アリ・ユネス
ワシントン:米国政府は、レバノンに汚染された燃料を販売し、法の支配の崩壊を助長する汚職行為に関与したとして、レバノンの2人の兄弟に制裁を課した。
財務省のテロ・金融情報担当次官であるブライアン・E・ネルソン氏は、5日の記者会見で、米国政府がレイモンドとテディ・ジーナ・ラーメ両氏の腐敗したビジネス手法に対し、行動を起こしたことを明らかにした。
兄弟の指定は、財務省の一部である外国資産管理局の支援のもとで行われた。
ラーメ兄弟は、レバノンの発電所用燃料を輸入するための国家契約を獲得し、裕福で実力のある、広い人脈を持つ実業家とされている。財務省は、両氏が私腹を肥やすための疑わしいプロセスを通じて契約を獲得したと述べた。
アラブニュースが参加した記者会見で、ネルソン氏は、2019年に、兄弟が支配しアラブ首長国連邦に拠点を置くZR Energy DMCC社が、レバノンの電力危機を回避するために15万トンの燃料を輸入する国家契約を獲得したと述べた。
同氏は「質の高い燃料を輸入する代わりに、汚染された燃料を輸入した」と述べ、汚染された燃料が発電所に損害を与え、これがレバノン国民に影響を与えたと付け加えた。
2020年、レバノンの裁判官は、燃料輸入スキャンダルに関与したとして、ZR Energy DMCC社を贈収賄とマネーロンダリングで起訴した。
ネルソン氏によると、同国の検察官は最初の起訴を追跡調査しなかったが、このスキャンダルによってレバノンにおける強力な腐敗のネットワークが明らかになり、兄弟は高価な贈り物や海外旅行などの賄賂と引き換えに、燃料サンプルの検査結果を改ざんすることが可能だったという。
レバノンは長期にわたる金融危機に陥っており、その間、通貨価値は対ドルで95%以上失われている。しかし、ネルソン氏は、同国政府は政治・経済改革を求める声を無視してきたと述べた。
財務省は、レバノンの銀行が特定の顧客に少なくとも4億5600万ドルの国外送金を許可したと推定している、と同氏は付け加えた。一方で、レバノンの人々は、改革の導入と蔓延する汚職への取り組みが不十分な結果、エネルギーインフラの悪化に直面しているという。
ネルソン氏は、今回の制裁指定はラーメ兄弟をレバノンの特定の政治グループと結びつけるものではない、と述べた。
「米国財務省がラーメ兄弟を指定したのは、レバノン国民を犠牲にして汚職行為に従事した者たちに個人的な金銭的コストを課すためである」と同氏は付け加えた。
「今回の指定は、レバノンの電力部門に特に汚職が蔓延していることを浮き彫りにしている」
制裁の結果、ラーメ兄弟は米国でのビジネスや米国の組織や市民との金融取引ができなくなる。
財務省は、外国資産管理局(OFAC)に言及し、「米国内にある、または米国人の所有または管理下にある、両氏の個人的なすべての財産および財産権、および、両氏によって個人的にまたは他のブロック対象者とともに、直接または間接的に50%以上所有されている事業体のすべての財産および財産権を、ブロックしOFACに報告しなければならない」と述べた。
ネルソン氏はまた、レバノン当局に対し、改革プロセスの進展を促した。
「今こそ、レバノン政府は切実に必要とされる経済的・政治的改革を実施すべきである」と同氏は述べた。こうした改革は、レバノンに対する数十億ドルの国際金融支援をもたらすために必要となる。
レバノンの経済危機の中、ミシェル・アウン氏の任期が終了した10月以降、政治家が後継者に合意できず、大統領職が空席のままとなっている。
バーバラ・リーフ米国務次官補(近東担当)は先月、同地域の視察の一環として同国を訪れた。同氏は後に、レバノンとその国民に安定をもたらすための取り組みの支援に、米国は引き続き尽力すると述べた。また、最近米国がレバノン軍の兵士に提供した資金援助について特に強調した。