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大統領選決選投票を前にトルコ経済への懸念が広がる

5月14日のトルコ大統領選挙・議会選挙の後、カフェでオケイに興じる人々。2023年5月15日、トルコのアンカラ。(ロイター)
5月14日のトルコ大統領選挙・議会選挙の後、カフェでオケイに興じる人々。2023年5月15日、トルコのアンカラ。(ロイター)
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17 May 2023 09:05:05 GMT9
17 May 2023 09:05:05 GMT9

メネクセ・トキャイ

アンカラ:トルコの大統領選挙が現職のレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領と野党連合の統一候補ケマル・クルチダルオール氏との5月28日の決選投票に進むことが決まる中、引き続き国内外の主な関心事となっているのは同国の弱い経済だ。

過去2年間の驚異的なインフレ(4月は約44%)、そして食料価格の高騰によって、トルコの生活費危機は相当に高まっている。

トルコのドル建てソブリン債や株式も急落しており、国内外の主要な経済プレーヤーは今後の見通しに懸念と不安を抱いている。

銀行預金総額のうち約40%が外国為替および金(きん)勘定で保有されており、1年間の対外貿易赤字は過去最高の1200億ドルに達している。

エルドアン大統領の経済政策アジェンダは、経済危機に対応するためにいくつかの手段を用いる非正統的な政策によって現状を維持することに基づいたものになると見る専門家もいる。

ただ、これらの専門家は、トルコの経済状況は持続不可能であり再考が必要であるとも警告している。

決選投票でエルドアン大統領が勝利する可能性が高いということは、現在の経済政策が継続されるということである。金融市場の不安定性が高まった場合に、市場の信頼を回復するために経済の要職に新たな役人を任命するなどの部分的な調整措置が取られるのみとみられる。

エルドアン大統領の選挙運動に元財務相のメフメト・シムシェク氏が参加していたことから、同大統領が勝利した場合に正統的な経済政策に回帰する可能性を疑問視する声が上がった。

金利引き上げを行わない戦略の一環として、トルコの中央銀行総裁は近年繰り返し交代させられている。

元公務員で経済学者のクルチダルオール氏が勝利すれば、外国からの投資流入で経済が活性化されることが期待される。

しかしそれを実現するためには、74歳の同氏は2週間で味方陣営を広げ、より多くの有権者を取り込むとともに改めて支持基盤に投票を促さなければならない。

ブルーベイ・アセット・マネジメントでエコノミスト兼ストラテジストを務めるティモシー・アッシュ氏はアラブニュースに対し、トルコ中央銀行(CBRT)は選挙まで、おそらく1ドル20リラを下回る水準でリラを安定的に維持するだろうと指摘する。

同氏は次のように語る。「外国人の売りによって信用市場は弱く脆弱になるだろう。選挙後にリラは大幅に下落せざるを得ないと思う。それに対するCBRTの反応を我々は見ることになる。すなわち政策金利を引き上げるかどうかだ」

エルドアン大統領が勝利して現在の経済政策を継続した場合、ハードカレンシーの需要が急増し真の通貨ショックが起こることで、外部資金の代替調達先が必要になることが予想される。

ユーラシア・グループの欧州担当ディレクターであるエムレ・ペケル氏は、エルドアン大統領のチームは決選投票で再選を確保するまではトルコ市場の安定性を支えるだろうと考える。 

同氏はアラブニュースに対し次のように語る。「再選されて3期目に入ったら、エルドアン大統領は現在の低金利政策の枠組みを維持する可能性が高い。しかし、長年のリラ防衛策を解除し、ある程度の通貨安を容認するかもしない」

エルドアン大統領率いる与党「公正発展党」および「人民同盟」は14日の議会選挙で圧倒的過半数を確保したため、現在の経済政策を継続するものとみられる。

これによりインフレ圧力が高まり経済の不均衡が悪化する可能性が高いとペケル氏は言う。エルドアン大統領は輸出主導の成長モデルの確立を目指しているからだ。

同氏は次のように語る。「しかし、大規模なショックのリスクが具体化しない限り、正統的な政策への回帰はなさそうだ。議会には経済政策への発言権がなく、大統領府が完全にコントロールすることになるだろう」

低金利を維持すればリラがさらに下落する可能性があると専門家は警告している。一方で、インフレ抑制のための実効性のある利上げを行えば経済不況も起こるだろう。

アッシュ氏は、CBRTが金利面での対応を明確に示すまで外国人投資家はトルコへのエクスポージャーを減らし続けるだろうと考える。

同氏は続ける。「エルドアン大統領が選挙後に政策金利の引き上げを容認するとは考えにくい。容赦のない市場の急落によって強いられれば別だが。彼は過去に金利に関する自身の見解を明らかにしている。彼は利上げによってインフレを抑制できるとは考えていないため、政策金利を非常に低い水準に維持しようとするだろう」 

イスタンブールのディナミク・ヤティリムでチーフエコノミストを務めるエンヴェル・エルカン氏はアラブニュースに対し、決選投票までの2週間の不透明な見通しがリラへの圧力になるかもしれないと指摘する。

同氏は次のように語る。「これまでの政策の結果はインフレという形になり、家計への負担がますます高まっている。低金利によってインフレと為替をコントロールすることで経済は非常に大きな犠牲を強いられており、さらなるインフレを作り出す経済支援・インセンティブメカニズムや債務連鎖によってのみ成長がもたらされている」

財務省が発表した4月の予算データによると、中央政府予算の赤字は1325億リラに達し、前年同期の502億リラから増加している。

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