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レバノン軍、混乱が起きる可能性に備える

75周年目の独立記念日を祝う軍事パレードに参加する、レバノン公安部隊の女性士官候補生、ベイルート。(AFP資料写真)
75周年目の独立記念日を祝う軍事パレードに参加する、レバノン公安部隊の女性士官候補生、ベイルート。(AFP資料写真)
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12 Jun 2021 08:06:17 GMT9
12 Jun 2021 08:06:17 GMT9
  • 情報筋によると、軍は与えられた任務を果たす意向。政治的行き詰まりの終わりは見えない
  • フランスが「国際社会にレバノン軍への支援を募る」会議を開催

ナジア・フッサリ

ベイルート:5月末にレバノン軍司令官ジョゼフ・アウン大将がフランスを公式訪問したことを受け、フランス政府は17日に「レバノン軍に対し国際社会からの支援を募る」ためバーチャル会議を開催する。

アウン大将はフランスのエマニュエル・マクロン大統領と会談し「法と秩序を維持するため、治安部隊に緊急の食糧・医療援助を実施する」ことについて協議した。

アメリカもレバノン側との会議を5月末に実施しており、アメリカ政府はレバノン軍(LAF)への支援金を1500万ドル増額すると決定した。2021年度には合計で1億2000万ドルに達することとなる。

「アメリカとの間には恒久的な軍事援助プログラムがありますが、今のところ武器は必要ありません。軍への現物支援が必要なのです」と軍関係者は強調した。

こうした動きに発展した理由は、社会経済状況がどん底に陥り、レバノン全土で大混乱が起きる可能性について外部からの警告が止まないからだ。

海外の観測筋は、治安部隊が2019年と2020年の抗議活動よりも激しさを増す可能性のある社会混乱を防げないのではないかと懸念している。

党派間の争いは続いており、暫定政府は、ハッサン・ディアブ首相が憲法違反と見なすいかなる役割も果たせないままでいる。

軍関係者はアラブニュースに、政治対立が「軍や他の治安部隊の士気に悪影響を与えた」と語った。しかし同時に、軍がこれまで抗議運動にうまく対処していることを強調した。



レバノン軍司令官 ジョセフ・アウン将軍。(AFP資料写真)

こう付け加えた。「軍が困惑を覚え、国民感情を理解しているのは間違いない。しかし軍が優先するのは国内の平和と安定を維持することで、これを害する行為は一線を越えるものだ。

「軍部には混乱が起きてもそれを防止する新たな計画はないため、与えられた任務を実行するほかない」

一方、アウン将軍は、近隣のアラブ友好国の軍司令官に宛てた書簡で、レバノン軍への援助、具体的には食料と医薬品の支援を要請している。

「イラクを含む一部の国が要請に応じた。イラクは300万ドルを拠出して食糧・医薬品の購入に充てる予定だ」と軍関係者は付け加えた。

国防省とレバノン軍も最近、任務放棄者が出ているとの噂の否定を余儀なくされた。「軍から脱走しようとした隊員たちは戻ってきた。なぜかというと軍では他の場所にはない社会保障制度があるからだ」と、軍関係者は指摘した。

レバノンの盗難率は2021年1月と2月に144%増加し、マンホールの蓋・鉄製の道路分離柵・電線や鉄柱・墓地の鉄製扉、さらには粉ミルクまでもが盗難の被害に遭っている。

治安部隊は「深刻な事態であり、国家の社会保障制度が崩壊する可能性がある」と警告している。

レバノンが直面する苦境は、今年初めにSNSで拡散した動画を見るとよく把握できる。動画には、抗議デモに参加した父親が息子と対面する様子が映されている。息子はデモ隊に対応するため派遣された部隊の一員だった。息子を抱き締めて泣いている父親の姿をカメラは捉えていたが、息子の方は命令には従わねばならないという義務感と父親への忠誠心の間で板挟みになっていた。

3月8日の演説で、アウン将軍は苦言を呈した。「レバノン・ポンドの暴落により、一般国民と同様にレバノン軍や治安部隊の実質賃金は急落し、隊員の間では怒りがくすぶっている。一方で社会は混乱し、犯罪率が増加している

「兵士も一般国民と同様に満足に食べられていない」と政府当局に語りかけた。「軍隊は必要なのか、不要なのか?強く安定した体制を望むのか、望まないのか?」

レバノン・ポンドの価値は2019年後半以降90%下落して、ほぼ1ドル=1万5000レバノン・ポンド(闇市場)にまで落ち込んでいる。同時に食料品価格は混乱状態にある。

兵士や警察官の基本月給は、実質約800ドル(公式為替レートでは1ドル=1507レバノン・ポンド)だったのが、現在は100ドルを切るにまで減少している。予算削減により、2020年から軍は食事から肉を減らすようになっている。

レバノン軍をはじめとした治安機関に対する政治的圧力は、2019年10月17日の抗議活動後に高まったが、アウン将軍は当時、デモ隊に対する過度な武力行使を拒否した。

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