• イランの銀行は国内外の企業を利用して商品や通貨の取引を行い、不況に苦しむイラン経済への圧力を緩和している
• イラン政府関係者によると、秘密取引は年間800億ドル相当に上るという

アラブニュース

ロンドン：イランが、数十億ドルを扱うことができ、米国の制裁を回避することが可能な、秘密の銀行・金融システムを構築済みであることが、情報当局者の話やウォール・ストリート・ジャーナル紙（WSJ）が目撃した文書で明らかになった。

イスラム共和国（イラン）は、外国の商業銀行、代理人企業、協力会社、国内取引清算機関のシステムを利用して資金を移動させ、制裁に耐えている。

WSJが見た文書や、話をした関係者によると、イランの秘密銀行システムは次のように機能しているという。米国の制裁で輸出入禁止措置が課されている企業にサービスを提供するイランの銀行が、イラン国内の関連企業（「ラーバー」企業）に関与することで、それらの企業に代わって制裁対象の貿易を管理する。それらの企業がイランの国境外に会社を設立し、イランの貿易業者の代理人の役割を果たす。

代理人企業は、イランの石油やその他の商品の外国の買い手、またはイランへ輸入する商品の売り手と、外国の銀行に開設した口座を通じて、ドル、ユーロ、その他の外貨で取引を行う。

その収益の一部は、海外の代理人企業の口座から引き出され、現金を運ぶ運び屋によってイランに密輸されるが、収益の多くは海外の銀行口座に残っていると、関係者はWSJに語った。イラン中央銀行によると、イランの輸入業者と輸出業者はこの資金を使って、イラン国内で管理されている台帳上で自分たちの間の外貨取引を行っているという。

これらの方法は、イランの石油やその他の商品の販売の他、イラン国内で必要とされている商品の購入と輸入も促進するために利用されている。

このシステムが、経済と国の運営を維持するために必要な収入と輸入を、イランにもたらしている。外交官や政府関係者によれば、これによってイラン経済はドルやユーロなど世界貿易の基軸通貨にアクセスできるため、イラン・リヤルへの圧力が緩和されるという。

ある欧米政府関係者はWSJに対し、「これは前代未聞の政府によるマネーロンダリング作戦だ」と語った。

イランの大物政治家ゴラムレザ・メスバヒ・モグハダム氏によれば、秘密の輸出入取引は年間800億ドルに上るという。

「ガソリン、鉄鋼、石油化学製品などの輸出の大部分が、すべて隠された子会社活動の下で行われている」と、モグハダム氏は言う。

国際通貨基金（IMF）は、制裁下で禁止されている外国への販売を含め、この数字は2022年中に1,500億ドルにまで拡大すると推定している。これは、イランが制裁から解放されていた短い期間の水準の2倍以上である。

この方法で、イランは制裁を回避し、貿易額をほぼ制裁前の水準まで引き上げることに成功したように見える。

制裁が課せられた数年間でリヤルの価値は急落したが、イラン経済は国際的な孤立に十分耐えてきた。それによってイランは、今後の核プログラムについて、米国と厳しい交渉を行うことができた。

WSJはイランの国連代表部に対し、この金融システムについてコメントを求めたが、取材に応じることはなかった。