• 為替操作により、10年間の続く内戦により貧困に陥ったシリア人の多くから必要な資金が奪われている。

ベイルート： シリアのアサド大統領は、過去2年間に為替操作を利用して、少なくとも1億ドルの国際援助を自国の財源に充てていたことが、新たな調査により明らかとなった。

為替操作により、10年間の続く内戦により貧困に陥ったシリア人の多くから必要な資金が奪われている。また、為替操作により、シリア政府は、シリア政府の残虐行為の責任を追及する欧米諸国により制裁措置を回避することができる。

米国ワシントンに拠点を置き、国際的な公共政策問題に焦点を当てた研究機関である戦略国際問題研究所が今週発表した報告書によると、「欧米諸国は、シリアのアサド政権に制裁を課しているにもかかわらず、アサド政権への交換可能通貨の最大の供給源のひとつ」となっている。

同報告書は、「アサド大統領は自らが作り出した危機から単に利益を得ているだけではない」としたうえで、「アサド氏は事態が悪化すればするほど自らが報われる体制を作り上げた」とした。

金曜日、国連は特にシリアの通貨が急落した2019年後半から、為替変動が国連の事業の一部の効果に「相対的な影響」を与えていることを認めた。

ダマスカス在住の国連高官フランチェスコ・ガルティエリ氏は、同氏の執務室は木曜日に同報告書を受け取ったと述べた。シリア常駐・人道調整官のチームリーダーを務めるガルティエリ氏は、「シリアの人々への支援の効果が最大限に発揮されることについて、我々と同様に懸念している援助資金提供者と今後数週間のうちに公に議論するためにも、報告書の内容を慎重に検討している」と述べた。

水曜日に発表された報告書の執筆者らは、イランの国家通貨の下落によって失われ、シリア政府の財源に転用された援助資金の額は、過去2年間で1億ドル以上に上るだろうと述べた。報告書で算出に使用されたデータは、国連の調達に限定されており、他の国際的な援助団体を通じた援助、給与、現金援助などは含まれていない。

ヒューマン・ライツ・ウォッチでシリアを調査しているサラ・カヤリ氏は、今回の調査結果は衝撃的だとし、援助資金提供者はもはや、シリア政府と同政府による人権侵害に事実上資金を提供しているという事実を無視することはできないと述べた。カヤリ氏は、国連の調達プロセスは、人権の観点からの当然に実施すべき注意義務および努力（デューデリジェンス）の基準を満たしていないと述べた。

シリア・ポンドは、内戦、汚職、欧米諸国からの制裁、そして最近では隣国レバノンの財政・経済破綻によって大きな打撃を受けている。

AP