Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter
  • Home
  • 中東
  • イランで濃縮度83.7%のウラン粒子検知:IAEA

イランで濃縮度83.7%のウラン粒子検知:IAEA

イラン中部ナタンズのウラン濃縮施設にある遠心分離機。2019年11月5日にイラン原子力庁が公開した写真。(AP)
イラン中部ナタンズのウラン濃縮施設にある遠心分離機。2019年11月5日にイラン原子力庁が公開した写真。(AP)
Short Url:
01 Mar 2023 04:03:18 GMT9
01 Mar 2023 04:03:18 GMT9
  • 今回の報告書は核開発をめぐるイランと欧米の間の緊張を再び高めることになりそうだ

ウィーン:国連の核監視機関の査察団が、イランのフォルドゥの地下核施設で濃縮度83.7%のウラン粒子を検知した。AP通信が28日に確認した報告書が明らかにしている。

ウィーンの国際原子力機関(IAEA)が加盟国に配布した部外秘の四半期報告書は、核開発をめぐるイランと欧米の間の緊張を再び高めることになりそうだ。イランは既に、国内では数ヶ月にわたるデモによる社会不安に直面しているうえ、ロシアがウクライナ侵攻で使用している爆弾搭載ドローンを供与しているとして欧米から怒りを買っている。

IAEAの報告書は「粒子」についてのみ述べており、イランは濃縮度60%を超えるウランは備蓄していないと示唆している。同国はしばらく前から濃縮度60%の製造を続けている。

IAEAの報告書によると、査察団は1月21日、イランのフォルドゥの核施設にあるIR-6型遠心分離機から成るカスケード2組が、以前の申告とは「大きく異なる」形で構成されていたことを発見した。IAEAは翌日にサンプルを採取し、濃縮度83.7%の粒子を検知したという。

「イラン側からは本機関に対し、濃縮の過程で濃縮レベルの『意図しない変動』が発生した可能性があるとの説明があった」とIAEAの報告書は述べている。「この問題を明確にするために、現在本機関とイラン側の間で議論を行っている」

また、今回の発見を受けてフォルドの施設における「本機関による検証活動の頻度と強度をさらに高める」としている。

イラン国連代表部はAP通信に対し、IAEA高官のマッシモ・アパロ氏が先週イランを訪問し「濃縮度の疑惑を調査した」ことを明らかにした。

さらに、「イランによる評価に基づいて、濃縮度の疑惑をめぐるイランとIAEAの間の問題は解決されている」と主張した。「IAEAの報告書はアパロ氏の訪問前に作成されたため、訪問の結果は反映されていない。IAEA事務局長が(3月の)理事会への口頭報告の際に言及すると思う」

イランの民生用核開発プログラムのベフルーズ・カマルバンディ報道官も先週、83.7%まで濃縮されたウラン粒子が検知されたのは濃縮度60%の最終産物を製造する過程での瞬間的な副次的結果であると主張した。しかし、たとえ原子レベルであっても濃縮度がこれほど大きく変動するというのは査察団には疑わしく見えるだろうと専門家は指摘する。

2015年のイラン核合意は、同国によるウラン備蓄量を300キログラム(661ポンド)、濃縮度を3.67%までに制限していた。これは原子力発電を行うのに十分なレベルだ。2018年に米国が一方的に合意から離脱したことで、核開発をめぐるイランの一連の攻撃やエスカレーションが始まった。

イランは濃縮度60%のウランの製造を続けている。核拡散防止の専門家によると、これは既に民生利用のためのレベルではない。IAEAの報告書によると、イランのウラン備蓄量は2月12日時点で約3760キログラム(8289ポンド)に達しており、前回11月の四半期報告書の数字から87.1キログラム(192ポンド)増加している。そのうち87.5キログラム(192ポンド)は60%まで濃縮されたものだ。

約84%の濃縮度は核兵器級の90%に迫る水準である。すなわち、そのレベルの核物質の備蓄があれば、イランはその気になればすぐにでもそれを使用して核兵器製造を開始できるということだ。

イランは現在「数発の」核兵器を製造するのに十分なウランを保有しているとIAEA事務局長は警告しているが、核兵器を製造し、おそらくはそれをミサイルに搭載するために小型化するには、さらに数ヶ月が必要である可能性が高い。米国の情報活動コミュニティはつい先週末、イランは核兵器の製造を目指していないとの見方を示した。

CIAのウィリアム・バーンズ長官はCBSの番組「フェイス・ザ・ネイション」で、「我々が知るかぎり、イランの最高指導者は、2003年末に中断あるいは停止されたとみられる核武装計画の再開をまだ決定していない」と語った。「しかし、もう一つの柱である濃縮計画は明らかにかなり進んでいる」

しかし、テヘランの南西約90キロメートル(55マイル)に位置するシーア派の聖なる都市コムの近郊の山の下にあるフォルドゥの地下核施設は、国際社会にとって依然として特別な懸念材料だ。サッカー場ほどの広さのこの施設は遠心分離機3000基を十分収容できる大きさだが、ある程度は小さく、また地下にあるため、米当局は2009年にこの施設の存在を公表した際には軍事目的の施設ではないかと疑っていた。

一方、米国のコリン・カール国防次官は28日、下院軍事委員会で、イランはその気になれば核兵器1発の製造に必要な核分裂性物質を2週間以内に生産できるとの見方を示した。

同国防次官は、「米国が(合意から)離脱して以降のイランの核開発の進展は目覚ましい」と述べた。「前政権が(合意からの)離脱を決定した2018年当時なら、イランが核兵器1発分の核分裂性物質を生産するのに約12ヶ月かかっただろう。しかし、今なら約12日しかかからないだろう」

イラン側からのどのような説明にも、同国の地域における大敵であるイスラエルは満足しそうにない。最近復権を果たしたイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は既に、イランに対する軍事行動を取ると警告している。また、イスラエルとイランは核合意崩壊以降、中東各地においてハイリスクな影の戦争を行っている。

一方、ドイツのアンナレーナ・ベアボック外相は28日、同国とイスラエルは濃縮度約84%のウランをめぐるイランの疑惑について懸念していると述べた。

同外相は、「イラン側の核開発のエスカレーションについて、またウラン濃縮度が非常に高まっているとの最近の報告について、我々は懸念を共有している」と述べた。「これほど高い濃縮レベルに対しては、民生利用という正当化は説得力を持たない」

ベルリンを訪問中だったイスラエルのエリ・コーヘン外相は、イランに対しては2つの選択肢があり、一つは2015年の核合意を明記した安保理決議においていわゆる「スナップバック」メカニズムを利用して再び国連制裁を科すこと、もう一つは「真実味のある軍事的選択肢も卓上に載せること」であると述べた。

「我々の情報や知識からすれば、今こそこれら2つの具体的な措置に取り組むべき時だ」

AP

特に人気
オススメ

return to top