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ロシア軍がチェルノブイリから撤退した一方、他の地域では戦闘が激化

ロシア軍が限定的停戦に合意した後、包囲された港湾都市マリウポリから人々を避難させるためにバスの一隊が向かった。(ロイター)
ロシア軍が限定的停戦に合意した後、包囲された港湾都市マリウポリから人々を避難させるためにバスの一隊が向かった。(ロイター)
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02 Apr 2022 01:04:24 GMT9
02 Apr 2022 01:04:24 GMT9

ウクライナ・キエフ: 占領から1ヶ月以上が経った金曜未明、ロシア軍はチェルノブイリ原子力発電所の管理権をウクライナに返還し、汚染が深刻な地域から撤退したことをウクライナ当局が発表した。キエフ郊外や他の地域の前線では現在も戦闘が激化している。

ウクライナの国営電力会社エネルゴアトムは、チェルノブイリ原発からの撤退は、ロシア軍の兵士たちが閉鎖された原発周辺の立ち入り禁止区域の森で塹壕を掘ったことで「大量の放射線」を浴びたためとしている。だが、それについて、独自の確認はなされていない。

今回の撤退は、プーチン大統領政権がウクライナの情勢緩和についての議論を隠れ蓑にして、軍の再編成、人員補充、東部での攻勢強化のための再派遣を行っているとの指摘が強まる中でのことだった。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ロシア軍の北部と中部からの撤退は軍事戦術に過ぎず、南東部で強力な攻撃を新たに行うために軍備を整えていると語った。

「彼らの意図はわかっている」と、ゼレンスキー大統領は毎晩のビデオ演説で述べた。「彼らが攻撃を受けた地域から離れているのは、他の非常に重要な地域に注力するためであり、状況は我々にとっては困難になるかもしれないと理解している」

「これからが勝負だ」と、ゼレンスキー大統領は付け足した。

一方、ロシア軍が限定的停戦に合意した後、包囲された港湾都市マリウポリから人々を避難させるためにバスの一隊が向かった。だが、ロシア軍は45台のバスを足止めし、自家用車で市外に脱出できたのは631人にとどまったとウクライナ政府は発表した。

ウクライナは12台のトラックでマリウポリに人道的物資を運搬することができたが、すべてロシア軍に押収されたとイリナ・ヴェレシュチュク副首相は木曜日遅くに語った。

金曜には新たな協議が開始する予定だ。数千人の死者を出し、400万人のウクライナ人を国外に追いやった戦争が開始して5週間が経過している。

国際原子力機関(IAEA)は、世界最悪の原発事故現場であるチェルノブイリ原発を占拠していたロシア軍が、文書でウクライナに管理権を移譲したことをウクライナから報告を受けたと発表した。

最後のロシア軍は金曜未明にチェルノブイリ原発を発ったとウクライナ政府の立ち入り禁止区域担当機関が報告した。

エネルゴアトムは、被曝したとされる兵士の状態についての詳細は発表しておらず、何人が影響を受けたかも明らかにしていない。ロシア政府からは直ちにコメントは得られず、IAEAはロシア軍が大量の放射線を浴びたという報告は確認できなかったと発表した。IAEAは、さらなる情報を求めている。

ロシア軍は2月24日の侵攻の序盤でチェルノブイリ原発を占拠し、放射能の拡散を招くような被害や混乱を引き起こすのではないかと危惧されていた。施設で働く人々の役割は、1986年に爆発したチェルノブイリ原発の使用済み燃料棒とコンクリートで固められた廃墟を安全に保管することだ。

米国のUnion of Concerned Scientists(憂慮する科学者同盟)の核専門家エドウィン・ライマン氏は、多数の兵士が重度の放射線障害に陥る可能性は「低いと思われる」としたうえで、さらなる詳細が判明しない限り、確かなことはわからないと述べた。

ライマン氏は、チェルノブイリ原発事故の後処理の際、汚染物質はおそらく埋められたか、新しい表土で覆われたのだろうと語り、一部の兵士が掘削中に放射線の「ホットスポット」に晒された可能性はあると語った。

その他の兵士たちも、身の危険があると考えたのだろうという。

今週初め、ロシアは、両国の信頼関係を深め、交渉を円滑に進めるため、キエフ周辺と北部のチェルニーヒウ市での軍事行動を大幅に縮小すると発表した。

しかし、キエフ郊外においては、オレクサンドル・パルヴィウク地方知事が木曜、ソーシャルメディアで、ロシア軍がイルピンとマカリウを砲撃し、ホストメル周辺では戦闘が起こっていると発信した。パヴィウク氏によると、東のブロヴァリー地区ではウクライナ軍が反撃し、ロシア軍は一部撤退したという。

チェルニーヒウもまた、攻撃を受けた。食料、水、その他の物資の供給を断たれた住民を避難させるためにチェルニーヒウに送られた人道支援のバス隊に対するロシアの砲撃により、少なくとも1人が死亡、4人が負傷した、ウクライナ人権委員会のリュドミラ・デニソヴァ氏は述べた。

また、北東部の都市ハリコフ市内と周辺でロシア軍の集中砲撃があったとウクライナ政府は報告している。イェンス・ストルテンベルグNATO事務総長は、ロシアはウクライナでの軍事行動を縮小しているのではなく、軍の再編成、人員補充、ドンバスでの攻勢の強化に向けた準備を行っていることを示す情報があると述べた。

「ロシアは繰り返し、その意図について嘘をついてきた」とストルテンベルグ事務総長は語った。同時に、キエフや他の都市への圧力は変わらず、「攻撃が増強されることでさらなる苦しみがもたらされることが予想される」と述べた。

ドンバスは、ロシア語を話す人が大半の工業地域で、2014年からロシアが支援する分離主義派とウクライナ軍の戦いが続いてきた。ここ数日、プーチン大統領政権は戦争の目的を方向転換したかのように、現在の「主な目標」はマリウポリを含むドネツクとルハンスク地方からなるドンバスの支配権を獲得することだと述べている。

ドネツクの反政府勢力トップのデニス・プシーリン氏は、マリウポリにウクライナに対抗する地方行政設立を命じており、これは、マリウポリを保持・管理しようというロシアの意図を示しているとロシアの国営通信社は報じている。

一方、赤十字社は、医療品やその他の救援物資を携えたチームがマリウポリに向かっており、この戦争で最悪の被害を受け、苦境に置かれたこの都市から民間人を避難させるつもりだと述べた。

この数週間で、マリウポリから数万人が人道的回廊を通じて脱出しており、人口は戦前の43万人から先週の時点で推定10万人に減少した。だが、この街を救済しようというその他の努力は、ロシアの攻撃継続により阻まれている。

ウクライナのイリナ・ベレシュチュク副首相は、包囲され爆撃を受けるマリウポリで食料、水、医薬品、燃料不足に苦しむ民間人を避難させるため、45台のバスを派遣すると述べた。

「この作戦が実行されることは非常に重要だ」と、赤十字は声明で述べている。「マリウポリの何万人もの人々の命がこの作戦にかかっている」

ウクライナ・ロシア間の協議はビデオ会議によって再開されることになったが、両国の間でこの争いがすぐに解決されるという可能性はほとんどないように見える。

ロシアのプーチン大統領は、停戦のための条件はまだ「熟しておらず」、交渉担当者が仕事をもっと仕事を進めるまではゼレンスキー大統領との会談の準備はできていないと語ったと、イタリアのマリオ・ドラギ首相は同大統領との電話会談後に述べた。

その他の動きとして、ウクライナの救急隊が、火曜日に起こった南部の都市ミコライフにある政府管理棟へロシアのミサイル攻撃での死者数は20人に上ったと発表した。

西欧諸国がロシアの次の動きのヒントを探る中、英国情報機関のトップは、ウクライナでは士気を失ったロシア兵が命令の遂行を拒み、装備を破壊し、誤って自国の航空機を撃墜したと述べた。

電子スパイ機関GCHQのトップであるジェレミー・フレミング氏は、オーストラリアでの講演で、プーチンは明らかにウクライナ侵攻について「きわめて重大な読み違い」をしていたと述べた。

国防総省は木曜日、ジョー・バイデン大統領が今月承認した8億ドルの軍事支援の一部として米国から送られた武器やその他の安全保障支援の最初の6つの貨物がウクライナに到着したことを発表した。

国防総省のジョン・カービー報道官は、ジャベリン対戦車兵器、スティンガー対空ミサイルシステム、防護服、医療品などが輸送されたと述べた。

米国の情報当局は、プーチン大統領は、アドバイザーが真実を伝えることを恐れているために戦争の状況悪化について誤った情報を提供されていると結論付けている。

ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、米国の見解は間違っており、「国務省も国防総省もクレムリンで何が起きているかについて本当の情報を得てはいない」と述べた。

AP

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