ワシントン:米 ホワイトハウスの政府高官が、規則に基づき匿名を条件に記者団に述べたところによると、バイデン政権はイスラエルに対し、過激派組織ハマスのせん滅を目的とする地上軍事作戦を再開する場合には、ガザ地区南部の市民の「さらなる大規模な強制退避」を回避すべく取り組む必要があると忠告した。
さらに、現在の休戦期間以前に見られたような、大規模な民間人の犠牲者や集団強制退避を避けるため、イスラエル側に対し、ガザ地区南部での軍事行動は北部よりもはるかに慎重に行動しなければならないことを強調した。
パレスチナ人死者数の増加についての国内外の圧力が強まる中、ホワイトハウスはイスラエルに対し懸念を表明し、今後の軍事作戦は「慎重に考え抜かれた」ものでなければならないと、より強い圧力をかけ始めてきている。これに対しイスラエル側は理解を示しているとのことである。
ベンヤミン・ネタニヤフ首相は、イスラエルが収監しているパレスチナ人受刑者とハマス側の人質の交換が行われている現在の休戦期間が終了した後は、最終的にイスラエル軍は軍事作戦を再開すると明言している。イスラエルとハマスは27日、休戦期間をさらに2日間延長し、人質と受刑者の交換を継続することで合意した。
ジョー・バイデン大統領は、今回の休戦により、切望されていた人道支援物資がガザ地区に続々と搬入されていることからしても、休戦期間が可能な限り続くことを望んでいると述べている。米国務省は27日、休戦期間を延長してより多くの人質を解放する方法を模索するため、アンソニー・ブリンケン国務長官が今週再び中東を訪問する予定だと発表した。10月にイスラエルとハマスとの戦闘が始まって以来、ブリンケン国務長官の中東訪問はこれで3度目となる。
それでもなお、バイデン政権の高官らは、イスラエルが過去7週間にわたってガザ地区北部を重点的に攻撃してきたように、ハマスに焦点を絞った軍事作戦の継続をイスラエルが望んでいることを明確に認識している。彼らは、ハマスによるガザ地区支配とイスラエル市民への脅威を排除するというイスラエルの目標を支持しているものの、ガザ市民の生命を守る必要性については、より声高に主張するようになってきている。ハマスはガザ地区の市民を盾として利用しているとしており、イスラエル当局はガザ地区北部の民間のインフラ施設内に置かれた武器の備蓄や攻撃場所だとされる動画を公開している。
ハマスが運営するガザ地区の保健省は、10月7日の戦闘開始以来13,300人以上のパレスチナ人が死亡し、その約3分の2は女性と未成年者であると発表している。イスラエル側の死者は1,200人を超え、そのほとんどが10月7日の攻撃で殺害された民間人である。イスラエル軍の地上攻撃では、少なくとも77人の兵士が死亡している。
米国は、現在ガザ地区南部と中部には約200万人のパレスチナ人がいると見ている。バイデン政権の高官らはイスラエルに対し、イスラエルの報復攻撃や地上軍事作戦によってガザ北部の人々が耐えてきたような強制退避には、すでに手一杯の状態にある人道支援ネットワークは対応できないであろうと明言しており、さらに、人道支援施設や国連が支援する避難所、電気や水道などの基幹インフラを「最大限の回避して」軍事作戦を実施することを期待するとイスラエル側に伝えている。
世界保健機関は、戦闘により強制退避してきたパレスチナ人が1つ屋根の下に大勢で暮らしたりテント生活を余儀なくされていることから、公衆衛生上の危機が急激に高まってきており、伝染病が蔓延しやすくなっていると警告している。
ある政府高官によれば、ガザ地区に搬入される医療物資の中にはワクチンも含まれているが、腸チフスやコレラの発生を防ぐため、飲料水の供給や衛生管理にも重点が置かれているという。そのために、ホワイトハウスはガザ地区にできるだけ多くの燃料も運び込むようこれまで働きかけてきている。これについて当初イスラエル側は、特に戦闘が始まった最初の数週間は、燃料がハマスに流用されることを懸念して反発していた。
政府関係者によれば、米国はガザ地区住民のための医療品、食料品、防寒具を積んだ米軍人道支援機3機のうち、最初の1機を28日にエジプト北部に派遣する予定とのことである。
AP