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財政危機に見舞われているアラブ諸国は、政治家ではなく専門家の意見に耳を傾けるべき

収穫できなかった小麦畑を耕すチュニジアの農家。ハムザ・メデブ氏は、チュニジアの政治指導者は、政治的社会的に国で費用を負担する可能性があるため、経済や債務に関して厳しい決断をしなければならないが「やる気がない」と説明した。
収穫できなかった小麦畑を耕すチュニジアの農家。ハムザ・メデブ氏は、チュニジアの政治指導者は、政治的社会的に国で費用を負担する可能性があるため、経済や債務に関して厳しい決断をしなければならないが「やる気がない」と説明した。
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15 Apr 2023 09:04:01 GMT9
15 Apr 2023 09:04:01 GMT9
  • ワシントンでのイベントに参加したパネリストたちは、チュニジア、エジプト、レバノンの3カ国が直面している「深刻な」債務危機について、各国の政治体制が非難されるべきであると主張。
  • 新型コロナウイルス感染症の大流行とウクライナ戦争が、経済的に弱い国々が直面している既存の問題を悪化させたと付け加えた

アリ・ユネス

多額の債務と弱い経済に苦しんでいるアラブ諸国は、特に不安定化や政権崩壊すら引き起こすおそれがある、政治的・経済的打撃に対して脆弱であると、14日、中東・北アフリカ地域の経済の専門家が警告した。

専門家らは、このような国家の政治家は頻繁に、経済に対してあまりにも大きな権力をふるい、もっと能力のある専門家が問題に対処し解決するために必要な決定を行うのを妨げていると述べた。

アラブニュースも出席した、ワシントンを拠点とする中東研究所の「チュニジア、エジプト、レバノンにおける債務と調整の政治経済」と題されたパネルディスカッションにおいて、専門家は、3カ国の政治体制が、「深刻な債務危機」、さらには経済崩壊にまで陥っている理由のひとつであるとした。新型コロナウイルス感染症の大流行とウクライナ戦争が、経済的に弱い国々が直面している既存の問題を悪化させたと付け加えた

タハリール中東政策研究所のティモシー・E・ カルダス副所長は、エジプトの場合、軍、大統領府、国家安全保障局、総合諜報局の4つの機関によって国家運営されていると述べた。

強力な権力をもつ、この4機関が、「エジプト経済の中心となる決定や、現在の経済危機に重大な影響をもたらす政策を最終的に統制している」という。

同氏によると、この4機関が経済面での決定権を独占しているため、財政の専門家が問題解決に乗り出そうとしても、じゃまが入るのである。

「エジプトにおける政治経済戦略は、4機関の(権力の)統合体へ資金を流入させるために国家を利用することだった。その資金を通じて、4機関とエジプトの資本家層との間に依存関係が生じ、国の歳出の多くが、政府所有の企業、特に軍との契約に集中して費やされていた」と、同氏は付け加えた。

カルダス氏は、エジプトの現在の財政状況やここ数年の国の歳出についての厳しい状況を具体的に説明した。エジプトの政権当局は自国のニーズや能力をはるかに超える、費用のかかる複数のメガ建設プロジェクトに多額の投資を行ったが、財政危機や非常に多層的な貧困に苦しむ国にとって、このようなプロジェクトは「壮大すぎてぜいたく」なものであったという。

カルダス氏は、エジプトが経済の回復と安定という安全地帯に移行するためには、国の政治指導者は後ろに引いて、より有能な閣僚や専門家が先導的な役割を担って経済面での意思決定を行えるようにする必要があると述べた。

「国家の支払能力は危機的状況にあり、資金調達力は極度の緊張感に置かれつつある」と付け加えた。

カルダス氏はまた、エジプトの友好国に対して、同国の経済回復を弱らせている、誤った財政運営などを許さないよう呼びかけた。

パリ経済学校ファイナンス・フォー・デベロップメント・ラボのリサーチ・ディレクターであるイシャック・ディワン氏は、レバノンやチュニジアなどの経済的に弱い国は、政治が激変するリスクが高いと述べた。

「脆弱な(経済)構造に加わった衝撃が、ちょうど10年前の『アラブの春』を引き起こした」と、ディワン氏は語る。その余波で「どこも修正されずに」、それどころか、経済的に弱い国々は市場で得られたありあまる称賛を利用して、経済回復への明確な道筋を示せないまま、債務危機に深く沈むことになった、と同氏は付け加えた。

ディワン氏によると、レバノンは国外から数十億ドルの資本投資を呼び込んだが、元々の分裂した政治体制により、健全な経済決定を行うことができる、統一政府の形成が妨げられた。

主にレバノン系移民からもたらされた、国外から流入した資本は、生産的に使われることはなく、国家や国民によって消費された。そして最終的に、政治グループが対立する中、戦略的な見通しを立てることができず、その結果、経済を崩壊させてしまったと付け加えた。

チュニジアでも状況は非常に似通っており、レバノンにあるマルコム・H・カー・カーネギー中東センターのフェローであるハムザ・メデブ氏によると、経済よりも政治が優先されるという。

同氏によると、政治的に結束できない、妥協しない連立政権のために、結果、政権当局は必要な財政調整を行うことができなかった。同氏は、チュニジアの政治指導者は、政治的社会的に国で費用を負担する可能性があるため、経済や債務に関して厳しい決断をしなければならないが「やる気がない」と説明した。

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