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イラン、“血の金曜日”の弾圧で不法な殺傷力を行使―HRW指摘

イラン全土で数百人のデモ参加者が政府治安部隊によって殺害され、さらに数千人が逮捕された。(資料写真、AFP)
イラン全土で数百人のデモ参加者が政府治安部隊によって殺害され、さらに数千人が逮捕された。(資料写真、AFP)
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23 Dec 2022 05:12:44 GMT9
23 Dec 2022 05:12:44 GMT9

アラブニュース 

  • 人権団体は、イランのザーヘダーンで9月30日、治安部隊により少なくとも12人が死亡、30人が負傷したことを示す証拠を開示した
  • イラン当局は35人のデモ参加者の死亡を認めた一方、地元のバローチ人グループは死亡者97人と発表

ロンドン:ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は、イランの治安部隊が9月30日、”血の金曜日”と呼ばれる弾圧で「不法な殺傷力」を行使し、数十人のデモ参加者を殺害したとして非難した。

またHRWは、国連のイランにおける事実調査団に対し、クルディスタン、さらに州都で虐殺が行われたスィスターン・バルーチェスターン州など、「少数派が優勢となっている」地域での国家による暴力行為に注目するよう求めた。

加えて、イランが「法執行官による武力と銃器の使用に関する国連基本原則」を尊重する必要性を強く訴えた。

HRWは、イランの人権団体Haalvshから提供された52のビデオや画像を調べて目撃証言を照合した結果、ザーヘダーン市で9月30日、少年を含めて少なくとも12人が殺害されたと断定したと述べた。

この日は30人が負傷した。HRWによると、その後数日間で、別の3人の子どもを含む少なくとも8人が同市で殺害されたという。

一方、ザーヘダーン地域のバローチ人の人権団体は、9月30日から10月5日までの死者数は計97人に上り、うち9人は子供であるとしている。

死者は主に、治安部隊が、地元の警察署に向かっていた大規模デモ隊に参加した抗議者、さらに死傷者が運ばれていた市内最大のスンニ派モスクに対し、ザーヘダーン市内のグランド・モサラ礼拝堂を囲む屋根から発砲したことにより発生している。

HRWは、デモ参加者は投石や火炎瓶で治安部隊に応戦し、多くの傍観者が両者の間に挟まれた形になったと付け加えている。

この際、イラン・イスラム革命防衛隊の少なくとも4人の隊員が、応戦したデモ隊によって殺害された。

目撃者の一人はHRWに対し、こう証言した。「弟を捜すために(礼拝所から)出てくると、地面に死体があり、そのほとんどが若者だった。最初のうちは、警察が撃っていることに気づかなかったが、その後、建物から撃っていることに気づいた」

別の目撃者であるイスマエル・シャフバフシュさんは、甥を探しに地元の病院へ行った時のことについてHRWに語った。

「救急治療室に入ると、筆舌に尽くしがたい悲惨な光景を目にした」。彼はこう証言した。

「床の白いセラミックタイルが赤くなっていた….。私は10〜15人の負傷者の名前が書かれた3枚の名簿に目を通したが、甥のファルザドの名前はそこになかった。その後、看護師が各ページに18〜20人の名前が書かれた5〜6枚の名簿を持ってやってきて、亡くなった人の中にファルザドが含まれていることを教えてくれた」

イランの準国営通信社Tasnimはその後、イスラム教スンニ派の分離独立派組織「ジャイシュ・アル・アドル」が、「テロ攻撃」とみられる暴力行為を行ったと主張した。HRWは、このテロに対する非難を否定している。

「最初に銃撃を始めたのは警察署だ。若者たちが唱和し感情を表現していた場所だけでなく、人々が祈りを捧げていたグランド・モサラの内部に向かっても無差別に銃撃し、軍事用の弾薬を撃ち込んでいた」。地元の著名な導師であるモウラナ・アブドル・ハミド・イスマイールザヒ氏は、HRWにこのように語った。

「彼らはグランド・モサラに銃を撃ち、中に催涙ガスを投げ入れた。女性専用の場所でさえもガスや銃弾を浴び、女性1人が殺され、殉教した」

地元当局は10月28日、ザーヘダーンでの衝突で治安部隊員6人が死亡したほか、35人のデモ参加者と一般市民が死亡したと発表。罪のない礼拝者の死について「過失だった」と非難し、地元警察署長を解任した。

HRWによると、この同じ日、地元当局は市内で抗議デモが起きていた際に13歳と16歳の子ども2人を殺害した。いずれも頭を撃たれていたという。

イランでは、22歳のクルド人女性、マフサ・アミニさんが9月、ヒジャブを不適切に着用していたとして道徳警察に逮捕、拘束されて死亡して以来、全国的に抗議運動が巻き起こっている。

イラン全土で何百人もの人々が政府の暴力によって殺害され、何千人もの人々が逮捕された。逮捕、拘束された人々の一部は政権によって処刑され、さらに多くの人々が死刑判決または懲罰的な長期の実刑判決を受けている。加えて、拘束中の拷問やその他の形態の虐待も数多く報告されている。

HRWは12月9日現在、少なくとも255人が死亡した証拠をつかんでおり、別の226人についても調査中であると述べている。

また、HRWは、「全国の少なくとも13の都市で、おおむね平和的で、しばしば混雑していたデモの最中」に、「拳銃、散弾銃、軍用アサルトライフル」がデモ参加者に対して使用されており、その殺傷力のある武器のほとんどが、国内の少数民族が支配する地域で確保されていたとの証拠を得ていると付言した。

HRWのイラン担当上級研究員であるタラ・セペフリ・ファル氏によれば、9月30日にザヘダンで起きた出来事は、イランでの今年最も残忍な弾圧だったという。

「『血の金曜日』にイランの治安部隊が銃撃したデモ参加者と傍観者の数は、デモ行動中の一日の死者数としては最大であったが、責任者は誰も逮捕されていない」。ファル氏はこのように語った。

「イラン政府の大規模な残虐行為により、ザーヘダーンのような長年放置されてきた地域での闘争が、抗議行動の中心軸として大きく浮上してきている」

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