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COP28は世界の注目を集められるか?

11月29日、ドバイでのCOP28国連気候サミット会場のホールに集まる参加者たち。協議の中心は、温室効果ガス排出削減に関する世界の進捗状況の把握となる。(AFP)
11月29日、ドバイでのCOP28国連気候サミット会場のホールに集まる参加者たち。協議の中心は、温室効果ガス排出削減に関する世界の進捗状況の把握となる。(AFP)
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30 Nov 2023 09:11:28 GMT9
30 Nov 2023 09:11:28 GMT9
  • 世界の関心が地域紛争に集中するなかで会議は開催される

レベッカ・アン・プロクター

リヤド:今週末、COP28気候サミットのために約200人の首脳や外交官がドバイに集まる。このサミットは、ガザでのイスラエルとハマスの戦争に世界の関心が集中するなかで開催される。

停戦が数日間延長されたものの、10月7日に始まった戦争とウクライナ紛争の継続によって激化した世界的な騒ぎと混乱が、気候変動に対処する極めて重要な必要性を覆い隠してしまうのではないかと懸念されている。

COP28は11月30日から2週間にわたって開催される。国連COP(「Conference of the Parties(締約国会議)」の略称で、1992年の国連の気候変動の枠組みに合意した国々を指す)は毎年開催されており、今年で28回目を迎える。

「アラブ首長国連邦は民間人の保護を呼びかけ、当面の優先事項は暴力を終わらせることであると強調した」とCOP28の広報担当者はアラブニュースに対して述べた。

「UNFCCC(気候変動に関する国際連合枠組条約)と連携し、COP28が気候変動との世界的な闘いにおいて具体的な成果を出すことに焦点を当てることを引き続き確信している。COP28は、出席者が気候変動対策という喫緊の問題と、それに効果的に対処するために必要な協力的な取り組みに集中できる環境を提供する」

ガザ紛争が世界経済に与える影響は今のところ軽微だが、IMFが言うように、戦争が長期化すれば、経済の見通しに「新たな暗雲」が立ち込める可能性がある。

戦争の長期化は、原油価格や世界経済成長に直接的な影響を与え、気候関連の課題に取り組む発展途上国を支援する富裕国の能力や意欲に悪影響を及ぼすことになる。これには、イラクなどの中東諸国やアフリカ諸国などが含まれる。

チャールズ3世国王、アントニオ・グテーレス国連事務総長、アラブ首長国連邦大統領のシェイク・ムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン殿下などの著名なゲストが出席する予定だ。当初予定されていたフランシスコ法王の出席は、ローマ法王としては初の参加となる予定であったが、体調不良のため直前に見送りとなった。

しかしながら、他の重要な世界的要人も出席を見送った。アメリカのジョー・バイデン大統領は、COP28開幕に合わせて12月1日と2日に予定されている世界首脳会議を欠席すると発表した。バイデン大統領は過去2年間、この世界会議に参加してきたが、アメリカ政府は今回欠席の理由を説明しなかった。

世界気候アクションは、「世界の指導者たちが、気候変動関連の重要な決定を具体的な行動や信頼できる計画へと実施・転換し、前回の締約国会議からの野心を高め続け、気候変動問題に対するハイレベルのコミットメントを維持することの重要性を意味する」と国連はウェブサイトで述べている。

アメリカは世界最大の温室効果ガス排出国のひとつであり、人為的な気候変動の主要原因国として、その出席は極めて重要である。アメリカ政府はCOP28に、ジョン・ケリー特使、アリ・ザイディ国家気候アドバイザー、ジョン・ポデスタ・クリーンエネルギーアドバイザーを含む気候対策チームを派遣する。

バイデン大統領はまた、年内にアフリカを訪問すると公約していたが、それも実現しそうにない。ウクライナ紛争およびガザにおけるイスラエルとハマスの紛争は、国内の課題とともに、バイデン大統領に重くのしかかっている。

バイデン大統領は気候変動について 「人類にとっての究極の脅威 」と言及している。 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相もCOP28に出席しない。

国連の気候変動交渉では、すべての参加国の全会一致が必要となり、コンセンサスを得るのは非常に難しい。

世界第5位の産油国であるアラブ首長国連邦が主催するドバイでの今回のサミットでは、緊張が生じる可能性が高いと国家アナリストは分析している。

アラブ首長国連邦はイスラエルとの国交正常化の先頭に立ち、ガザでは野戦病院を通じて人道支援を行い、パレスチナ人犠牲者を同王国内の病院で治療してきた。

「ここ数年の最大の懸念は、COVID-19、ウクライナ戦争、そして今回のガザ戦争に至る一連の世界的出来事であり、これらはいずれも気候変動への取り組みに影を落とし、注意をそらす可能性を秘めている。 これらすべての他の危機が起きているとしても、気候変動は明らかに重要事項である」と世界資源研究所の国際気候ディレクター、デヴィッド・ワスコフ氏はアラブニュースに語った。

このような騒動にもかかわらず、ワスコフ氏は、ここ数週間の間に、「気候危機に対処するための協力強化に関する」米中共同声明によって、地平線上にわずかな光が見えたと語った。

この声明は、バイデン大統領と習近平国家主席が、アジア太平洋経済協力フォーラム直前に行ったサイドラインの会談で発表された。

「これは、両者が気候変動をただ認知しているだけにとどまらず、いかに重要な課題とみなしているかを明確に示した」とワスコフ氏は述べた。

なぜ重要なのか?

中国とアメリカは世界の二大汚染国である。中国は世界最大の二酸化炭素排出国で、年間127億トンを排出している。アメリカは世界第2位の二酸化炭素排出国で、現在年間59億トンを排出している。

両国は世界のグリーンテクノロジー大国でもある。もし両国が温室効果ガスの排出を抑制するための合意に達することができれば、気候変動、ひいては地球温暖化に対処する世界の能力に向けて、大きなインパクトを与える一歩となるだろう。

「気候変動問題は、地政学的に依然として重要な意味をもっている」とワスコフ氏は付け加えた。「COP28に多くの首脳が出席していることは、各国の気候問題に対する大きな関心を物語っている」

ワスコフ氏は、他の人々と同様、世界の紛争が気候という重要な課題に影を落としていることを認めながらも、このイベントおよび出席者が、「気候問題に正当な優先順位が与えられるよう、雑音を遮断することができる 」と信じている。

エジプトのシャルム・エル・シェイクで開催された昨年のCOPをめぐる緊張が収束した後も、気候変動の緊急課題に対処するためにCOPがどれだけ効果を発揮できるかについて、特に世界で最も脆弱な国々が気候変動による被害を修復する能力に関する喫緊の問題に関しては、依然として懐疑的な意見が存在している。

誰が修復のための資金を調達するのかという問題は、依然として最重要であり、こうした重要な問題が、今年もドバイで議題に上った。

ワスコフ氏は、COPが何を達成できるのかに関して、その文脈と見通しを保つことの重要性を強調する。

「COPは、引かなければならない多くのレバーの中のひとつだと捉える」「COPを万能薬的なイベントとみなし、何らかの合意がなされ、それによってすべてが劇的に前進すると考える人が時々いる」と同氏は付け加えた。

COPがすることは、非常に具体的なこと、つまり対話を前進させることだ、と同氏は続けた。

「山登りに例えて考えてみよう。COPはコンパスや拡大鏡のようなものだ。これにより、地図上で明確に何をすべきかが見えるようになる。今年の化石燃料の課題に関しては明らかにこれがあてはまる」と同氏は強調した。

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