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砲火の中のスーダン国民、人道的危機に直面

スーダンは 先週末に戦闘が発生する以前から既に深刻な人道問題に直面していた。(AFP)
スーダンは 先週末に戦闘が発生する以前から既に深刻な人道問題に直面していた。(AFP)
スーダンは 先週末に戦闘が発生する以前から既に深刻な人道問題に直面していた。(AFP)
スーダンは 先週末に戦闘が発生する以前から既に深刻な人道問題に直面していた。(AFP)
 24時間停戦の崩壊後に発生したスーダン国軍と準軍事組織の間の戦闘で破壊された車。2023年4月19日、ハルツーム南部。(AFP)
24時間停戦の崩壊後に発生したスーダン国軍と準軍事組織の間の戦闘で破壊された車。2023年4月19日、ハルツーム南部。(AFP)
24時間停戦の崩壊後に発生したスーダン国軍と準軍事組織の間の戦闘のさなか、建物の後ろから立ち上る煙。2023年4月19日、ハルツームの空港地区付近。(AFP)
24時間停戦の崩壊後に発生したスーダン国軍と準軍事組織の間の戦闘のさなか、建物の後ろから立ち上る煙。2023年4月19日、ハルツームの空港地区付近。(AFP)
位置に付く、アブドゥルファッターフ・アル・ブルハン将軍に忠実なスーダン国軍兵士たち。2023年4月20日、ポートスーダン。(AFP)
位置に付く、アブドゥルファッターフ・アル・ブルハン将軍に忠実なスーダン国軍兵士たち。2023年4月20日、ポートスーダン。(AFP)
アブドゥルファッターフ・アル・ブルハン将軍率いるスーダン国軍の後ろに集まる民間人たち。2023年4月20日、紅海に面した都市ポートスーダン。(写真:AFP)
アブドゥルファッターフ・アル・ブルハン将軍率いるスーダン国軍の後ろに集まる民間人たち。2023年4月20日、紅海に面した都市ポートスーダン。(写真:AFP)
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24 Apr 2023 09:04:19 GMT9
24 Apr 2023 09:04:19 GMT9
  • 今回の激しい戦闘が勃発する以前から数百万人の民間人が支援を切実に必要としていた
  • 政治的混乱、経済的苦難、コミュニティー間の暴力、干ばつが既にスーダンを崖っぷちに追いやっていた

ラワン・ラドワン

ジェッダ:既に数十年にわたる紛争と政治的混乱で揺らいでいるスーダンで最近突如として勃発した対立軍隊間の戦闘により、同国の国民の大部分が一層深刻な人道的危機に陥る恐れがある。

緊張状態が数週間続いた末の4月15日、首都ハルツームでアブドゥルファッターフ・アル・ブルハン将軍率いるスーダン国軍と、モハメド・ハムダン・ダガロ将軍(通称へメッティ)率いる「即応支援部隊(RSF)」の間で衝突が発生した。

出回っている動画には、ハルツーム国際空港のエプロンで炎上する旅客機や上空を飛ぶ戦闘機が映っている。建物には多数の弾痕が見られ、砲撃の轟音がハルツームに響き渡っている。

ハルツームに住むアブドゥラー・ムフタールさんはアラブニュースに対し、「戦闘が突然発生したことでハルツームの生活はめちゃくちゃになりました」と話す。彼の家は戦闘開始以来停電しているという。

彼は語る。「ハルツームの70~80%の人々は日雇い労働者なので、賃金が貰えなくなればお金や物を何とかして調達しなければなりません。実際、略奪がたくさん行われているのを見聞きしました。この地区も近隣地区も真っ暗です」

「スーパーマーケットは見捨てられ略奪されています。人々は次から次へと苦難を経験しています。実のところ、市民によるいくつかの取り組みを除けば、ハルツームのどこでも支援は全く提供されていません。戦闘地帯となっており非常に危険だからです」

「私が見る限り、どちら側からも人道支援は提供されていません。国際機関からの支援もありませんが、それは理解できます。空港が航空機の着陸に技術的に適していないとされているのに、ハルツームに来れるわけがありませんから」

対立する二つの軍隊間の十字砲火に巻き込まれているスーダンの数百万人の民間人は、以前から既に人道支援を切実に必要としていた。支援の多くは2021年の軍事クーデター以来停止している。

スーダンは 先週末に戦闘が発生する以前から既に深刻な人道問題に直面していた。(AFP)

数千人がハルツームから脱出し、多くの人が今も戦闘から逃げようとしている。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の20日の発表によると、過去数日間で1万~2万人がスーダンの西部ダルフール地方から隣国チャドに避難した。チャドには既にダルフールからのスーダン難民37万人以上を受け入れている。

スーダンの人道状況は何年も前から不安定な状態にある。数十年にわたる制裁、経済悪化、コミュニティー間暴力、気候変動に伴う異常気象災害、政治的混乱などのせいだ。

人道問題調整事務所(OCHA)の推定では、今回の戦闘が発生する以前から、スーダンの人口4560万人(2021年)のうち2023年時点で約1580万人が人道支援を必要としていた。これは2021年の150万人から増えている。

そのうち約1100万人は、身体的・精神的健康に関連した命に関わる症状により緊急支援を必要としている。

援助関係者らは現在、状況がさらに悪化することを恐れている。

スーダンは 先週末に戦闘が発生する以前から既に深刻な人道問題に直面していた。(AFP)

「レフュージーズ・インターナショナル」のアフリカ・アジア・中東担当責任者であるダニエル・サリヴァン氏はアラブニュースに対し次のように語る。「私が最も懸念するのは、現在の紛争が全面的な内戦に発展し、地域の各主体が関与してさらなる武器を供給し始める可能性です。そうなれば民間人の死者が増えるだけでなく、既に支援を必要としている数百万人の人々が援助にアクセスできなくなるでしょう」

「都市部の戦闘、砲撃、空爆で多数の民間人が死亡しており、人々は食料、水、医療アクセスを断たれています。援助の提供、説明責任への対応、民政への復帰に向けた準備がある程度進んでいたのに、今回の戦闘で前向きな機運が失われてしまいました。おそらく最も懸念されるのは、既に支援を必要としている数百万人が戦闘のせいで援助団体からのサービスを受けられなくなったことです」

支援団体であるレフュージーズ・インターナショナルはスーダンで人道支援活動を行っていない。サリヴァン氏によると、現地や世界各国のパートナー団体が活動停止を余儀なくされたり、場合によっては直接攻撃を受けたりしているため、懸念があるという。

「スーダンにおける戦闘のせいで、食料配布が中断し、援助団体は活動停止を余儀なくされました。さらに数百万人が食料不足の危機に直面する恐れがある」

スーダン保健省は4月19日、16ヶ所の病院が閉鎖されたことで医療が「完全な崩壊」の危機にあると警告した。OCHAによると、ハルツームの病院では略奪や供給停止により医療用品が底をつきつつあるという。

ニュース局「アル・アラビーヤ」のシニアエディターであるアフメド・グラシ氏はアラブニュースに対し次のように語る。「この国の政府は医療や保健などの必要なサービスを人口の1%にしか提供していない。国自体が非常に脆弱な状態にあるので失敗国家とは言えないが、スーダン国民に必要なものを提供していない」

「システムの不足や欠陥は以前からあった。しかし今は、我々はこの後の危機を見込んでいる。つまり、スーダン国民がこの危機をいつ乗り越えられるかをアッラーは知っている。危機が終われば全てが明らかになるだろう。巨大な大惨事が待ち受けて(いるだろう)」

ハルツームで活動するスーダン人医療ボランティアのアスマ・ヤシンさんはアラブニュースに対し、「病院スタッフの大半が病院から避難し、患者は家族のもとへ戻された」ため状況は厳しいと語る。

一方、市街地が安全でないとされているため、ボランティア活動は全て停止している。

スーダンの対立する二人の将軍の軍隊の間で戦闘が続いているせいで水不足が発生している中、ドラム缶に水を入れる人々。2023年4月22日、ハルツーム南部。(AFP)

「インスリンやベントリンなどの命に関わる医薬品、それに人工呼吸器や酸素が不足していると聞いています」

「その場しのぎの診療所がいくつか個人宅に設置され、そういった医薬品を患者に提供しています。国外に住むスーダン人の中には医薬品供給のための資金を送金してくれた人たちもいました」

「しかし、非常に困難な状況です。(ハルツームの)ほとんどの地区が土曜日から電気も水もない状態のままだからです。給水所が攻撃されたせいですが、再稼働させようにも作業員が近づけないのです」

援助団体や非政府組織の努力をよそに、スーダン人ボランティアたちはトラックで水を届けるなど、いくつかの地域に援助を提供しようと最善を尽くしていると、ヤシンさんは指摘する。「しかし、全員が恩恵を受けられるわけではありません」

グラシ氏は、「大惨事だと言えば大げさだと言われることもあるが、スーダン国民のありのままの現実を言っているだけだ」と語る。「負傷者は(治療に)アクセスできなければ死ぬ。(たとえ)金を持っていても治療を受けられないというのが現地のありのままの状況だ」

「この紛争がハルツーム中心部で終わったとしても、医薬品や医療にアクセスできずに亡くなった高齢者が文字通りあまりにも多くいることが明らかになるだろう。他にも戦闘のさなかで負傷した人々や助けを必要としていた人々も間違いなく亡くなることになる。彼らにサービスは提供されないし、サービスへのアクセスも不可能だからだ。これは最も厄介な問題だ」

今週は国際援助物資の配布が中断している。国連世界食糧計画(WFP)が職員3人が戦闘に巻き込まれ死亡したことを受け活動を停止したためだ。

WFPのシンディ・マケイン事務局長は職員の死亡を受けて出した声明の中で、「援助活動従事者は中立であり、標的になることがあってはならない」と述べた。

シンディ・マケイン氏

スーダンはその歴史の大半において国内の対立に苦しんできた。アフリカ史上最も長く続いた内戦のうちの二つや、ダルフール州、南コルドファン州、青ナイル州における紛争などだ。

これらの紛争によりスーダンのインフラは破壊され、農業部門は混乱し、特に栄養や食料安全保障に関して公衆衛生が損なわれた。

4月16日に戦闘が勃発するずっと前から、食料、医薬品、社会開発プロジェクトへのアクセスは限られており、1984年以来毎年、外国からの緊急支援が必要だった。

状況をさらに悪化させているのは、国の中央と周辺部の間での富や権力の配分の大きな格差、日常的な大量移住、ほとんど絶え間のない干ばつなどだ。

スーダンでは1980~1984年、1985~1993年、1996~2001年に、そして直近には昨年に、長期的な干ばつが繰り返し発生した。深刻な食料不足が起こり、食料を提供するだけでなく貧困の軽減にも寄与している部門である農業・畜産業においては生計手段が破壊された。

世界銀行によると、農業はスーダンのGDPの35~40%を生み出しており、人口の約65%が住む農村地域の労働力の70~80%は農業に従事している。

石油収入がないため成長が低迷している一方、国の債務問題は未解決のままだ。既に深刻だった貧困と栄養不良もここにきて悪化している。

2019年の軍事クーデターでオマル・アル・バシール大統領(当時)が打倒された後に成立した暫定政府は、野心的な経済・社会改革を実施し、武装勢力との和平交渉を行った。

2021年、スーダンは国際通貨基金(IMF)から、560億ドル以上の債務救済と、3年間で250億ドルの新たなIMF資金の承認を受けた。

サウジアラビアとUAEも30億ドル相当の援助を提供することに同意した。そのうち5億ドルはスーダン中央銀行に預金され、残りは食料、医薬品、物資の形で配布された。

しかし、有望なスタートはすぐに妨げられた。2021年に軍が再びクーデターを起こしたことで、開発・債務救済プログラムは停止され、政治的行き詰まりに逆戻りとなったのだ。

援助団体は、今回の戦闘がさらなる難民を生み出すことも懸念している。OCHAによると、スーダンは他国から約110万人の難民を受け入れており、アフリカで最も難民受け入れ数の多い国の一つとなっている。

それには80万人以上の南スーダン人と約12万6000人のエリトリア人が含まれる。

しかし、スーダンは約360万人の国内避難民も抱えている。その多くは、20年近くにわたって情勢不安や民族浄化を経験してきたダルフール地方の避難民だ。隣国エジプトには約400万人のスーダン人が住んでいる。

人道援助物資を受け取るために並ぶスーダンの人々。2019年10月9日、南ダルフール州の州都ニャラの国内避難民キャンプ。援助団体の職員がスーダンの戦争から逃れており、人道危機の悪化が懸念されている。(AFPファイル)

ニューヨーク・タイムズの報道によると、既に1万5000人以上がダルフール地方からチャドに避難したという。

十字砲火の中に捕らわれたムフタールさんのようなハルツーム住民にとって、国を逃れることは身の安全を確保するための唯一の選択肢かもしれない。ただそれは、全ての人が実行できるわけではない贅沢であるとともに、誰も進んで冒したくはない危険でもある。

周りに銃声が鳴り響く中、ムフタールさんは語る。「誰もが崖っぷちにいます。ハルツームの人々の状況は限界に達しています」

「脱出に成功した人たちは安全です。最も苦しむのは脱出できない人々、医療を受けられない病気の人々、貧しい人々です」

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