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交渉における楽観的な展望があるなか、ロシアの猛攻撃は継続

2022年3月16日(水曜日)、ウクライナのチェルニーヒウ北東部にある住宅地で、炎上する建物が写された、マクサーテクノロジーズ提供の衛星写真。(マクサーテクノロジーズ提供、AP通信経由)
2022年3月16日(水曜日)、ウクライナのチェルニーヒウ北東部にある住宅地で、炎上する建物が写された、マクサーテクノロジーズ提供の衛星写真。(マクサーテクノロジーズ提供、AP通信経由)
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17 Mar 2022 12:03:56 GMT9
17 Mar 2022 12:03:56 GMT9

キエフ(ウクライナ):ロシアとウクライナの双方が戦いの終結に向けた交渉について楽観的な見通しを述べたにもかかわらず、水曜日にロシア軍は何百人もの避難先であったマリウポリの劇場を破壊し、他の都市でも激しい爆撃を行った。

ウクライナの外務省は声明のなかで、この空爆により、かつては優雅であった建物の中心部は崩壊し、この建物には戦闘で家屋が破壊された数百人の民間人が生活していたと述べた。

多くの人々が瓦礫の生き埋めとなったと声明では述べられたが、死者数や負傷者数についての直接的な言及はなかった。宇宙テクノロジー企業のマクサーによると、月曜日の衛星画像では、この建物の前後の歩道には、白い大文字のロシア語で「子ども」という言葉が大きく書かれていた。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、毎晩行われる演説の中で、「ロシアによるウクライナ国民に対する行いに心を痛めている」と述べ、爆撃を行ったロシアに対するさらなる制裁を呼びかけた。

水曜日にロシア国防省は、マリウポリの劇場や他の場所に対する爆撃の事実を否定した。

キエフでは、大統領官邸から2.5 km(1.5マイル)離れた住宅街を含む市内とその周辺でロシア軍が砲撃を行ったため、木曜日の朝まで市全体に外出禁止令が発令されており、住民は住居や避難所に身を寄せ合った。キエフ中心部にある12階建てのアパートは、榴散弾による攻撃で炎に包まれた。

ウクライナ検察庁によると、北部の都市チェルニーヒウでは、パンを求めて列に並んでいた10人が死亡した。

水曜日の早い時間、ゼレンスキー大統領はビデオで米国議会に参加し、真珠湾攻撃と9・11を引き合いに出して、「今すぐ米国の助けが必要だ」と語り、より多くの武器の提供とより厳しいロシアに対する制裁を米国に訴えた。

米国のジョー・バイデン大統領は、米国からウクライナに対して、対空および対戦車兵器や無人機など、追加で8億ドルの軍事支援を行うと発表した。さらに、ウラジーミル・プーチンのことを「戦争犯罪者」と呼び、侵攻が始まってから最も強い口調でロシアの指導者を非難した。

国際司法裁判所がウクライナへの攻撃をやめるようロシアに命じたことで、クレムリンに対する国際的な圧力は高まり、ロシアの孤立は深まった。しかし、ロシアがこの命令に従う望みはほとんどない。また、ヨーロッパ大陸最高の人権団体でもある、47か国が加盟する欧州評議会は、ロシアを除名した。

ウクライナの首都におけるモスクワの地上進出は大きく停滞しているように思える一方で、プーチン大統領は、「事前に承認された計画に厳密に従って、成功裏に」作戦が展開されていると述べた。さらに、モスクワに対する西側の制裁を非難し、西側が「ロシアを苦しめ、圧力をかけ、弱い従属国に変えようとしている」と責めた。

米国国防省の関係者は、ロシア軍がまだウクライナの大部分で目に見える成果を上げていないものの、ウクライナ第3の都市で、海軍と海運の主要ハブであるオデッサ近郊を砲撃し始めたと語った。匿名を条件に米軍による評価について話したこの関係者は、ロシアの目的は明確ではないが、西側の当局者はこの沿岸都市での地上攻撃を長い間懸念していたと述べた。

両国は水曜日にビデオを介した交渉を再開し、ゼレンスキー大統領のミハイロ・ポドリャク顧問は、ウクライナは停戦、ロシア軍の撤退、複数の国からのウクライナの法的安全保障を要求していると語った。

「これは、ゼレンスキーとプーチンの間の直接的な対話によってのみ可能である」と彼はツイートした。

ゼレンスキー政権の関係者はAP通信に対し、主にロシア軍がウクライナ東部の2つの分離独立派支配地域に戦後留まるかどうか、そして国境がどこになるかというテーマで議論されていると語った。

戦争が始まる直前、ロシアは同国の支援を受けた分離独立派が2014年から支配する2つの地域の独立を認め、激しい包囲に耐えてきた戦略的に重要な港湾都市マリウポリなど、ウクライナが保持し続けていた地域にこれら地域の境界を拡大した。

匿名を条件にこの繊細な交渉について話をしてくれた関係者は、ウクライナは交渉に西側の核保有国1か国以上を含めること、さらにはウクライナの安全保障を伴う法的拘束力のある文書に署名することを主張していると語った。それと引き換えに、ウクライナは中立的な地位について話し合う用意があると、この関係者は述べた。

ロシアは、NATOが決してウクライナの加盟を認めない、あるいはウクライナに軍を駐留させない誓約をすることを要求している。

火曜日の交渉後、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、ウクライナの中立的な軍事的地位が双方によって「真剣に議論されている」と述べ、ゼレンスキー大統領は、戦争を終わらせるためのロシアの要求が「より現実的に」なっていると話した。

火曜日にゼレンスキー大統領が、ウクライナがNATOに加盟するという目標を実現する可能性は低いと、これまでで最も明確な言葉で認めたことで、外交の進展によって戦争を終わらせることへの期待は高まった。長いことプーチン大統領は、ウクライナによるNATO加盟の願望をロシアへの脅威と表現してきた。

ラブロフ外相はゼレンスキー大統領のコメントを歓迎し、交渉で見られるようになった「ビジネスライクな精神」は、「この問題に関して合意が可能であるという期待を抱かせる」と語った。

「安全保障と結び付く形で中立的な地位について真剣に議論されている。私の見解では、具体的に話が進展して合意形成が近い」と、ラブロフ外相はロシアのテレビで話した。
しかし、侵攻軍が完全に撤退するというウクライナの要求と、キエフの西向きの政府を親モスクワ政権に置き換えることだと思われるロシアの目的との間のギャップを考えると、外交的躍進の見通しは非常に不確実である。

国連の推計によると、この戦闘により300万人以上がウクライナから避難した。

死者の総数は依然として不明であるが、ウクライナは数千人の民間人が死亡したと話している。

ゼレンスキー大統領は米国議会で、ロシアは「ウクライナの空を死の源に変えた」と語った。しかし、バイデン大統領は、米国とロシアの戦争を引き起こすリスクがあるため、ウクライナに戦闘機を送り込む、さらにはウクライナの上空に飛行禁止区域を設定するというゼレンスキー大統領の要求を拒否した。

この戦争によって大規模な人道的危機が起こるなか、赤十字は包囲された地域からの民間人の避難を助け、医薬品、毛布、水、5,200以上の遺体袋など、200トンの援助を提供している。遺体袋は、「死者が尊厳のある扱いを受けることを確保する」ためである。

マリウポリほど被害が大きい場所はない。地元当局者の話では、ミサイル攻撃と砲撃で2,300人以上が死亡した。人口43万人のこの南部の港湾都市は、3週間におよぶ戦争のほぼ全期間で攻撃を受けており、人々は食料、水、暖房、薬を必死に手に入れようとしている。

地元当局は、ロシア軍がマリウポリの病院で何百人もを人質に取り、人間の盾として使っていると述べた。

ヴァレリー・ドレンガー博士は、携帯電話の懐中電灯機能を使って病院の地下室を照らし、毛布を剥がして生後22日の乳児の遺体を見せた。包まれた他の遺体も、その大きさを考えると子どもであるように見えた。

「我々が救うことができなかった人たちです」とドレンガー博士は言った。

市の当局者によると、火曜日に人道回廊を経由して数千台の車両で約3万人が市内から避難することができた。水曜日にゼレンスキー大統領は、あと2,000人の子どもを含む6,000人が残されていると話したが、ロシアの砲撃のために他の場所への避難は中止された。

キエフ州のオレクシー・クレバ知事は、ロシア軍がキエフ近郊と西につながる高速道路での戦闘を激化させ、首都圏全体で「幼稚園、博物館、教会、住宅地区、工業インフラが際限なく攻撃されている」と述べた。

これとは別に、5日前にロシア軍に拘束されたメリトポリ市長が解放されたと、ゼレンスキー大統領府のアンドリー・イェルマク首席補佐官は話した。市長がどのようにして解放されたかについての詳細は伝えられなかった。

ウクライナも作戦を成功させているようで、APが分析したプラネットラボPBCの衛星写真には、火曜日にウクライナによるものと思われる爆撃により、ロシアが手中に収めるヘルソン空港と空軍基地でヘリコプターと車両が炎上している様子が写されている。

AP

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