• 救助船は生存者を発見できず、難破船の付近で10人を超すとみられる遺体を目にした。
• アラームホーンは欧州の関係当局に対し、捜索活動を準備せず、リビア沿岸警備隊の手に委ねたとして非難した。

カイロ―100人超の移民を乗せて欧州に向かっていた船がリビア沖で難破し、乗船者の生存が危ぶまれている、と独立系救助グループが述べた。春になって暖かくなり、移住のため地中海を渡ろうとする人々が増える中、新たな死者が出たとみられる。

人道主義団体は、リビアの沿岸警備隊と欧州の関係当局に対し、命を救うという責任を果たせなかったことについて非難した。

リビア沿岸警備隊の担当者はAP通信の取材に対し、ボートを捜索したものの、各種資源が限られていたために発見することはできなかったと述べた。

救助船「オーシャン・バイキング号」を運航するSOSメディテラニーは、転覆したゴム製ボートは当初、約130人を乗せて出発し、その後、リビアの首都トリポリの北東に位置する地中海で発見されたと22日遅く発表した。

この救助船は生存者を発見できず、難破船の付近で10人を超すとみられる遺体を目にした。

「我々は、命を失った人々と、詳細について知ることができない遺族の方々に哀悼の意を表する」。救助船関係者は声明でこのように述べた。

海上を移動する移民については、欧州諸国とリビアのどちらがその命を救う責任があるのかをめぐって議論が起きている。

欧州の人道主義団体は、行方不明になった人々は、今年に入って海で溺れて命を失った350人の遭難者と同様となる可能性が高いと述べた。

この団体は各政府に対し、捜索・救助活動を行わなかったとして非難した。

NATOは、独裁者ムアンマル・カダフィ大佐が追放され、殺された2011年のリビアの反乱を支援したが、それ以降、戦争によって荒廃したリビアは、アフリカや中東での戦争や貧困を逃れようとする移民の主要な通過点となってきた。絶望の淵にある家族たちは、密輸業者によって粗末なゴム製ボートに詰め込まれることも多く、そうしたボートは、地中海中央部を進む危険な航路上で動けなくなり、沈没する恐れがある。

「このような事故は、国際法と人道主義の最大の基本原則を守らない政策による人災の結果である」。国際移住機関のチーフ・オブ・スタッフであるEugenio Ambrosi氏は、ツイッターでこのように述べた。

地中海地域で困窮する移民のための危機ホットライン組織であるアラーム・ホーンは、今回沈没したとみられるボートとは、沈没するまで10時間近く連絡を取り合っていたと述べた。

アラーム・ホーンは声明の中で、同組織が欧州とリビアの当局に対し、ボートのGPS位置情報を伝えていたが、民間救助団体のみが精力的に捜索を行っていたと述べた。

アラーム・ホーンは欧州の関係当局に対し、捜索活動の準備を拒否し、リビア沿岸警備隊のみにその活動を委ねたとして非難した。

リビア沿岸警備隊の報道担当司令官であるマスウード・イブラヒム・マスウード氏は、救助を怠っていたという主張は誤りだと説明した。

「我々は捜索活動を行っていた」。同氏はAP通信にこう述べ、次のように続けた。「警備隊の船は海上で24時間以上、捜索を続けていたが、波が非常に荒かった」。

マスウード氏はAP通信に、トリポリの東の沖合で、リビア沿岸警備隊が2隻の別々のボートから2回の救助アラートを受信し、トロール船が即座に派遣され、この2隻のうち1隻に乗っていた女性と子供を含む106人の移民を救助した、と述べた。このほか、沈没したボート付近で2人の遺体を海から引き上げた。同氏は、同じ船が引き続き捜索を行ったが、視界が悪く、波も荒かったと述べた。警備隊の船は最終的に、乗船していた移民たちが医療手当を受けられるように、港に戻ったという。

一方、同氏によると、リビア当局は3艘の商船とオーシャン・バイキング号に対し、リビアのパトロール船が戻って再び捜索に加わるまで、行方不明になったゴム製ボートを探すよう求めたという。

ここ数年、欧州連合は、地中海中央部のような危険な海域を航行するのを防止するべく、リビア沿岸警備隊や他の現地グループと連携してきた。しかし、人権団体は、そうした政策により、移民が武装グループの支配下に置かれたり、虐待が横行する不衛生な収容所に監禁されたりする状況が生まれていると指摘している。

「我々は、米国沿岸警備隊のように装備が万全ではない。EUから得ている支援は、我々のニーズを満たしていない」。マスウード氏はこのように述べた。