Since 1975
日本語で読むアラビアのニュース
  • facebook
  • twitter

バイデン大統領がガザの殺戮を止めなければ、地域戦争が勃発するだろう

2024年2月4日、イスラエル南部から見た、ガザ地区を走行するイスラエル軍の車両。(AP)
2024年2月4日、イスラエル南部から見た、ガザ地区を走行するイスラエル軍の車両。(AP)
Short Url:
05 Feb 2024 10:02:59 GMT9
05 Feb 2024 10:02:59 GMT9

イランの支援を受けているイラクの民兵組織ハシュド・アル・シャアビに対する最近のミサイル攻撃は、米国にとってここ数年で最大級の軍事介入だったかもしれない。しかしそれは、イエメンのフーシ派との激しさを増す軍事衝突を含む、多くの国家にまたがる急速にエスカレートする紛争におけるひとつの作戦に過ぎない。

イスラエルは同時に、シリアでイスラム革命防衛隊(IRGC)の将校を次々と標的として殺害している。イランは常に、このような暗殺は「看過されることはない」と憤慨している。もしそれが真実なら、2020年のカセム・ソレイマニ氏の殺害に対する報復はまだ待っていることになる。

米国の攻撃は、ヨルダン、シリア、イラクの戦略的に重要な交差点に位置する軍事基地で3人の米兵を殺害したドローン攻撃に対する報復だった。米軍はそこで、ダーイシュが地域間ネットワークを再構築するのを阻止する一方、イランが支援する準軍事組織が地中海までの影響力圏を確立するのを妨害してきた。

したがって、こうした代理勢力がこの場所を絶え間なく攻撃し、10月7日以降だけでも160回以上もの攻撃で米軍を完全に撤退させようと試みるのは驚くべきことではない。イラクの報道官は、米国がイラクの領土を「勢力争いの舞台」に変えたと非難し、同国が長年にわたって悪用されてきたことを完璧に表現している。

イランの支援を受けた武装勢力による統括組織ハシュド・アル・シャアビは、ダーイシュと戦うために2014年に結成された。しかし、ダーイシュが敗北して以来、これらの組織の規模は約24万人に倍増し、それに見合った予算がイラク国家から惜しみなく提供されている。この勢力の「抵抗枢軸」としての主張は、イラクとシリアだけでなく、地域全体を支配したいという野望を浮き彫りにしている。フーシ派と同様、ハシュドの構成派閥の多くは、コッズ部隊およびレバノンのヒズボラによる指導の下に設立され、武装し、訓練を受けている。

これらの民兵はイランの要請を受けて活動しているが、まるで野生の猫のように制御不能な存在である。彼らはコッズ部隊の司令官イスマイル・カーニ氏に振り回されながら、それぞれのマフィアの縄張りを支配しようと激しい対立を繰り広げている。ヒズボラ・アル・ヌジャバやカタイブ・ヒズボラといったイラクの派閥は、誰が最も臆することなく外国勢力を攻撃できるかと、互いに危険なまでに挑発し合っている。

しかし、米国の対応が本格化する兆しが見え始めると、カタイブ・ヒズボラの指導者アフマド・アル・ハムダウィ氏は、同組織はミサイル攻撃を中止すると発表した。同組織はそのシューラ(諮問)評議会にコッズ部隊の人員を有しているにもかかわらず、アル・ハムダウィ氏はイランによる攻撃の調整を激しく否定した。一方で、ヒズボラ・アル・ヌジャバはライバルの「臆病さ」をあざ笑い、攻撃を続けることを宣言した。

言うまでもなく、この止まることのない、時々刻々とエスカレートする状況から抜け出す唯一の方法は、ガザ戦争を終わらせることだ。

バリア・アラマディン

カタイブ・ヒズボラが「イラク政府に恥をかかせないために」攻撃を停止したという主張は、同組織がイラクの主権を弱体化させることでキャリアを築いてきたことを考えれば、失笑ものだ。また、イラク政府に議席を持つ準軍事組織が、イラクが大きく依存する超大国に対して攻撃を行うことから生み出される緊張を認めるものでもあった。

かつてアヤトラ・ホメイニ師は、イスラム共和国の維持は「あらゆる義務に勝る」義務であると語った。CIAのウィリアム・バーンズ長官が適切に指摘したように、この政権は、たとえその過程で準軍事組織と地域全体を焼き尽くすことになったとしても、自己保存という大義のためには「最後の地域の代理勢力に至るまで、戦う用意がある」のだ。

特にレバノンは、何十万人もの人々が避難を強いられ、殺される可能性のある地域全体の戦争に巻き込まれることを恐れている。最悪のシナリオが回避できたとしても、この紛争はすでにこの破綻し、危機に瀕した国家を慢性的に不安定化させている。2006年のレバノン侵攻でばらまかれた不発クラスター爆弾の影響を受ける南部地域の農業をさらに無力化させる、白リン弾の広範な使用も確認されている。

ガザ紛争は、ジョー・バイデン米大統領を、重要なスイング選挙区である若く多民族な親パレスチナ層から深く不人気にした。それゆえ、ヨルダン川西岸地区のパレスチナ人に対する暴力のエスカレーションに加担したとされる合計4人のイスラエル入植者に対するばかげた制裁を発表したのだ。

イラクにおける米軍への攻撃と米国の対応について、米国家安全保障会議のジョン・カービー報道官は次のように述べている。「ここでの目標は、これらの攻撃をやめさせることだ。我々はイランとの戦争を望んでいるのではない」。しかし、イランが決定的な責任を負わなければ、地域全体の攻撃は止まらないだろう。

言うまでもなく、この止まることのない、時々刻々とエスカレートする状況から抜け出す唯一の方法は、ガザ戦争を終わらせることだ。イスラエルはハマスを壊滅させることに明らかに失敗しており、ガザでの作戦は現在、何万人ものパレスチナ人の命を代償にしてベンヤミン・ネタニヤフ首相を権力に留めるためだけに設計されているように見える――そして、これは容易に何か、はるかに悪い事態を引き起こす可能性がある。

誰が見ても、米国はイスラエルの二国家解決の認識と引き換えに、包括的なアラブとイスラエルの和解を達成しようと熱心なハイレベル外交を展開している。これには、ハマスが人質を解放することも含まれる。そのような壮大な計画の達成は確かに変革的であろうが、それはネタニヤフ氏が流血を止め、パレスチナ国家への敵意を放棄することを要求する。それはまた、イランがその代理勢力を妨害の役割で展開させないことにも依存している。

したがって、バイデン大統領は、戦争を仕掛けることがイランに破滅をもたらすだけであることを同国の指導者たちに示す決定的な行動を取るだけでなく、これまで米国が一度もしたことのない方法でイスラエルを自分の意志に従わせなければならない。米国に手段がないわけではない。イスラエルは、米国の軍事援助、国連安全保障理事会における米国の支援、そして米国が世界的な支援を動員する能力に依存している。また、バイデン大統領にとって、政治的に死んだネタニヤフ氏と仲違いしても、失うものはあまりない。

逆に、紛争が悪化し、数十万人の兵士と広大なミサイル兵器庫を持つイランの代理勢力の民兵組織が戦争を開始すると決定した場合、米国とその同盟国はイスラエルが完全に破壊されるのを防ぐために、この混乱に即座に巻き込まれるだろう。

人類のためとは言わないまでも、バイデン氏は選挙イヤーにこの破滅的なシナリオを避けたいと願っているのは確かだ。彼は、何かをしている、という錯覚を作り出すためのばかげた折衷案を放棄し、ネタニヤフ氏に直ちにこの無意味で、ジェノサイド的な戦争を停止させるため、手元にあるすべてのカードを使う必要がある。

・バリア・アラムディン氏は受賞歴のあるジャーナリストで、中東および英国のニュースキャスターである。彼女は『メディア・サービス・シンジケート』の編集者であり、多くの国家元首のインタビューを行ってきた。

topics
特に人気
オススメ

return to top