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中東に迫る水危機 技術の進歩が緩和への新たな希望をもたらす

干上がりつつあるチバイッシュ湿原の空撮写真。イラク南部ジーカール県。(AFP/ファイル)
干上がりつつあるチバイッシュ湿原の空撮写真。イラク南部ジーカール県。(AFP/ファイル)
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16 Feb 2023 05:02:45 GMT9
16 Feb 2023 05:02:45 GMT9
  • 中東研究所が主催したイベントで専門家らは、貴重な水の供給を維持するために各国は新しいアイディアや技術を取り入れなければならないと指摘した
  • 衛星画像に基づくと、地下水資源の喪失が最も大きいのはイラン、サウジアラビア北部、トルコ東部、イラク

アリ・ユネス

ワシントンD.C.:世界中で気候変動の影響が強まる中、ただでさえ世界で最も水資源が乏しい地域である中東・北アフリカ(MENA)の国々はかつてない規模の水資源喪失に直面している。

一方、効果的な水関連開発・管理プログラムにおいて経済的不安定性が妨げになることも少なくない。

これらは、ワシントンD.C.の「中東研究所」の主催で15日に開催されたオンラインパネルディスカッションにおいて発信された主要なメッセージの一部だ。

研究者や科学者は、アラブ諸国は水の供給を維持するために新しいアイディアや技術を取り入れ、喪失を食い止めるための新たな方法を見つけなければならないと指摘した。

また、水不足のレベルはMENA地域の中でも場所によって異なるため、供給の減少は貴重な資源へのアクセスをめぐる政情不安の高まりや国家間の紛争増加につながりかねないと警鐘を鳴らした。

さらに、降雨、降水量、蒸発量を測定する従来からの方法は現代でも有効であるとしつつ、衛星画像技術を使用して降水量を測定し理解を深めることを提案した。

しかし、ワシントンD.C.のジョージタウン大学外交大学院で水・気候科学の非常勤講師を務めるラハ・ハキムダヴァル氏は、衛星画像の精度や利用可能性は場所に左右されるため、MENA地域の水資源喪失への適切な解決策を立てるために水科学者が答えを必要としている全ての疑問を解決することはできないと指摘した。

例えば、画像の解像度や撮影頻度がデータの精度に影響を与えるという。

中東研究所の気候・水プログラムで在外客員研究員を務めるユーセフ・ウェフベ氏は次のように述べた。「現在、MENA地域は水供給に対してかつてない規模のストレスを加えている。それが水需要の急激な増加につながっており、地域の食料安全保障を脅かすとともに生態系に害を及ぼしている」

また、MENA地域は高まる水需要に追いつけないとしたうえで、年間降水量が200ミリリットル以下で蒸発レベルが55%を超えているという乾燥・半乾燥地域としてのMENA地域の特性がその一因であると指摘した。

「結果として、利用可能な水資源では、全ての主要部門での人間の需要を満たすことができない」

米国、欧州、日本の衛星が、米国、欧州、アジアの一部の水資源に関する正確で信頼できるデータを生成している。

しかし中東においては、水問題に関連する利用可能な衛星データや画像の精度は依然として著しく低いままである。データ・画像収集のためのイニシアティブに参加していないことが主な理由だ。

しかし、サウジアラビア、UAE、カタールなどの一部のアラビア湾岸諸国が立ち上げている野心的で有望な宇宙プログラムは衛星データに基づいた水研究の新時代を先導するかもしれないと、ウェフベ氏は指摘した。

同氏は「UAE降水強化科学研究プログラム」のプログラムオフィサーも務めている。

アリゾナ大学のエンリケ・R・ヴィヴォーニ教授は、権威ある科学誌に掲載された研究論文に基づいて、MENA地域で過去10~15年間に失われた地下水は膨大な量だと指摘した。

同教授は次のように述べた。「中東における陸水貯留量の喪失は莫大だ。コロラド川流域の平均流量に匹敵し、約10~25立方キロメートルの水が大気中に失われている計算になる」

また、衛星画像に基づいて、再生不可能な地下水資源の喪失が最も大きいのはイラン、サウジアラビア北部、トルコ東部、イラクだと指摘した。

さらに、これらの国々の当局に対し、データが正確かどうかを調査したうえで、もしそうであれば、この問題を軽減あるいは逆転するための対策を講じるよう求めた。

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