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イランの方向転換に求められる国際的結束

米国ニューヨーク州ニューヨークでロイターとのインタビューのために座るイランのモハンマド・ジャヴァード・ザリーフ外務大臣、 2919年4月24日(ロイター)
米国ニューヨーク州ニューヨークでロイターとのインタビューのために座るイランのモハンマド・ジャヴァード・ザリーフ外務大臣、 2919年4月24日(ロイター)
28 Apr 2019 01:04:12 GMT9

イランがなぜあのように振る舞うのか、しばしば人々から困惑を示される。テロ行為および交戦による混乱、核爆弾を作ろうという過去の試み、自国民のあしらい方、などと言ったことだ。嫌われもの扱いの他の国々と比較してさえ、テヘランの行動は別格である。

先週、ナザニン・ザガリ=ラトクリフ氏との捕虜交換をイランの外務大臣が提示(これは即座に撤回された)したことで、その受け入れ難い行為を新たに思い出すこととなった。彼女は英国とイランの二重国籍を有する母親だ。この犯罪政権が、政治的影響力を得るためだけに定期的に外国人を収監しているという理由で、3年間拘留されている。

イランの異様な世界観をさらに強調するように、イスラム革命防衛隊(IRGC)新司令官へと就任したホセイン・サラミ氏は宣言した。「イスラム革命防衛隊のクドス部隊は、地中海東岸におけるアメリカの支配を終わらせるために野山を越え、紅海へ到達し、イスラムの地をジハードの地へと変えてきた我々はこの手腕を、地域から世界へと拡大しなければならない。敵に安全の地を残してはならないのだ。」

この声明には、イラン拡張主義の裏にある野心が込められている。近隣国への単に無意味な干渉ではなく、その準軍事的資産を強引に悪用することで、既存の国際秩序を揺るがそうとするものだ。正常な国家は、その国民の幸せによって成功を測る。しかし1979年以来、イスラム政権は文明世界への対立という誇大妄想のために、自国の人々の福祉を犠牲にしてきた。

イランが準軍事的戦略を好むのは、それが比較的安価であるためだ。テヘランは貧困化したアフガニスタン人とパキスタン人を、軍の動員に必要な費用のほんのわずかな割合でシリア前線へと送った。テヘランのイラク代理人たちは州から給与を受け取っている。そしてヒズボラが比較的潤沢なイラン系資金を享受しているとはいえ、これを補完しているのは複雑に組み合わさった様々な犯罪活動だ。それでもなお、複数の州にまたがるこれら準軍事力の絶大なスケールのために、テヘラン州予算の高い割合が軍事支出となっている。だがIRGCや政権主要人物らの蓄財は計り知れず、アーヤトッラー・アリー・ハーメネイー氏が個人で管理する資産は1千から2千億ドルに上る。

準軍事組織による代理は、イスラム共和国が望むどんな場所でも展開することのできる、汎用ツールだ。最近イランで起こった洪水では、当局は局所的不安を抑止するために何百というイラク民兵軍を投入したが、これは市民の怒りを招いた。彼らにとってこの介入は、洪水さえしのぐ迷惑と見なされたのだ。

西欧ジャーナリズムは、トランプ陣営の政策が戦争への道を固めつつあると警告している。視野の狭い孤立主義者であるトランプ氏は、明らかにこのシナリオを求めていない。だがジョン・ボルトン氏のような老獪なタカは、異なる考えを持っているかもしれない。徐々に大きくなる言葉と行動が、同様にイランを対立の道へと追い立てている。イエメンやシリアのように破綻した国々の住民を脅かすのに、テヘランはその国境を超えた準軍事能力を使うことができるかもしれない。しかしイランは、アメリカとの一騎打ちには5分ともたないだろう。そしてイスラエルとの直接衝突もおそらく、大してましな結果には終わらない。

確かに、これら多国籍の民兵軍は結局のところ、イラン本土をテヘランの敵が直接脅かした場合に立ち向かう鉄の盾として用意されている。だがイランの準軍事的手法は、そのような戦いが広範な中東各地で繰り広げられるだろうことを意味する。それにより計り知れない死傷者と破壊が生じるだろう。イランの指導者たちは世界を股にかける誇大妄想症を患っているかもしれないが、彼らが実際に成功しているのは、内戦によってすでに崩壊していた国家の支配のみだ。

だが、アメリカの戦略はそれ以上に現実的なものだろうか?マイク・ポンペオ氏とボルトン氏が要求するのは完全降伏に他ならない。イランの石油輸出を「ゼロ」へと減らす野心には限られた可能性があるのみだ。ヨーロッパは制裁措置からイランを逃すことのできる構造の立案に忙しく、中国やインドのような主要国はイラン石油の輸入を断固として継続するように見受けられる。石油輸出は、ドナルド・トランプ氏の現実否定と、そのような戦略が価格に鋭い上昇影響を及ぼすことはないだろうことを示唆している。イランのモハンマド・ジャヴァード・ザリーフ外務大臣は先週、「我々は制裁措置潰しの博士号を持っている。」と豪語した。ザリーフ氏は、自己の発言を理解している。イランには違法で石油を密輸するための豊富な経験があり、実入りの多い危険を冒すことを厭わない、米国への露出が最小限の多数のアジア系銀行や貿易業者が存在する。イラク、シリア、そしてレバノンにあるテヘランの資産がもたらす、迂回措置については言うまでもない。

地域戦争と本格的政権交代に不足する(実のところボルトン氏とポンペイ氏が求めるのはこれかもしれない)米国のゴールは、交渉の場へ戻るようテヘランを強要することだ。しかし現在、その可能性はわずかだ。テヘランのアーヤトッラーたちは、対立を糧にする。そして何らかの方針変更を検討する前に、長期にわたり苦しみ続けている国民へはるかに重い経済的苦痛を負わせることも厭わない。彼らは特に、2020年後の新しい米国指導者としてのトランプ氏の形勢を見守ろうとしているのだ。

イランに対する国際的圧力の成功勝負(例えば2006年から2009年の間に課された国連による制裁だ)には多国間の承認を要し、脅威だけでなくインセンティブも使われた。一方的な米国の措置が完全に効果を発揮することはそもそも難しいのだ。トランプ氏にとって、空虚な見せかけ行為と強気な発言自体に価値があるとすればなおさらだ。何らかの戦略的指針と具体的な大詰めがない限り、現在の施策はこれまで以上の好戦的反応へとテヘランを挑発するだけだ。イランの代理人らはすでに、アメリカ軍の退却に応じてシリア東部への侵攻を強引に進めている。戦略が効果を発揮しているというホワイハウスの発表をあざ笑うかのようだ。

モスクワと北京の両方が、アメリカ側の苦痛の種としてイランを利用することを楽しんでいる。だが、中央アジアと中東で拡大し続けるテヘランの優位性は、この2大強国の利益を妨害するものだ。イランに方向転換させる希望がどこかに残っているならば、それは米国がその一方的な衝動を捨て、世界の強国を引き込んで計画への協力を要請する道だ。一方で主要な国々は、イランの武力侵略が自国の戦略的利益を脅かしていると認識しなければならない。

国際的な結束がない限り、テヘランは外国武装勢力への支援が自らを強化すると信じ、それを続けるだろう。対立から強さを得ていると信じるゆえに、制裁も、疲弊して怒る国民も進んで受け入れるだろう。方針の転換を実際に強制されない限り、アーヤトッラーたちは彼らの勝利を疑うことなく進み続けるのだ。

バリア・アラマディンは中東および英国で活躍する受賞歴のあるジャーナリスト。Media Services Syndicateの編集者であり、数多くの国家元首インタビュー実績を持つ。

https://www.arabnews.com/node/1489276

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