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ウクライナ戦争はイラン政権がいかにロシアに傾いているかを露呈した

2022年1月19日、モスクワのクレムリンで会談するプーチン大統領(左)とイランのイブラヒム・ライシ大統領(右)。(AP)
2022年1月19日、モスクワのクレムリンで会談するプーチン大統領(左)とイランのイブラヒム・ライシ大統領(右)。(AP)
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20 Apr 2022 05:04:22 GMT9
20 Apr 2022 05:04:22 GMT9
  • しかし、一般のイラン人の間では、民主化を求めるウクライナに大きな共感が集まる

テヘラン:1979年のイスラム革命で、イランは「我々は西でも東でもない」という革命勢力の声を受け入れ、当時冷戦状態にあった米国とソ連の両方を拒否した。この言葉は今もイラン外務省のドアに掲げられている。

しかし、ロシアのウクライナ戦争は、近年、イラン政権がいかにロシアに傾いているかを露呈した。世界各国との核合意が破綻し、数十年にわたる米国への強硬な怒りが噴出している。

イランの準軍事組織、イスラム革命防衛隊(IRGC)の隊員たちはロシアの地対空ミサイルシステムと航空機で訓練を行っている。強硬派のイブラヒム・ライシ大統領は、初の海外訪問でロシアのウラジミール・プーチン大統領を訪問した。

この戦争は、イランの国内政治においても、より深い断層を露呈している。一般のイラン人の間では、以前に民主化運動「オレンジ革命」を起こしたウクライナに大きな共感が集まっている。10数年前にイランを揺るがした「緑の運動」も同様の抗議活動であったが、当局に強制的に鎮圧されている。

イランの、ロシアに対する歴史的な敵意は、一部の人々の間で広く浸透している。同国を支持することは、世界の大国に対抗するという、イスラム共和国がしばしば表明するメッセージを裏切ることになるというのがその理由だ。

テヘラン中心部のサルチェシュメ地区に住む2児の母、ゾーレ・アフマディ氏は、「パレスチナやイエメンの人々が大国の標的になっているように、ウクライナの虐げられた人々も助けなければならない」と話す。「ウクライナでは、横暴を極める大国が子どもや女性を殺している」

イランの国営英語メディア「プレスTV」は、自らを「声なきものの声」と表現しているが、ロシアの論調には忠実である。

同メディアは、侵攻初期の表現として、ロシアが用いる歪曲的な「特別作戦」という言葉を使っている。ロシア軍によるブチャの民間人殺害に言及した記事には、プレスTVのウェブサイトで「攻撃はフェイク」あるいは「挑発」と、虚偽の説明をする見出しが付けられている。

イラン政府のウクライナに対する怒りの一部は、IRGCの誤射により乗員176人が死亡した、2020年のウクライナ旅客機撃墜事件の余波からきていると思われる。

イランは数日間の否定の後、撃墜を認めた。将軍殺害事件を受けたイランが報復として在イラク米軍基地に弾道ミサイルを発射した後、軍隊は誤認を犯したという。

ウクライナによるイラン批判は、時間が経つにつれてより直接的なものになっていった。テヘランの金曜礼拝指導者カゼム・セディギ師は、ロシアがウクライナ戦争を始めた後の3月の説教で、そのことに触れている。

「旅客機事故の際、ウクライナはわれわれに対して不義を行い、米国を支援するためにそれを悪用した」

また、彼は、イランとロシアの国営メディアによく見られる「ホワットアバウティズム(Whataboutism)」、つまり、別の話題を持ち出して偽善を告発しながら、目下の問題から目をそらさせる、という行為に及んだ。

「イエメンやシリアでは戦争によって罪のない人々の命が奪われている。しかし、ウクライナをめぐっては大規模なプロパガンダが行われている。これは人種差別だ」

国家のあらゆる問題について最終的な決定権を持つ最高指導者のハメネイ師は、自国が「戦争と破壊」に反対していると述べ、一方で紛争を起こした米国を非難した。彼はまた、プーチン氏と共有している長年の疑念を持ち出した。一般市民ではなく、米国こそが、民主主義を後退させる「カラークーデター」と呼ばれるものを煽っているのだ、と。

ハメネイ氏にとって、それは2009年のイラン大統領選挙で争われた「緑の運動」の記憶である。この講義活動は、自らが率いる神権政治に真っ向から挑戦したものであった。イランの治安部隊は暴力と大量逮捕でデモを鎮圧した。しかし、近年、経済的な問題をめぐって不安が再燃している。

プーチン氏にとっては、2004年のウクライナのオレンジ革命と、その後にクレムリン寄りの政治家ヴィクトル・ヤヌコーヴィチを追い落としたマイダン革命がそれである。

最近テヘランの街角で行われたインタビューでは、17人がAP通信のジャーナリストと戦争について話すことを希望し、他の人は辞退した。そのうち12人がウクライナ支持、3人がイランの公式見解を繰り返し、2人がロシアを支持した。

「私はウクライナを支持する」と、26歳のコンピュータープログラマー、サジャド氏は言った。他の人と同様、報復を恐れてファーストネームのみを条件に話した。「ロシアは罪のない人々を無意味に殺している。なぜ私たちが黙っていなければならないのか」

イラン人元大尉のメヘルダド氏(75歳)は、ロシアの戦争理由を「ばかばかしい」と言い、1980年代にイラクの独裁者サダム・フセインがイランに対して8年間の血生臭い戦争を始めたときに使った理由と似ている、と述べた。当時サダム・フセインは、石油資源の豊富な南西部において、イラン国内のアラブ系少数民族を支援することを侵略の正当化の理由に挙げていた。

「革命的なイランによる脅威の可能性と、ある民族を支援するという、サダム・フセインがイランを攻撃した理由を真似ているのだ」と同氏は言う。「この口実あれば、どの国も他国を攻撃できるだろう。これはロシアに対しても同じことだ」

64歳で教師を引退したアリ・ネマティ氏は、NATOに挑戦するプーチン氏を「非常に勇敢だ」と賞賛した。しかし、イランは、1952年にNATOに加盟したトルコの隣で静かに暮らしている。

「イランは帝国主義との戦いで孤立しているのだから、ロシアを支援すべきだ」とネマティ氏は述べた。

AP

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