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多くのイラン国民、社会不安と経済不振に不満

3月1日の国会議員選挙と専門家会議選挙を前にして、選挙集会で国旗を振るテヘランのイラン人女性たち。(AP)
3月1日の国会議員選挙と専門家会議選挙を前にして、選挙集会で国旗を振るテヘランのイラン人女性たち。(AP)
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29 Feb 2024 06:02:23 GMT9
29 Feb 2024 06:02:23 GMT9
  • 国会議員選挙、低投票率の可能性 過去の選挙でも一貫した傾向

ドバイ:イランでは3月1日に議会選挙が行われるが、誰が当選するかではなく、どれだけの人が実際に投票所に足を運ぶかが本当の問題かもしれない。

急速に悪化しつつある経済に対し不満が広がり、大規模な抗議活動が何年にもわたって国を揺るがし、ウクライナの戦争でイランがロシアを支持していることや数年にわたるイランの核開発計画をめぐり西側諸国との緊張が高まっている。そうした状況を受けて、多くの人々が今回の選挙では投票しないと静かに語るようになっている。

政府関係者は投票するよう呼びかけているが、今年は投票率の予測についての情報は、国営の世論調査センターISPAから発表されていない。ISPAの発表は過去の選挙では恒例となっていた。先日AP通信がインタビューした21人のイラン人のうち、投票に行くと回答したのは5人だけだった。13人が投票しないと回答し、3人はまだ決めていないと回答した。

「もし私が政権の何らかの不備について抗議しようとすれば、警察や治安当局が大勢来て私を止めようとするでしょう」とアミンさんは語った。アミンさんは21歳の大学生で、報復を恐れてファーストネームしか名乗らなかった。「けれど、もし私が大通りの片隅で餓死しても、何の反応も示さないでしょうね」

1万5000人以上の候補者が、290人の議員からなる国会で議席を争うことになる。国会は正式にはイラン・イスラーム議会と呼ばれる。任期は4年で、イランの宗教的少数派のために5議席が割り当てられている。

法律では、議会は行政府を監督し、条約について採決を行い、その他の問題を処理することになっている。実際には、イランの絶対権力は最高指導者であるアヤトラ・アリ・ハメネイ師が握っている。

過去20年間、強硬派が議会で権力を握っており、議場からはしばしば「アメリカに死を」の合唱が聞こえてくる。

モハンマド・バーゲル・ガリバフ国会議長は革命防衛隊の元司令官で、1999年にイランの大学生に対する暴力的な弾圧を支持した人物だ。カリバーフ国会議長の下、議会が2020年に推進した法案は、国連の核監視機関である国際原子力機関(IAEA)とイランとの協力を大幅に縮小するものだった。

その前の2018年にはドナルド・トランプ大統領(当時)が、主要国が結ぶイラン核合意からアメリカを一方的に離脱させる決定を下していた。この決定によって、中東において数年にわたって緊張が高まり、イランが過去にない濃縮度の潤沢なウランを手に入れる事態となった。その気になれば「数発分」の核兵器を十分製造できる量のウラン燃料をイランは確保したのだ。

さらに最近になって議会が焦点を当てているのは、イランが女性に着用を義務付けるヘッドスカーフ(ヒジャブ)をめぐる問題だ。これは、2022年に22歳のマフサ・アミニさんが警察に拘束され死亡した事件を受けたものだ。この事件は全国的な抗議デモを引き起こした。デモは瞬く間にイランの宗教的指導者らの追放を求める反政府デモへと発展した。その後の治安強化による弾圧で500人以上が死亡し、2万2000人以上が拘束された。

選挙のボイコットを求める声がここ数週間で広がっており、ノーベル平和賞を受賞した女性人権活動家で、現在服役中のナルゲス・モハマディ氏も選挙を「まがい物」と呼んだ。

「イラン・イスラム共和国は、無慈悲で残忍な弾圧を行い、街頭で若者を殺し、男女に対し処刑、投獄、拷問を行ってきた。この国は国内からの制裁と世界各国からの非難を受けるべきだ」。モハマディ氏は声明の中でこう述べている。

ボイコットの呼びかけにより、政府は新たな圧力にさらされている。1979年のイスラム革命以来、イランの神権政治はその正統性の根拠を選挙の投票率にも置いているからだ。

28日、ハメネイ師自身が国民に投票を促し、投票は国民の義務だと説明した。「投票しないことに正当な理由は存在しない。投票をやめても国のいかなる問題も解決しない」

「選挙に関心がないことを表明したり、他の人に選挙に行かないよう勧めたりする人たちは、もう少し考えたほうがいい」ともハメネイ師は述べた。

「選挙が持つ力が弱くなれば、すべての人が損をする」とハメネイ師は続けた。

世論調査機関のISPAが選挙に関するアンケートを昨年10月に実施したが、その結果は公表されていない。政治家やその他メディアから提供されたデータによれば、投票率は30%前後になると思われる。

強硬派のイブラヒム・ライシ師が政権を握った2021年の大統領選挙では、投票率は49%で、大統領選挙の投票率としては過去最低だった。何百万もの投票用紙が無効とされたが、これは投票の義務を感じながらも投票したくなかった人々によるものだろう。

2019年の国会議員選挙の投票率は42%だった。

これとは別に、イラン国民は3月1日、「専門家会議」(定数88)のメンバーを選出する選挙でも投票を行う。専門家会議の任期は8年で、84歳のハメネイ師の次の最高指導者を任命することになる。

ハッサン・ロウハニ前イラン大統領は、この選挙への出馬が禁じられた。ロウハニ前大統領は比較的穏健派で、その任期中の2015年にイランは世界の主要国と核合意を結んだ。

イランの経済的苦境が投票に行かない理由だと語る人もいる。報道によるとイランのインフレ率はおよそ50%、イランの若者の失業率はおよそ20%だという。

「私は投票しない」。こう語るのはテヘラン南部に住む果物商、ハシェム・アマニさん(55歳)だ。「2021年、私がライシ師に投票して大統領になることを望んだのは、同じ志を持つ人たちが政府内で協力し、私の生活を良くしてくれることを期待したからでした。その見返りに得たのが、あらゆるものの価格高騰だったのです」

AP

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