況が解決される兆しはほとんどない。

財政危機と経済崩壊の解決につながるかもしれない改革の導入計画に関して政治派閥間の合意が不在なまま、ナジーブ・ミカティ首相率いるレバノン暫定政府は予算編成や支出に関して行き当たりばったりに思える政策を続けている。

政府はその過程で、底を突きつつある国の財政準備金(特に中央銀行に保管されている預金者の資金)や、政府が獲得できたあらゆる融資からの資金を使ってきた。

改革派のマーク・ダウ議員は、ミカティ政権は財政透明性の原則に反して、資金の使途を明らかにすることなく数百万ドルを支出したと指摘する。

政府は2020年、医療制度向上のための国際復興開発銀行との1億2000万ドルの融資契約の修正を承認した。

レバノン財務省は2021年、国際通貨基金(IMF)から11億3500万ドルの特別引出権(SDR)を受け取った。IMFが提供するSDRは事実上、IMF加盟国が現金化できる信用枠を提供するもので、各国の現金準備高を増強し世界経済を強化することを目的としている。

ホベイカ氏は、国会議員らは2021年から支出プロセスを積極的に監視すべきだったのであり、その2年後に考え始めるのでは遅いと指摘する。

「監視責任が欠如している」と同氏は言う。「議員らは支出が違法だと言う前に、資金の使われ方を監視すべきだった」

「国会による監視があったならば、支出プロセスは遅くなり、その資金がレバノンをあと2年支えることができただろう」

同氏は、残った資金もまもなく底をつくかもしれないとしたうえで、過去2年間はレバノンの国庫への追加収入がなかったと指摘する。

一方、ホベイカ氏によると、補助金が廃止された電気料金は大幅に上がっており、水道局は年間料金を2倍に引き上げた。それにもかかわらず、電気も水道も不足しているという。料金や税金の引き上げは、国民の不満や怒りを煽るかもしれないと同氏は言う。国民は経済危機の中、電気や水の供給を制限している企業に対し、なけなしの金から以前より多くを支払っているからだ。

政府の支出に関する透明性が欠如しているとの批判に対し、ある財務省関係者は次のように語った。「SDRの資金は緊急の問題、特にがんや(他の)慢性疾患および腎臓透析のための医薬品の支援、小麦の購入、電力支援、国家債務の返済などに使われた」

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