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アラムコIPO 世界で最も収益性の高い企業の目論見書

2019年11月11日にサウジアラビアの首都リヤドでアラムコの広告を表示する掲示板(AFP)
2019年11月11日にサウジアラビアの首都リヤドでアラムコの広告を表示する掲示板(AFP)
12 Nov 2019 06:11:10 GMT9

投資家たちはこの瞬間を3年間待ち望んできた。サウジアラムコの新規株式公開(IPO)の目論見書が11月10日に発表され、その取引額は史上最大のIPOとなることが予想されている。

2016年、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、サウジアラムコの証券取引所への上場を望んでいると発表した。アラムコはサウジアラビア王国の国有石油会社であり重要資産である。そして世界最大の石油生産会社であり、世界最大の純利益を上げている企業であり、非常に経営状態の良い組織でもある。

この目論見書の公表までの道のりは長かった。株式を上場する場所、評価とタイミングの問題に関する疑問があり、ゴールドマン・サックス、JPモルガン、シティグループ、HSBCを含む多数のファイナンシャル・アドバイザーがIPOに取り組んできた。

今年の初めに、アラムコはサウジアラビアの政府系の公共投資ファンドである公共投資基金(PIF)から石油化学巨大企業であるサウジ基礎産業公社(SABIC)の70%も購入した。またアラムコは、同国の前のエネルギー相からPIFの取締役ヤシル ・アルルマヤン氏へと会長を変えた。

規制当局でもあるエネルギー相が会社の取締役会を率いた場合、投資家たちはこれを利益相反とみなす可能性があるため、この動きは理にかなっている。 アルルマヤン氏は元投資銀行家であるため、投資家が何を求めているかを助言しながら株主(政府)と銀行との間に重要なつながりを生み出すことができる。 

9月中旬にはアブカイクとフライスの石油施設へのドローンとミサイルの攻撃もあり、一度に同社の生産量を50%も引き下げた。アラムコは予定より早く9月末までに生産を回復することができ、産出量は今月末までに完全に復元される見込みだ。

目論見書が公開されたが、一部のデータポイントが欠落している。株式の0.5%が個人投資家向けだということは分かっているが、機関に割り当てられた株式数に関する情報はまだ公開されていない。

同社は全体で株式の2〜3%を上場させると予測されている。評価は、明確化が必要な別のポイントだ。銀行家の予想する評価額の範囲は1.2〜2.3兆ドルで、これはエクソンの時価総額の3000億ドル、シェブロンの2290億ドルと比較すると非常に大きな評価額となる。

評価は機関投資家向けのブックビルディングプロセスが終了する12月4日以降に発表される予定だ。投資家は配当率を理解したいため、評価が重要になる。アラムコは750億ドルの現金配当を支払うと発表した。エクソンの配当利回りは5%弱で、BPは6.3%である。

最初のIPOは、サウジアラビア証券取引所(タダウル)でのみ行われる。サウジアラビアの個人には、たとえささいであろうとも、国の重要資産の一部を所有する機会が与えられる必要があるため、これは再び理にかなっている。サウジアラムコは6ヶ月間、さらなる株式を発行することを禁止される。

ニューヨーク、ロンドン、香港、東京など、国際的に上場しておくことが賢明かもしれない。前者の2つの市場は特にそうだ。これらの市場は厚みがあり流動的であるため、会社の規模を考えると利点となる(ニューヨークでは、差し迫った「石油生産輸出カルテル禁止(NOPEC)法案」の法制化と9/11訴訟の可能性に関する法的欠点があるかもしれない)。

この目論見書では、リスクについてかなりオープンに検討されていた。IHS分析が用いられ、今後の気候変動の懸念により排出規制が強化されることを反映して今後20年以内に石油需要がピークに達する可能性があること、そして地政学的リスクに言及している。

後者は9月に明らかになり、同社は生産を迅速に回復し、顧客に中断なく供給するという点で、こういったリスクに対処できることも同様に明白となった。サウジアラビアは紛争が特徴である地理的地域に位置しているため、一部の投資家は依然として慎重な姿勢を取っている。プラス面としては、同国の地質のおかげで、アラムコは非常に低コストで生産することができるということだ。

他のあらゆる取引と同様に、投資家はリターンに対するリスクを検討する必要がある。サウジアラムコは、最も収益性の高い企業であり有能な運用を行っている。気候変動とエネルギーシフトは、このセクター全体の位置付けに影響を及ぼす。業界全体では、原油価格の下落が問題となっている。

その上、OPEC(石油輸出国機構)加盟国は生産量の削減による影響を受けており、これらの削減は価格を支えながら生産量に影響を与えた。アラムコは低コストで生産でき、他の大半よりも価格ショックに耐えることができる。

すべての投資にはリスクが生じるが、運用能力と収益性の面においてこれほど強固な基盤を持っているものはほとんどない。今年の4月、IPOに先立ち発行された債券への申し込みが募集枠を大幅に上回ったことから判断すると、今回のIPOへの投資家の関心が高いことが分かる。

コーネリア・メイヤーは、ビジネスコンサルタント、マクロ経済学者、エネルギーの専門家である。

ツイッター: @MeyerResources

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