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政治的対立の中、ロシアがトルコに対して「観光カード」を使用

5月9日、イスタンブールのアヤソフィア・モスクの近くで写真を撮る観光客。(GettyImages)
5月9日、イスタンブールのアヤソフィア・モスクの近くで写真を撮る観光客。(GettyImages)
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02 Jun 2021 08:06:17 GMT9
02 Jun 2021 08:06:17 GMT9
  • ウクライナとロシア政府の対立において、トルコ政府がウクライナを支持したことで、渡航禁止措置の延長は「意趣返し」になった
  • ロシアで1日に発生するCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の感染者数が、実際にはトルコで1日に発生する感染者数を上回っていることを考えると、トルコへの渡航禁止措置をロシア政府が延長した背景には、何らかの政治的な動機があると考えざるを得ない

メネクセ・トキャイ

アンカラ:トルコ政府の期待と宥和の動きに反して、ロシアは観光シーズンの中、6月1日に終了する予定となっていたトルコへの渡航禁止措置を延長した。

トルコでの感染率の上昇を受けて4月中旬から実施されているトルコへの渡航禁止措置の継続は、最短でもさらに3週間続く見込みで、トルコのホスピタリティ産業に深刻な影響を与えることになる。トルコの同産業は約50万人のロシア人観光客の訪問に依存しており、ロシア人観光客はこれから別の休暇先を探すことになる。

2020年には約210万人のロシア人がトルコを訪問しており、観光によるキャッシュフローがトルコの対外債務を賄う役割を果たしている。
今回の決定は、健康上の問題以外にも、ウクライナとロシア政府による対立において、トルコがウクライナを支持したことによる政治的な意趣返しの意味合いがあると考えられている。ロシア政府はウクライナとの国境に約10万人の部隊を駐留させている。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領がイスタンブールを訪問したことも、ロシア政府を怒らせた。

マルマラ大学のトルコ・ロシア関係の専門家、エムレ・エルセン氏は、「ロシアで1日に発生するCOVID-19の感染者数が、実際にはトルコで1日に発生する感染者数を上回っていることを考えると、トルコへの渡航禁止措置をロシア政府が延長した背景には、何らかの政治的な動機があると考えざるを得ない」と指摘している。

ロシアがトルコに対して観光を外交カードとして利用したのは初めてではない。

2015年11月にシリア国境でトルコ軍がロシアの戦闘機を撃墜した後、ロシア政府は両国間のチャーター便の廃止を含む経済制裁パッケージを発表し、トルコは年間300万人以上のロシア人観光客を失った。

また、ロシアの旅行会社はトルコを訪問するパック旅行を販売しないように求められた。

「両国は貿易やエネルギーの分野で関係を発展させてきたが、ロシアはNATO加盟国としてのトルコの立場を懸念している」とエルセン氏はアラブニュースに話した。

また、ロシアの一部の政治家は、トルコがロシアの勢力圏から離れていくことへの懸念を表明し、観光カードをトルコ政府に対して使うように政府に促している。

トルコの国家主義者の指導者は、ロシア人が暖かい海に無条件の愛着を持っていると期待して、ロシア人を休暇に誘っている。トルコを訪問しないことは、「トルコの指導者による無責任な発言に対して我々の社会が見せる真に力強い反応となるだろう」と、ロシアのコンスタンチン・コサチェフ議員は自身の公式Facebookページに書き込み、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領のウクライナ支持を批判した。

エルセン氏によると、トルコ政府がウクライナとの軍事戦略上の結びつきを強めていることや、シリアやリビアに関するトルコとロシアの意見の相違が続いていることに加え、ここ数年ロシアの外交政策に批判的だったポーランドが今回、トルコ製無人機の購入を決定したことも大きな要因となっているという。

ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、クリミアに対する「攻撃的」なウクライナの行動やウクライナ政府の軍国主義的な感情を助長することはロシアの領土保全を直接侵害していると述べ、ウクライナとの接近についてトルコ政府に警告した。

トルコは最近、ポーランドとの防衛協力に向けた一歩を踏み出した。ポーランドはトルコから中高度・長距離航行型戦術的UAVシステム「バイラクタルTB2」無人機を24機購入する。この契約によりポーランドは、トルコ軍が現在使用しているUAVを運用する2番目のNATO加盟国となる。

トルコは2019年にウクライナにも無人機を売却している。この2つの重要な国との無人機売却契約は、ロシアに対抗するNATOの取り組みにトルコが貢献していることを示すNATOへのアピールと考えられている。

ロシア連邦保安庁は最近、ウクライナとの国境近くで無人機の飛行数が増加していると発表した。しかし、トルコ政府は、ウクライナとの無人機売却契約はロシアに向けたものではないと繰り返し述べている。  

「トルコの行動をロシアは自国の利益に反するものと考えている。今回の『渡航禁止措置』の延長は、明らかに、そうした行動に不満を持っていることをトルコに示すことを目的とした政治的手段であり、この動きが続いた場合には深刻な結果を招くという信号でもある」

ワルシャワに拠点を置くポーランド国際問題研究所のアナリスト、カロル・ワシレフスキー氏がアラブニュースに語った。

ワシレフスキー氏によると、ロシアは、ジョー・バイデン氏が米国大統領に就任して以来、トルコが西側の同盟国に送ろうとしているメッセージを観察しており、その結果、断固たる行動を取ることを決めたという。

ワシレフスキー氏によれば、これがさらに興味深いのはその背景にあるという。「トルコ・ロシア関係について話す時、我々はトルコのウクライナへの接近や最近のポーランドとの取引に注意を向けるが、もうすぐNATO首脳会議があり、バイデン氏とエルドアン氏による初めての会談があることを忘れてはならない」とワシレフスキー氏は指摘する。

この待望の会談は、6月14日にブリュッセルで開催されるNATO首脳会議に合わせて実施される。NATO首脳会議で参加国は、F-35戦闘機プログラムへのトルコの再参加、敵対者に対する制裁措置法(CAATSA)による制裁、ロシアの防衛システムS-400などについて協議するとみられている。  

月曜日、トルコ政府は、S-400防空技術を監督するロシアのミサイル専門家を帰国させることを決定し、この地域におけるロシアの影響力に対する米国の懸念に対処する用意があることを示した。

ワシレフスキー氏は、トルコがS-400について、そしておそらくはその戦略的方向性について最終的な選択をする時が近づいていると述べた。同氏はまた、ロシアがやろうとしていることは、何が危機に瀕しているかをトルコに示すことだと述べた。

「ロシアの行動によって、トルコの意思決定者は慎重に選択肢を検討しなければならなくなるだろう。これは、NATO首脳会議でのトルコの行動や、ジョー・バイデン氏の提案に対するトルコの姿勢に影響を与える非常に重要な要因になると考えている」とワシレフスキー氏は話した。

トルコは最近、ベラルーシが旅客機を着陸させて機内の反体制派ジャーナリストを拘束した後、同国に制裁を課さないようNATO加盟国を説得した。ベラルーシはロシア政府の最も緊密な同盟国だ。

この動きは、ロシア政府に和解の意思を示し、近く訪れる夏季のロシア人観光客の流入を確保し、観光シーズンを再び失うことを防ぐためのトルコによる戦術と考えられている。

しかし、ロシアは渡航禁止措置を解除しておらず、この外交戦略は失敗に終わったようだと結論付けられている。

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