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イスラエル経済は、今回の戦争はより長期化しより大きな打撃を受ける可能性

イスラエルとパレスチナ組織ハマスとの戦闘が続く中、イスラエルによるガザ地区北部に対する空爆で立ち上る煙。2023年10月30日、イスラエルとガザ地区の境界のイスラエル側から撮影された写真。(AFP)
イスラエルとパレスチナ組織ハマスとの戦闘が続く中、イスラエルによるガザ地区北部に対する空爆で立ち上る煙。2023年10月30日、イスラエルとガザ地区の境界のイスラエル側から撮影された写真。(AFP)
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31 Oct 2023 10:10:11 GMT9
31 Oct 2023 10:10:11 GMT9
  • ハマスと同盟関係にあるレバノンの民兵組織ヒズボラが全面的に参戦すれば、イスラエル最大のものを含む他の2つのガス田での生産に影響が出る可能性があるとモル氏は指摘する

エルサレム:イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が、イスラエルが中東の中でますます受け入れられつつあることを理由に、中東に平和と繁栄の新時代が訪れると予言したのは、つい先月のことだった。

しかし現在、イスラエル・ハマス戦争が4週目に入る中、そのビジョンは打ち砕かれている。

イスラエル軍が発表した数字によると、予備役36万人が動員され、25万人が自宅から避難しており、多くの企業が大混乱に陥っている。レストランや商店からは人けがなくなった。

航空各社はイスラエルへの航空便の大半を運休にし、旅行者は渡航をキャンセルしている。主要な天然ガス田は閉鎖され、農場は労働者不足で壊滅し、企業は何万人もの従業員をレイオフしている。

ガザ地区を実効支配する組織ハマスが10月7日にイスラエル南部を襲撃して1400人を殺害し240人以上を人質に取ったことを受け、イスラエルは同組織を壊滅させると誓っている。イスラエルによる空爆でガザ地区全体が破壊され、ガザ保健省によると8000人以上が死亡した。

イスラエルとパレスチナ組織ハマスの間の戦闘が続く中、ハマスが10月7日の攻撃以降拘束している人質の解放を求めるデモの参加者らが、ロケット弾攻撃の警報サイレンが鳴る中で身を守っている。2023年10月28日、テルアビブ。(AFP)

イスラエル経済はハマスとの以前の戦争からは回復したが、今回の戦争はより長期化し、もしかしたら数ヶ月続く可能性がある。イスラエル軍が宣言している任務が、ハマスを封じ込めるだけでなくその支配を終わらせることだからだ。

この紛争のエスカレーションは目に見える脅威である。イスラエルは既に、さらに3つの戦線で低強度戦闘に従事している。レバノン、ヨルダン川西岸地区、シリアである。おそらくは複数の戦線を持つ長期間の紛争となれば、経済の回復は過去の紛争の時よりも難しくなる可能性がある。それに、この戦争が始まる以前でさえ、イスラエル経済はネタニヤフ首相の物議を醸す司法弱体化案による痛みを感じていた。

イスラエル財務省は、この戦争によって打撃を受けている企業に対する10億ドルの補助金を含む経済援助プランを提示している。批判者らは、それでは十分ではないとして、連立合意のもとでユダヤ教超正統派政党や親入植者政党が推進するプロジェクトに割り当てられた数十億ドルの一部を振り向けるよう要求している。

今週、著名エコノミスト300人のグループがネタニヤフ首相とべザレル・スモトリッチ財務相に対し、「正気に戻れ!」と呼びかけた。

彼らは書簡の中で次のように述べた。「イスラエルが被った深刻な打撃に対しては、国家としての優先順位を根本的に変え、戦争被害、被害者への援助、経済回復への対処のために資金を大規模に振り向けることが必要である」。また、戦時支出は数十億ドルにまで跳ね上がると予測した。

さらに、ネタニヤフ首相とスモトリッチ財務相に対し、「戦時努力や経済回復にとって重要でない活動に対する資金を、そして何よりもまず、連立合意のために割り当てられた資金を直ちに停止すること」を求めた。

親入植者政党の党首であるスモトリッチ財務相は先週、イスラエルのアーミー・ラジオで、「戦時努力や国家の回復力に関係のないものは何であれ停止する」と述べた。しかし、懐疑的な見方は残っている。

金融指標が示す見通しは暗い。イスラエルの通貨であるシェケルは14年ぶりの安値に達し、ベンチマーク株式インデックスは今年に入って約10%下落している。イスラエルの経済成長のエンジンであるテック産業は、戦争開始前でさえ出血し始めていた。

フィッチ・レーティングス、ムーディーズ・インベスターズ・サービス、S&Pはいずれも最近、紛争がエスカレートすればイスラエル国債の格下げにつながる可能性があると警告した。

イスラエル中央銀行は、戦闘が同国南部に限定されるという前提のもと、2023年の経済成長率予測を3%から2.3%に下方修正した。

また、シェケルを支えるために300億ドルを計上した。中銀のアミール・ヤロン総裁は今週の記者会見で、経済の回復力は「強固で安定している」と強調した。

「イスラエル経済は過去、困難な時期から回復し迅速に繁栄状態へと戻る方法を知っていた。今回もそうなることを私は疑っていない」

イスラエルは、約2000億ドルの外貨準備高を持ってこの戦争に突入した。さらに、バイデン政権はイスラエルへの140億ドルの緊急援助(その大半が軍事資金)を米連邦議会に承認させようとしている。イスラエルが毎年受け取っている38億ドルに加えてだ。

イスラエルは戦争が始まった時、予想されるミサイル攻撃に対する脆弱性を低下させるため、シェブロンに対しタマル天然ガス田での生産を停止するよう指示した。エネルギー専門家のアミット・モル氏の推計によると、このガス田の閉鎖により毎月2億ドルの収入が失われる可能性がある。

ハマスと同盟関係にあるレバノンの民兵組織ヒズボラが全面的に参戦すれば、イスラエル最大のものを含む他の2つのガス田での生産に影響が出る可能性があるとモル氏は指摘する。しかし、さらなるエネルギー探査への深刻な影響はないと考えているという。

「関係者は政治的リスクを認識している。それはずっと前から存在していた」と同氏は語る。

イスラエルは西欧諸国に匹敵する経済を誇る起業大国だが、戦争が勃発する前でさえ苦境にあった。かつてテック投資で膨れ上がった財源は、裁判所の権限を低下させることを目論む司法改革案によって大打撃を受けた。政府は、選挙で選ばれていない裁判官が過剰な権限を持っていると主張しているが、司法の権限の支持者らは、それが政治家の権力に対する最も重要な監視機能であると見なしている。イスラエルの統治に対する懸念、インフレ率上昇、昨年の世界的なテック投資低迷なども、経済に重くのしかかった。

イスラエルのスタートアップに対する投資額は、2021年には過去最高の270億ドルに達したが、昨年はほぼ半減した。さらに、イスラエルのスタートアップ国家政策研究所によると、司法改革案とそれが引き起こしたデモに投資家が怖気づき、今年上半期のスタートアップ投資額は前年同期比で68%減少した。

テックはイスラエルの輸出の48%を占めるため、その繁栄は同国経済にとって極めて重要である。

政府のイスラエル・イノベーション庁は、戦争期間中にスタートアップの動向調査を実施した。その結果、資金調達の低迷が、従業員が予備役として招集されていることと相まって、「かなりの数のハイテク企業に困難をもたらしている」ことが判明したと、最高責任者のドロール・ビン氏は言う。

「今後数ヶ月以内に閉鎖する危機に直面している企業もある」

それでも、ヤロン総裁がイスラエル経済の回復力を強調したことには歴史的根拠がある。エルサレム・ヘブライ大学の経済学者で元中央銀行調査局長のミシェル・ストロチンスキー教授によると、中銀は2014年のガザ侵攻の戦費をGDPの0.4%、2006年のレバノン侵攻のそれを0.5%と計算しているという。

「2023年の第4四半期に大打撃があると予想している。どれほど酷い打撃かは分からないが、年率で15%縮小しても驚かない」とストロチンスキー教授は語る。しかし、戦時に抑えられていた経済活動が解放されるにつれ、「徐々に経済活動が再開するだろう」

もしこの戦争が目的を達成したら、「経済活動のリバウンドが起こるだろう。それがいつになるかは分からないが」と同教授は言う。「戦線の数によっても変わってくるだろう。しかし重要なのは戦争の長さだ」

AP

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