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イスラエルによるガジャール併合の企てが引き起こす、レバノン国境での緊張

2023年7月6日、イスラエルとレバノンの国境近くに位置するキリヤット・シュモナ郊外にて、イスラエル軍の自走砲車両の近くを走る兵士。(AFP)
2023年7月6日、イスラエルとレバノンの国境近くに位置するキリヤット・シュモナ郊外にて、イスラエル軍の自走砲車両の近くを走る兵士。(AFP)
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07 Jul 2023 12:07:23 GMT9
07 Jul 2023 12:07:23 GMT9
  • イスラエル軍は当初、レバノンからロケット弾が発射された可能性を否定していたが、後に砲弾がレバノンから発射されていたことが確認された
  • イスラエルはこれに対抗して、ロケット弾が発射されたレバノン領土内のエリアであるとイスラエルが主張する、クファルショウバとクファルハマームの丘陵に約20発の砲弾を発射した

ナジャ・フーサリ

ベイルート:イスラエルによるガジャール併合の企てにより、レバノン南部の国境に沿って緊張状態が高まっている。

ガジャール、シェバア農場、クファルショウバの占領地域で数時間にわたり、極度の緊張状態と激しい砲撃が続いたが、6日午後、この地域に不安ながらも静けさが戻った。

国連レバノン暫定軍の平和維持部隊は速やかにすべての当事者に対し、自制を呼びかけ、事態をエスカレートさせる行動を回避するよう求めた。

退役軍司令官のアブドル・ラフマン・チェハイトリ氏はアラブニュースに対し、事態のエスカレーションは驚くに値しないと語り、さらなるエスカレーションの可能性を警告した。同氏は以前、海上国境の画定でイスラエルと交渉するレバノン代表団を率いていた人物で、2007年から2013年にかけて占領下のガジャールの件で対応していた。

同氏は、イスラエルが(ガジャール占領を)既成事実として押し付けようとしており、レバノン側からの砲撃は、イスラエルがガジャール併合を目論見、最近同周辺で行っているフェンスでの囲い込みに対抗する反応である可能性が高いと述べた。

ガジャール付近で爆発音が聞こえると、イスラエル軍、国連レバノン暫定軍(UNIFIL)、レバノン軍に混乱が生じた。

レバノン側でロケット発射機の場所を特定する調査が行われた。

UNIFIL関係者は当初、古い鉱山の作業場で爆発がおきたのが原因と推測した。

また、イスラエル軍は当初、レバノンからロケット弾が発射された可能性を否定していたが、捜索後、砲弾がレバノンから発射されていたことを確認した。

イスラエル軍の説明によると、短距離ロケット発射機による砲撃だったために検知できなかったという。

イスラエルはこれに対抗して、レバノン領土内のロケット発射エリアであるとイスラエルが主張する、クファルショウバとクファルハマームの丘陵に約20発の砲弾を発射した。

UNIFILの報告によると、UNIFILの平和維持部隊が午前中にマジディエ近郊で爆発音を聞き、捜索のために部隊を派遣した。当時、爆発の発生源や原因は確認できなかったが、正午ごろ、イスラエルからの砲弾がレバノンのクファルショウバ地域に命中した。

その後、UNIFILの任務責任者兼軍司令官であるステファノ・デルコル少将が、レバノンとイスラエルの関係当局に連絡した。

事件は微妙な時期に、しかも今週始めからすでに緊張が高まっていた地域で発生した。この緊張に先立ち、ガジャール北部でのイスラエル軍の行動を非難するヒズボラの声明が発表された。

ちなみに、この地域は国連によってレバノン領土の一部として認められている。

ヒズボラは、「この占領地の統合を阻止し、攻撃的な行動を止め、我々の土地のこの地域を解放し、国家に返還するために行動することは、レバノン国家、とりわけレバノンの政府と国民の責任である」と強調した。

チェハイトリ氏は、イスラエルがガジャールをフェンスで囲い込むのは問題を引き起こすことが目的であると述べた。

そして、統一した国家や統一した意思決定が存在しないレバノンの現状をイスラエルが利用していると付け加えた。

チェハイトリ氏は、「イスラエルはレバノンの混乱状態に乗じて、交戦規定に問題定義し、特に来月末に予定されているUNIFIL任務の更新で新たな機会を増やそうとしている」と続けた。

チェハイトリ氏は、クファルショウバとその周辺における最近あった土地の収奪(1カ月継続している)が、このイスラエルの構想に当てはまると指摘し、「イスラエルは、新しい現実を押し付けるために、土地の状況を変えようとしている」と付け加えた。

イスラエルは1967年、シリアのガジャール村を占領。ガジャール村のシリア人住民はイスラエルの国籍を持ち、占領はレバノン側の北部にも広がった。この地域にはそれまで人は住んでおらず、面積の3分の2がレバノンの領土である。

UNIFILの任務を更新する期間、国連安全保障理事会は各声明で、イスラエルがガジャールのレバノン側から撤退するよう求めた。

チェハイトリ氏は次のように述べた。「イスラエルは2011年に複数回の機会において、ガジャールのレバノン側から撤退すると提案したが、その一方でガジャールからレバノン国家の存在感を消し去った状態を維持し、ガジャールの住民はシリア人であるにもかかわらず、イスラエル国籍を持つと主張している」

「イスラエルはイスラエルの安全保障の影響下でガジャールを支配したいと考えているが、レバノンはこの提案を完全に拒否している」

2006年のイスラエルによるレバノン侵攻後に採択された国連安保理決議第1701号では、イスラエルによるガジャール北部の占領継続はレバノンの主権侵害に当たるとして、イスラエルに対しガジャール北部からの撤退を求めた。

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